■海外のイベントでも連日の大行列

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――そういった試みを最初に行ったのはいつ頃ですか?

岡本:09年に東京・早稲田の小さなギャラリーで、部屋中をマスキングテープで飾った展覧会を行いました。すべては私たち社員の手作りです。なんせ最初ですから、お客さんが来るかどうかも確信がもてなかった。でもフタを開けてみたら、数十人でいっぱいのスペースに毎日100人以上が来てくれたんです。

そこからはネットの口コミで、展覧会を行うたびに来場者が増えていきました。特に印象に残っているのは、11年に渋谷で行った「mt博」ですね。

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――ファン感謝祭みたいなものですか。

岡本:ええ。これまでより広い会場を借りたのですが、それでも予想をはるかに超える来場があって、行列がすごいことになってしまいました。しかも10月31日~11月8日の開催なのに、3日目には売る物がなくなってしまいまして……。ワークショップ中心に切り替えたり、後日の配送をお約束したりと、とにかく大変なイベントでした。
「mt」の人気をはっきりと確信したのは、ここからですね。

――海外展開にも積極的です。

岡本:マスキングテープ自体はあっても、こんな風にデザインされたものがなかったそうなんです。特にヨーロッパでは好評で、10年にパリで開催された「メゾン・エ・オブジェ」(国際的なデザイン見本市)に出品したところ、10カ国での販売が決まりました。現在は海外イベントも積極的に展開しており、パリ、ニューヨーク、中国、台湾、韓国などでもワークショップや展覧会を行っています。

――「mt」のFacebookページに寄せられたコメントを見ると、例えば中国や台湾で開催した際には、しっかり現地の人から「いいね!」が集まっている。国を超えた関心の高さがうかがえます。

岡本:「かわいい」は国境を超えるのだと実感しています。今年10月には台北で大規模な「mt博」を行ったのですが、連日3,000人近い来場がありました。日本の地方都市から生まれた商品が海外の人からこんなに愛されるなんて、本当に嬉しいですね。

■デザイン×和紙=「mt」

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――現在も生産は倉敷市の本社工場で行っています。しかしこれだけ人気があるのですから、もっと規模を拡大して、大量生産をしようという意見はないのですか?

岡本:今後はソフト・ハード面をもっと強化し、大量生産というよりもオーダーメイドや「mt」にしかないオリジナリティのある商品作りを強化することで、もっとマスキングテープ文化を拡大させたいです。「mt」発売当初は一家に1個マスキングテープをというのが目標でしたが、今はお客さんが自分でデザインしたマスキングテープを手軽に作成することができるようにしていきたいと思っています。

限定商品などでは生産が追いつかなくてお叱りを受けることもありますが、品質を犠牲にすることがないように、かわいいデザインと高いクオリティの両立は守っていきたいと思っています。

――なるほど。たとえデザインを真似することはできても、和紙の技術を真似することは簡単ではないですからね。「mt」以前からつちかってきた技術があってこその人気だと。

岡本:そう思います。それに大げさかもしれませんが、海外の人が「mt」に触れることで、日本文化の魅力を知るきっかけにもなってほしいんです。そのためにも、商品の本質は決して忘れないようにしていきます。

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「mt」ブランドサイト
「mt」Facebookページ

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/小島マサヒロ