■ライターを募集したら約200人の応募があった理由

岩田:それにしても、それほど熱意のあるライターの方々を、「MATCHA」ではどうやって集めているのですか?

青木:実は「MATCHA」を立ち上げたときに、ライターを公募したんです。そうしたら、約200人も応募がありました。

岩田:それはすごい!

青木:僕もびっくりして、これはなんだろうって考えたんです。応募してきた理由を見ていくと、もともと僕のブログの読者だった人が多かった。僕の世界一周旅行記を読んで、自分も海外に旅しに行った、という話も多く聞きました。そして、その経験が楽しかったんでしょうね。だから、自分もその楽しさを他人に伝えていきたいと考えてライターに応募してくれたのではと思っています。

岩田:そのエピソードはライフネット生命の創業期と近いものがあります。うちも社長の岩瀬(大輔)がハーバード大学の経営大学院に留学していた頃、留学記をブログに書いていたんですね。その後、ライフネット生命は会長の出口(治明)と岩瀬が出会うことで始まっていくのですが、実は二人をつないでくれたファウンダーの方が、岩瀬のブログの読者だったんですよ。ずっとブログを読んでいて、いつか二人を会わせたいと思っていたそうなんです。

青木:ブログって、一生懸命にやればちゃんと反応が返ってくるんですよね。それが新しい出会いにもちゃんとつながっていく。

岩田:今、ライフネット生命で各セクションの中心人物になっている社員も、岩瀬のブログで社員募集の記事を読んで応募してきた人が多いんです。まだ準備会社の頃で、どうなるかわからないときに来てくれた人々です。

――それはツイッターやフェイスブックだと弱いんですかね?

岩田:う~ん、ツイッターやフェイスブックは過去ログが読みづらいんですよ。以前あったケースでは、岩瀬のブログを全部読んで彼の性格を分析して、「あなたに足りないのはこういうところです。だから私が必要です」と応募してきた人がいました(笑)。

青木:でも、そこまでしてくれたら絶対にうれしいですよね。

岩田:ええ。やっぱり、ブログはツイッターやフェイスブックよりも記事を投稿するまでに何度も考察するから、その分、人間性が色濃く出るんですよね。だから、先ほど青木さんが「企業のウェブ担当者はまずブログを書こう」と仰ったのが、すごくわかるんですよ。熱量をもって書かれたブログは、読んだ人も反応を示したくなりますからね。

青木:「MATCHA」はブログから始まったメディアですから、「取り上げる対象を好きな人がおすすめする」という芯は守っていきたいです。「ウェブには営業時間と場所が載っていればいい」という考え方もありますけど、それはグーグルが全部検索でやってしまう。結局、ウェブで人を動かしていくためには、ただ情報を提供するだけではダメで、「これ、いいでしょ!」という熱量が外国人向けであっても不可欠なんだと思います。

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<プロフィール>
青木優(あおき・ゆう)
1989年生まれ。株式会社Sen代表取締役社長。明治大学在学中に世界一周旅行をし、その経験をブログ「Hibilog」で発信。月間20万PVに成長させる。2014年1月にSenを創業。訪日外国人向けウェブメディア「MATCHA」をリリースした。

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/小島マサヒロ