■30代はキャリアの重要な時期に東京五輪を迎える幸運な世代

――それは業界の最新動向だけでなく、その背景にある思想や哲学にも興味を持ってもらいたいと佐々木さんが考えている?

佐々木:そうです。イノベーションは大事だけど、歴史や経験をもとに積み重ねていったものでないと、インパクトが弱いと思うんです。今の日本のスタートアップの人たちのレベルはどんどん上がっていますが、普遍的で、日本を超えた思想みたいなものを感じせてくれる人はほとんどいない。やっぱり、哲学とか教養の欠如が原因だと思うんです。

――そこを感じせてくれるものが出てきたら一気に面白くなりますよね。

佐々木:私も含め、今の30代は脂が乗り切った仕事盛りの頃に東京五輪を迎えるじゃないですか。これから数年間は日本のあらゆる分野で勝負の期間です。そのときに仕事の中心となって働けるのはすごく運が良い。だから本当に世界に通用するイノベーションが日本から出てきてほしいと思うし、ニューズピックスがそれを支援するメディアになりたい。私自身も、「これを逃したら次はない」というくらいの気持ちがあったから転職したわけですしね。

――まさに30代は、時代の節目に立っている世代なんですね。

佐々木:そのチャンスを生かしていくためにも、今から薄っぺらでない教養を身につけておくことが必要だと思っています。

――やっぱり、「30代が活躍したければスマホを切れ! 本を読め!」みたいな方向に……。

佐々木:いやいや(笑)。ニューズピックスも本も、バランスよく“使って”ください!

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<プロフィール>
佐々木紀彦(ささき・のりひこ)
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、東洋経済新報社に入社。07年9月に休職しスタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。09年7月より復職。12年11月から「東洋経済オンライン」編集長に就任。同サイトをビジネス誌系サイトでNo.1に導く。14年7月からユーザベース社に移籍し、経済ニュース専門アプリ「ニューズピックス」の編集長を務めている

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/小島マサヒロ