寺田:「哺乳瓶って、やはり熱湯消毒したほうがいいんでしょうか?」みたいな質問がよく寄せられるんですが、これって、昔なら近所の人や、自分の母親やおばあちゃんに聞いていたことだと思うんです。でも、今は周囲に育児の“先輩”がいないママのほうが多い。だから「育児の正解」がわからないまま子育てをしていて、それを不安に思っているのだと感じます。

――そういったママにとって、スマホから気軽に医師に質問できるサービスは心強いですね。

寺田:あと、これはママだけではないですが、テレビに影響されやすい人も多いんです。情報番組とかで「●●病に注意!」みたいな特集をすると、その質問が一気に増えます。これは著名人が亡くなったり、病気になったことが報道されたときも同じです。

最近では、とある俳優さんが亡くなった際に、「私の症状ですが、これって亡くなった俳優さんと同じ病気ですか?」という質問がけっこう来たんですよ。

――ちょっと調子が悪いと、最近耳にした病名ではないかと不安になる。

寺田:検索する人も多いから、ネットで調べると上位に出てきちゃいますしね。だからドクターズミーでは、ニュースになっている病気の記事も提供しています。これも医師による解説記事で、専門家の観点から答えてもらっています。これを読んでもらって、少しでも不安が緩和されればいいかなと。

――ママの孤立もそうですが、ドクターズミーって、「いかにユーザーの不安を和らげるか」ってことがテーマなんですね。

寺田:そうです、そうです。それにオンラインの健康相談サービスでは、そもそも医師が“診療行為”を行ってはダメだと法律で決まっているんですよ。

――あ、「それはこの病気ですね」と言うことができない?

寺田:病名の断定は禁じられています。だからドクターズミーって、「哺乳瓶は熱湯消毒したほうがいい?」みたいな質問が一番向いているんです。あとは、「何科を受診したほうがいいですか?」といったアドバイスや、「病院でこう言われたのですが……」といったセカンドオピニオン的な使い方も多いですね。

■目標は「主治医を持ち歩く」

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――まだスタートから1年ちょっとですが、将来の目標は?

寺田:これはまだ検討の段階なのですが、医療のパーソナルサービスを提供していきたいと思っています。

――ダイエットのパーソナルトレーナーのような。

寺田:そうですね。ひとりの医師が、オンラインでひとりのユーザーの健康を管理する。健康診断の結果をデータ化して、食事や運動のアドバイスをしていくようなイメージです。花粉症の人だったら、春先に「そろそろ病院に行ったほうがいいですよ」と伝えてくれたり。

スマホに主治医をインストールして持ち歩く、といったことができるようになるといいなと考えています。

――現在は月額300円(初回は無料)で提供していますが、それだけのことができるようになれば、もっと高額でも利用したいという人がけっこういそうです。

寺田:アップルがヘルスケアの事業に参入したことが話題になりましたが、オンラインの健康系サービスのほとんどは、機械の力でデータを分析しています。でも、私たちはあくまで人力にこだわることで、ほかのサービスと差別化していきたい。それでこそお金を払う価値があるとユーザーに感じてもらえるんじゃないかなと思っています。

病院は全国にあります。でも、「そもそも、これって病院に行くべきなのか?」を判断してくれるサービスは少ない。今は病院の検索までですが、いずれはドクターズミーから診療の予約ができるようにしていくつもりです。

――何科を受診すればいいのかわからないことも多いですから、医師に相談して、そのまま予約できたらかなり便利ですね!

寺田:それができるようになれば、社会のインフラとして認められるようになると思うんです。ドクターズミーはそこを目指していきたいですね。
(後編につづく)

●専門家が答える医療(ヘルスケア)Q&Aサイト「ドクターズミー」

<プロフィール>
寺田佳史(てらだ・よしふみ)
1984年東京都生まれ。中央大学卒業後。2007年に株式会社サイバーエージェント入社。
2013年に株式会社サイバー・バズで「ドクターズミー」を立ち上げ、事業責任者としてサービス向上に努めている。現在2児の父。

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/小島マサヒロ