■激減した年収をパワポでプレゼン! 家族の反応は……?

14101401_03岩瀬:ご家庭ではどんなマネー教育をされています?

栗本:娘が3人いて一番上は大学生なんですが、うちは小学4年生からお小遣いをあげるようにしていました。4年生だったら400円、5年生だったら500円、これが基本給で、お風呂掃除一回につき10円だとか、実績給もその都度ではなく、お小遣いをあげるときに一緒に支給します。いつ何に使ったかをこづかい帳に一つずつ付けさせて、財布に入っているお金とこづかい帳の残高がぴったり合っていたら、無事来月分の小遣いが支給されるという仕組みです。

岩瀬:パパは会計監査人というわけですね。中学以降もそれは同じなんですか?

栗本:中高時代は基本給が高くなるだけで、仕組みとしては同じです。高校を卒業したらお小遣いはナシ。アルバイトはOK。お金を得る以外に学ぶことも多いので、ぜひやりなさいという方針です。こづかい帳を付けさせて良かったのは、無駄遣いをしたら残高が減って、自分が寂しい思いをするというのが実感としてわかったことですね。大学生の長女にはもうお小遣いをあげていないんですが、今でも帳簿をつけてるみたいです。

岩瀬:習慣として身に付いたんでしょうね。さすがお父さんがプロだけに、意識が高い。

栗本:こづかい帳をつけるだけの単純なことなので、マネー教育といえるかどうか・・・。でもこれってどの家庭でもできることですよね。うちならでは、という話だと、僕自身の収入の問題を家族会議で取り上げたことがありました。僕の年収は毎年の変動が大きいんですが、ある年、前年比6割減ということがあったんです。そうなると去年と同じ生活はできない。でも子どもたちは、夏休みや冬休みに家族でどこかに行くのが当たり前だと思っている。そこで正月に発表したんです。「これが去年のお父ちゃんの収入!」みたいなことを。

岩瀬:子どもって学校で親の収入のことを話していたりするし、意外と敏感ですよね。その時どんな反応がありましたか?

栗本:居間のテレビにパソコンをつなげて、パワーポイントのグラフを見せましたが、当時小中学生の娘たちは、意外と真剣に聞いていました。最初は「何やんの?」って感じで笑ってましたけど。実際、どこまで理解してくれたかはわかりませんが、お父さんが何か苦労をしてるんだな、というのは察知してくれたんじゃないでしょうか。

岩瀬:お子さんは何か言いました?

栗本:細かいことは忘れましたが、一番上の子が「私も無駄遣いやめるわ」というようなことを言ってました。子どもが節約したところで、せいぜい数百円の話ですけどね。僕は娘たちのこづかい帳を見て、何に使ったかに関しては一切口を出さないようにしていました。ただ数字をごまかすのだけは許さなかった。無駄遣いをやめるという意識が芽生えたのは、こづかい帳の記帳を通して、僕の年収が下がるということの意味をわかってくれたからなのかもしれません。

(後編につづく)

<プロフィール>
栗本大介(くりもと・だいすけ)1971年滋賀県生まれ。立命館大学法学部卒業後、株式会社東京リーガルマインド、ソニー生命保険株式会社を経て2001年にFPとして独立。2003年 有限会社エフピーオアシスを設立し代表に就任。滋賀県金融広報アドバイザー、びわこ学院大学非常勤講師、金融知力インストラクター。現在は、お金に関する様々な相談受けながら、大学や企業を中心に年間100回を超える講演を行うほか、テレビやラジオでも活躍中。また、資格取得のための「FPスクール」をインターネット上で運営し、FP知識の普及活動に力を入れている。2010年、「金融知識普及功績者」として金融庁と日本銀行より表彰を受ける。2013年2月「FPスクール3級合格編(あさ出版)」、同年9月には「FP技能検定勉強法(同文舘出版)」を上梓。

<クレジット>
取材・文/香川誠
撮影/植松千波