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菅井:自分としては、危険な冒険をしているというつもりはないんです。もちろんリスクはありますよ。でも成功している人たちから直に話を聞ける仕事だったから、それがそんなに遠い世界とは思えませんでした。

岩瀬:銀行に来られるお客さんを参考にされたんですね。

菅井:そうです。お客さんの中から、時間的にも経済的にも余裕のある人10人をピックアップしてみたんです。自分が「こういう生活をしたいな」と憧れた人たちですね。するとまず、そのうち2人は医者と大会社社長の奥さんだった。これは自分とは違うだろうということで、続いて残り8人を見てみました。するとある共通点に気付きます。8人ともアパート経営をされていたんです。

岩瀬:アパート経営ってそんなにいいビジネスなんですか?
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菅井:もちろん失敗している人もたくさん知っていますよ。ただ、経済的余裕のある人の共通項として、アパート経営者というものが浮かび上がってきたということです。さらに絞っていくと、4人はもともとの地主さんで、残り4人は地主じゃないところからスタートしていました。当時の私も当然土地なんか持っていませんでしたが、後者の人たちを参考にすれば、自分もうまくいくんじゃないかな、と思ったんです。

株や投資信託といった金融商品は買った後「上がってくれ」と願うしかありませんが、不動産投資は客付けが得意な業者さえ見つければ、ある程度はお金の出入りを自分でコントロールできます。それがアパート経営の魅力だと思います。

岩瀬:でも誰もが成功できるわけではありませんよね。稼働率とか家賃の取り立てとか、アパート経営は大変そうなイメージがあります。

菅井:客付け、管理、クレーム処理、退出立ち入り、修繕。ひと通りのことは管理業者に任せています。全体の収入の5%ほどが手数料として出ていきますが、自分は何もやらなくていいと考えれば安いものです。その分時間的な余裕が生まれますので。

岩瀬:喫茶店を経営する余裕はそこから生まれているんですね。ローンはどのように組まれましたか?

菅井:自分の手持ち資金には手を付けずに、信用でお金を引っ張れるだけ引っ張りました。手持ち資金を頭金に入れてしまうと、次が借りられなくなるので。キャッシュフローとストックを評価していただいて、借りることができました。

岩瀬:借りたくても借りられないという人も多いと思いますが、借りるコツみたいなことはありますか? まさに銀行員として、貸す側にいた菅井さんはお詳しいと思いますが。

菅井:個人としての信用、信頼をしっかりと築くことですね、。銀行から見る判断基準というのは、勤めている会社だったり、数年間での収入だったりしますが、大事なのは信用、信頼を意識して生きるということです。銀行員も人間なので、相手の振る舞い一つで融資をやめたり、逆に融資をしてみたいと思ったり、ということがあります。

岩瀬:なるほど。銀行に行くとどうしてもお金のことばかり考えているので、自分の言動や行動まではなかなか気が回りませんね。だからこそ素の人間性を見られている、と。

菅井:言葉遣い、マナー、服装なんかも重要ですよ。25年間の銀行員生活でわかったことですが、お金を追いかけても、お金は自分に付いてきません。最終的には人間同士の信頼関係なんです。誰にもできる当たり前のことに意識を集中して「まっとうに」生きていれば、きっと銀行は融資してくれますよ。そして結果としてお金もついてくる。お金ではなくて、信頼、信用を追いましょう、ということですね。

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<プロフィール>
菅井敏之(すがい・としゆき)
1960年山形県生まれ。県立山形東高等学校、学習院大学を経て、1983年4月三井銀行入行、個人・法人取引およびプロジェクトファイナンス事業に従事。京都支店副支店長、金沢八景支店長、中野支店長を歴任後、独立。現在は不動産賃貸事業、トランクルーム事業等の実業を展開中。6棟のオーナーとして、年間7,000万円の不動産収入がある。また、2012年には東京の田園調布に「スジェール コーヒー」をオープン。著書『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)が累計23万部を突破(2014年11月)。
公式サイト

<クレジット>
取材・文/香川誠
撮影/村上悦子