――ある種、「MATCHA」は自分たちのコンテンツ制作能力をアピールする場所だと。

岩田:日本人がそこで落とすお金と、外国人が観光で落とすお金って、明らかに後者のほうが大きいですよね。そこを狙っていくというのは、商店街に限らず、どの分野にもビジネスのヒントになりそうです。ところで、青木さんがこういうサービスを作ったのは、大学生の頃に世界一周をしたのが大きいんですか?

青木:そうですね。僕も海外で行くところに困ったというのはあります。でもそれだけじゃなく、世界一周をして、いろんな国の人と日本について話しているうちに、日本の魅力がちゃんと伝わっていないということを実感したんです。

岩田:それは日本からの情報発信が足りないということですよね。

青木:英語圏の国と比べると言語の壁がありますから、海外にアピールするためにやるべきことが多すぎるんです。でも、それって日本人として悔しいじゃないですか。例えば、30年前は3,200ヶ所あった酒蔵が、今は1,600ヶ所以下になっている。日本酒に携わっている方の話を聞くと、実際に稼働しているところはさらに少なくて、1,000ヶ所以下といわれています。そういうことを聞くと、どうしたらいいんだろうって考えるんです。

岩田:商品の品質を高めるのはもちろん重要ですが、認知や集客の方法も必要なのに、そこのアイデアがない。

青木:たとえ品質が良くても、届かせていかないと続けられないんですよね。だから、「MATCHA」が「外に届かせる」という部分を担っていこうと。僕自身が日本のすごいものに触れるのが好きですし、それが5年後、10年後も残ってほしいと思いますから。

■「こうすれば外国人にウケる」という法則はない

岩田:先ほど、「トトロのシュークリーム」の記事を読んだ外国人が2回も買いに行ってくれた、というお話があって、反応がダイレクトに伝わってくることが何よりもうれしいと仰っていました。

青木:それは僕がメディアの運営が好きなもっとも大きな理由ですね。

岩田:ということは、ソーシャルメディアやブログで人のつながりが可視化されていなかったら、そもそも現在の仕事は始めていないかもしれない?

青木:確かにそうかもしれません。世界一周旅行のブログでも、「ブログで紹介されていたスポットに行ってきました!」という反応がかなりあったんです。僕が書いて実際に人が動くというポジティブな流れができたのがうれしかった。僕にとって、これがメディアに関わる原動力になっていますね。

岩田:最近、そういう話をよく聞きますよね。ソーシャルメディアの功罪みたいことが議論されていますが、ツイッターやフェイスブック、そしてブログがなかったら「MATCHA」みたいなサービスはできていない。ライフネット生命も、まさにそういう会社なんですよ。代表の岩瀬(大輔)の個人ブログから始まって、そのブログを見て一緒に働きたいという人が現れた。ブログやソーシャルメディアがなかったら、ライフネット生命で保険の仕事をしていなかった可能性が高い人ばかりなんです(笑)。

青木:僕もあのときブログをやっていなかったら……、今は何をしているのか想像もつかないですね(笑)。