――「こうあるべき」というのが、先ほど語っていた「PCは人の創造力を拡張するものだ」という理念ですね。
花里:ええ。もっとも、今のVAIOはなかなか難しい局面に立っていますよ。高楊枝ではいられないですし、結果として「言っていることとやっていることが違うじゃないか」ということにもなりかねない。ただ、その理念は忘れないようにしたいんですよね。やること自体には、賛否両論があっていいと思います。
■「自由だ。変えよう。」の意味
――賛否両論といえば、7月1日の立ち上げに合わせて日経新聞に掲載された広告も賛否両論でした。
花里:「自由だ。変えよう。」ですね。自由が何から何への自由なのか、いろいろな意味をもたせた広告です(笑)。
――これは対外的なメッセージとして読めますが、実は社内に向けたものでもありますよね。おそらく、大企業から出ることをネガティブに捉えるのではなく、「自由」と言い換えることで、社内に「可能性が広がっているんだ」と勇気づけた。
花里:もちろんそうです。VAIOというのはプロダクトそのものだけでなく、ブランドを売る会社でもある。ただそれを実現するためには、まず社内に「我々は何を目指すのか」というイメージが共有されていないといけないんです。
――そういう意味では、この広告にはVAIOブランドを背負う覚悟が見られますよね。
花里:正直、覚悟はすごくしていますよ。
――すでに新生VAIOとしての最初のプロダクトは販売されていますが、会社立ち上げから商品発表まで時間がなかったこともあり、3機種(「VAIO Pro 11」、「VAIO Pro 13」、「VAIO Fit 15E」)ともにソニーからの後継モデルにとどまっています。
花里:だから、真価が問われるのはこれからなんですよね。遅くともVAIO株式会社としての新製品は、年度内(来年の5月末)までには発売します。それはノートPCかもしてないし、もしかしたらタブレットかもしれない。
――ということは、試作タブレットが商品化される可能性はある?
花里:かなり高い確率で、これは量産品を出しますよ。ほかにもまだまだ考えていることはあるので、「VAIOなら何かをやってくれそう」という期待に応えていきたいですね。
<プロフィール>
花里隆志(はなさと・たかし)
VAIO執行役員(マーケティング・セールス/商品企画担当)。ソニー時代のVAIO事業の立ち上げから同ブランドの構築に携わり、2014年7月のVAIO株式会社設立で現職に
<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/小島マサヒロ