■選ばれる人になるために心がけている3つのこと

出版不況の逆風が吹きすさぶなかでも、年間約20冊の書籍にかかわり、今でも仕事の依頼が引きも切らない藤吉さんには、選ばれる人になるために、心がけていることがあります。

●基本的に、「頼まれた仕事」は引き受ける
「仕事を頼まれたときの僕の返事は、3種類しかありません。『はい』か『イエス』か『喜んで』(笑)。断るのは、スケジュールが合わないときと、どうしても、自分には手に負えない案件が来たときだけです。基本的には『引き受けるのが前提』ですね。それに、好きな仕事ややりたい仕事だけをやっていたら、仕事の幅は広がらないし、自分の成長も望めないと考えています」

●付加価値を上げるよりも、失点を防ぐ
「文章力や編集力を磨くことよりも、『社会人として、当たり前のことを、おざなりにしない』ことのほうが大事だと僕は思っているんです。時間を守る。挨拶をする。身だしなみに気をつける。人当たりをよくする。謙虚でいる。不平不満をこぼさない。快く引き受ける……。特別なことをして付加価値を上げるというよりも、失点を防ぐという考え方ですね。それができると、『当たり前のこと』ができていない人たちが勝手に落ちていって、気がつくと自分が残っている、という図式です。まだまだ僕もできていないのですが……」

●70点でも、100%の結果を出す
「出口治明会長は、『人間ちょぼちょぼ主義』とおっしゃっていますね。『人間にはアホな人も賢い人もいない』と。僕も、『自分はちょぼちょぼライターだ』と自覚しています。特別な文才も、ずば抜けた企画力もありません。自分がどれほどがんばって書いても、編集者から見れば、僕の力は『良くて70点くらい』だという認識でいるんです。でも、70点の実力を、いつでも100%出し続けることができれば……、どんなジャンルの仕事でも大崩れしなければ、秀でた才能がなくても、ライターとしての僕の存在価値を示せるかな、と思っています。野球にたとえるなら、『ホームラン王も首位打者もとれないけれど、20年間、2割8分をキープして、引退する歳に2000本安打を達成する』、そんなイメージです」

お話の後半では、具体的に「わかりやすい文章を書くコツ」をうかがいましたので、次回をお楽しみに。

<プロフィール>
藤吉豊(ふじよし・ゆたか)
フリーランス編集者/ライター。フリーランス4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。編集プロダクション「東京ホットライン」にて編集・執筆に従事。退社後、「マガジンメーカーズ」(現・交通タイムス社)にて、自動車専門誌『スーパーVIPバン』と『オートファッションimp』の編集長を歴任、2001年からフリーランスに。文化人、経営者、アスリート、グラビアアイドルなど、インタビュー実績は2,000人以上。2006年以降はビジネス書籍の編集協力に注力。大学生の文章指導なども行っている。

<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン編集部
撮影/鈴木慎平