15010902_1たくさんの美術館やギャラリーが点在する東京。ところが、その多彩な情報をウェブサイトで横断的に一覧できるようになったのは2004年、情報サイト「Tokyo Art Beat」(TAB)ができてからのこと。いまや月間65万ビューを超える情報ソースに成長したTABの現在とこれからについて、TABを運営するNPO法人GADAGOの富田さよさんと、田原新司郎さんにお話を伺いました。
(「東京のアートシーンを一望する情報サイト『Tokyo Art Beat』の作り方」はこちら)

■東京の美術展来場者は世界トップクラス

──東京って、美術展の数が、ものすごく多くないですか?

富田:ええ、海外の年と比較して美術館自体が多いんですよ。

田原:見に行くのが好きな人が多いんですね。例えば「国宝 阿修羅展」を100万人の方が見に行くとか……。世界を見渡してもかなり特殊で、美術展の入場者ランキングを見ると、世界の中で日本が上位5番くらいを独占することもあるんです。

──そうなんですか!

田原:はい。だからもうちょっとマーケットが広くなってもいいのにな、と思うくらいなんです。
ニューヨークよりも東京の方がユーザーが多いんですね。しかも東京はニューヨークみたいにアートスペースが固まってなくて、広いエリアに点在しているので、TABみたいなものがあると便利ではないかと思います。

──これだけの美術リソースがあるからこそ、日本語の情報だけで終わるのはもったいない。

富田:たまたま立ち上げメンバーがフランス人と日本人だったということもありますが、せっかくだから日本に住む外国人や、旅行で来日する人にも使っていただけるように、当初からバイリンガルで運営しています。

田原:だいたいいまTABのサイト全体の10〜15%くらいが英語ページへのアクセスです。

──ウェブサイトだけではなく、フリーペーパー「Tokyo Art Map」も出されていますが、10万部とはすごいですね。配布するのは大変ではないですか?

「Tokyo Art Map」は、人気の高い美術展情報を地図上で一望できるフリーペーパー。ウェブからダウンロードも可能。

「Tokyo Art Map」は、人気の高い美術展情報を地図上で一望できるフリーペーパー。ウェブからダウンロードも可能。

富田:いまは500か所くらいの美術館やギャラリー、主要駅、カフェ、レストラン、ショップなどに置いていただいています。あとは広告掲載のあるイベント会場に置かせていただいたりもしています。

田原:当初は、置いていただく場所を増やすために、「Tokyo Art Map」を持って、カフェとかレストランとかギャラリーを1軒1軒訪ねて、営業していました。最初から好意的に置いてくださるところもあれば、「いま忙しいんだから、見ればわかるでしょ」なんていう対応をされたこともありました。最近では逆に、カフェやレストランや個人の方からリクエストが多くなって、配布が追いつかないくらいです。

──ウェブとアプリはそれぞれどのくらいの利用があるんですか?

田原:ウェブサイトはだいたい月間65万ビューです。多分、日本のアート系のサイトの中ではいちばん多いんじゃないかと思います。

富田:TABのアプリは累計約10万ダウンロードで、もうひとつの「ミューぽん」(毎年売り切り型の美術館割引クーポンアプリ)も毎年好評をいただいています。ダウンロード数は年平均1万くらいです。

──美術館の割引クーポンアプリ「ミューぽん」は、どういった形で始めたんですか?

田原:少しでも多くの方に、実際に美術館に足を運んで欲しいという思いから始めました。紙のクーポンよりアプリの方が、なくさないし、忘れないし、お知らせが届くので便利だということで作ったのが最初です。割引分は主催者の方にご負担いただく形で運営しています。こちらはその分、集客をお手伝いします、というスタンスです。

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