■最後に自分たちを支えるのは“理念”

そうやって考えていくと、会社、とりわけベンチャーのような小規模な企業ほど、“理念”というものがどれほど大事かよくわかります。

これは会社員なら誰もが共感できる「あるある」だと思うのですが、利益を求めて、KPI達成ばかりを優先していると、「だれの何のためのサービスか?」という本来の目的を見失ってしまいがちになるのです。

そして会社に余裕が生まれてくると、今度は社内の政治や都合とかで業務が進められるようになってしまう。こうした事態を避けるためには、先ほどの「ユーザー目線」というものを常に意識する必要があります。「誰のために作るのか?」ということですね。ユーザーではなく社内向けになってしまったら、確実に迷走します。

そして最後は、「自分たちがやっていて楽しいのか?」と問い続けること。そうじゃないと、苦しい時期があったときに乗り越えられない。ましてや、ベンチャーなんてやっている意味がないし、続けられない。

僕は社員に向かって、この3つを何度も問いかけています。

「それは何のための仕事なの?」
「誰のために作っているの?」
「その仕事をやっていて楽しい?」

そして、どんな業務をやるにせよ、社員ひとりひとりがいつもこの問いかけを持ちながら動けば、必ず良い会社になる、良いサービスを作ることができると信じて、僕らは働いています。

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<プロフィール>
辻庸介(つじ・ようすけ)
1976年大阪府生まれ。京都大学卒。マネーフォワード代表取締役社長CEO。新卒でソニーに入社後、04年にマネックス証券に出向。マネックス証券COO補佐、マーケティング部長を経て、12年にマネーフォワード設立。14年1月には米国大使館賞受賞、同年2月には「ジャパンベンチャーアワード2014」JVA審査委員長賞を受賞した。

<クレジット>
取材・文・撮影/小山田裕哉