青木:そっちのほうがコンテンツとして面白いですし、読んだ人が行ってみたくなる。それは外国人向けであっても同じだと思うんですよね。“京都NO.1スポット!”って煽られて清水寺に行くよりも、好きな人から「清水寺はこんなすごいんだよ!」とレコメンドされたほうが、同じ体験でも何倍も楽しいはずなんです。すると、行った人がまた別の人におすすめする。そのポジティブなつながりを生むきっかけを提供するのが、「MATCHA」でありたいんです。あくまで、人の熱量を起点にして広がっていくサイトというか。

■コンテンツ主導=「人の熱量」へのこだわり

岩田:ソーシャルメディアやバイラルメディアがブームになって、世の中にコンテンツの量はどんどん増えていますよね。これは批判でもなんでもなく、ひたすら記事を量産する仕組みも整いつつあります。

青木:そうですね。

岩田:多分、そういう仕組みを活用していけば、京都の観光ガイド的なコンテンツも短期間でそれなりのものができるはずなんです。でも、それを「MATCHA」がやらないのはすごく重要だと思います。人の熱量って、ネットでもちゃんと伝わるんですよね。

青木:本当にそう思います。僕らは単なる「日本の観光サイト」よりも、「日本の良さを世界に伝えていきたい人が集まるサイト」を目指していきたいんです。

――これまでのウェブで目立っていたのは、粗雑濫造でもいいから、SEO対策で記事をたくさん作っておくことだったじゃないですか。でも、「MATCHA」の方向性はあくまでコンテンツ主導型なんですよね。

岩田:サイトの効果測定は何を重視しているのですか?

青木:拠り所は、やっぱり滞在時間とリピート率ですね。あとは、日本から外国語のデバイスで記事にアクセスしている人の数にも注目しています。それは日本に滞在している外国人が読んでいるということですから。この人たちの動向はすごく気にしていますね。

■企業のウェブ担当者は、まずブログをやろう!

岩田:まったく視点を変えますけど、青木さんの性格って社交的ですか? それとも内向的ですか? 若くして世界一周をして、しかもメディアの仕事をしていると、非常に社交的な印象を持たれがちだと思うのですが。

青木:いや、僕はどちらかといえば内向的ですね。新しいものが好きで、旅に行ったり、知らないものに触れることで自分の内面が掘り下げられていくのが楽しいんです。

岩田:そこで聞いてみたいのですが、企業もウェブで積極的に情報発信をするようになっていますよね。ただ、私自身もそうなのですが(笑)、社交的な人がウェブの担当者になるとは限らない。でも、仕事として情報発信はますます重要になっていく。そういうとき、社交的でない人は何から手を付ければいいと思いますか?

青木:そうですね……。個人のサイトでもいいから、自分でブログを書いてみてほしいです。書くことは何でもいいです。僕みたいに旅行記でもいいし、世の中の情報をまとめるだけでもいい。本を読むのが好きだったら書評でもいい。とにかく、自分で1ヶ月はやってみて、世の中に情報を発信するのはどういうことかって体験してみるだけでも、ずいぶん違うと思います。

岩田:そこで人に読まれるように試行錯誤することで、得るものはありますからね。

青木:それに、数は少なくても、誰かが読んでくれていて、記事に反応があれば単純にうれしいんですよ。仕事は抜きで、まずその喜びを体験してほしいですね。

――あとは、身を持って痛い目にあっておくとか。

岩田:小さいな成功体験と、かすかな炎上体験を積んでおくことはウェブ担当者になるうえで必要ですよね。もちろん、ボヤくらいがちょうどいいんですけど(笑)。

青木:うちの方向性を決定づけたのは、僕も編集長(鳥井弘文さん)もブログをやっていたことなんですよ。

岩田:ライターは署名式で、自分たちが面白いと思ったものしかおすすめしたくない、という姿勢もブログ的ですよね。

青木:そうですよね。「MATCHA」はすごくブログ的なメディアだと思います。

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(青木さんの個人ブログ「Hibilog」。学生時代の世界一周旅行記から始まり、現在も更新され続ける「MATCHA」の原点)