■スマホではなく、日本のウェブコンテンツのレベルが低いのが問題

R3A6478_1――なるほど。しかしそうなると、「スマホを捨てよ、書を読もう!」みたいなことになりませんか? 30代なのにスマホばっかり見ていたら、やっぱりダメなんですかね。

佐々木:う~ん、そこは私も悩みどころなんですよ。

――確か、東洋経済オンライン時代はらくらくホン(ガラケー)を使っていたとか。

佐々木:そうです(苦笑)。最近までスマホを持っていませんでした。実際に読書量は減りましたよね。ついメールとか気になってしまう。「ニュースアプリの編集長なのに何を言っているのか」という感じでしょうが、やっぱり本は読んでいないとガス欠になると思います。

――学生時代は本が友達だった、とか。

佐々木:古典を中心にそれこそ1000冊くらいは読んでいました。その蓄積が東洋経済の記者時代には役に立った。今度はそれが枯れてきた29歳の頃に、スタンフォード大学に留学してやっぱり本を読みまくった。それで著書(『米国製エリートは本当にすごいのか?』と『5年後、メディアは稼げるか?』の二冊)も出せたし、オンラインの編集長という新しい挑戦もできました。本を読むことが、自分を深い部分で支えてきたんです。

――そして、今はまたその蓄積が枯渇しそうになっている、と?

佐々木:その危機感はすごくありますね。ただ、もはやビジネスでスマホが回避できないのは事実ですから、単純に「スマホを手放せばいい」という問題ではありません。

――ならば、「スマホばかり見ていていいのか問題」は何がいけないのでしょう?

佐々木:スマホが悪いのではなくて、日本語で読めるウェブのコンテンツのレベルが低いのがいけないんですよ。だからニューズピックスでは、これから独自コンテンツも強化していく。

――独自のニュース記事を作って、お金をとるということですよね。

佐々木:それも粗雑濫造なものではなく、深い知の世界とつながるような記事を作っていきたいんです。ニューズピックスをきっかけに、古典や思想書などを読みたくなるようにしていきたい。特に30代を超えたら、あとはスキルよりも人間力の勝負みたいになっていくじゃないですか。そうなると、いよいよ教養が問われる。そこをカバーしてこそ、ビジネスパーソンが読むに値する経済メディアだと思うんです。