■世界で活躍する人の共通点

──ご著書『世界で働く人になる』のなかで、「世界で活躍する人が必ず持っている17の共通点」が紹介されていますが、そこからひとつ例を挙げていただけますか?

田島:はい。みんな基本的に、ものすごくポジティブ、朗らかなんです。私が働いている国連機関では、世界各地でプロジェクトが年間150本くらい立つのですが、イタリア本部ではそのプロジェクトのクオリティをチェックするんです。衛星中継で本部と現場とをつないで、新しいプロジェクトについて議論する場を、200以上経験しました。シリアと電話中継するときなど、銃弾の音が聞こえてくるようなこともありました。

そのようななかで、やることがプロジェクトの「問題点を洗い出す」ことなので、結構ネガティブな話になったりするのですが、それをはね返すくらい、みなさんポジティブですね。

──もともとそういうポジティブな人が現場に行くのか、あるいは現場に行ってそうなるのか、どちらなんでしょう?

田島:多分、現場に育てられてそうなるんじゃないでしょうか。厳しい場面に直面することもよくありますし、いろいろな人と協力し合わないと仕事ができませんから、そうでないとやっていけないのだと思います。みなさん本当にポジティブで自己肯定感が高い。自分をかけがえのない存在だと思っているのだと思います。だからこそ、いろんなところにも行けるし、いろんな人を受け入れることができるのかなと思います。

■新卒の就職だけで人生は決まらないし、世界は楽しい

15021301_4──世界の現場で体験してきたことを、本にまとめようと思ったのはなぜですか?

田島:日本はものすごくいい国です。そこを起点に、世界の人たちと自由につながるのは、とてもエキサイティングなことだと思います。その楽しさを、みなさんとぜひ共有したいという気持ちが強くわいてきたんですね。特別な環境で育たなくとも、世界で働くことはできると自分自身が経験しましたし、これから東京オリンピックもありますので、オープンな心で外の人たちと交流する人が増えたら嬉しいなと思いました。

──最近は大学での講演なども増えているそうですが、学生の方に伝えたいことは?

田島:就職活動に悩む人が多いのですが、大学生の方には、新卒で第1希望の企業に入るだけがいいことじゃない、と伝えたいですね。
私の場合も、最初に監査法人に入ったことが、結局国連に入るための近道だったんですね。手に職を持つことで、国際機関で役に立てるということが、自ら挑戦してみてわかりました。途中は、先が見えず真っ暗で進むのが怖かったこともあったのですが、自分では遠回りだと思っていたことが、結果的に近道だったんだということがあって。人生わからないものですよね。

──先ほどの「ポジティブな姿勢」を保つための秘訣はありますか?

田島:そうですね。自己肯定感を高めるために、自分で簡単に毎日できることもあります。たとえば自分で自分に毎日「よし!」「いいぞ!」とか、ポジティブな言葉を語りかけてみたり、身振り手振りで自信があるように見せてみたり。そういう小さいことでも、積み重ねると結構良い影響があると思います。

──世界のどこでも、働くには、自己肯定感はすごく大事ですよね。ご自分でも実践されているんですか?

田島:ときどき落ち込んだりすると「えらいぞ、がんばれ」なんて自分で言ってみたりしています(笑)。

<プロフィール>
田島麻衣子(たじま・まいこ)
国連職員。東京生まれ。青山学院高等部、青山学院大学国際政治経済学部卒業後、KPMGに入社。オックスフォード大学院への留学などを経て、2006年より現職。これまでアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ラオス、アルメニアに日本を加えた7カ国に住んだ経験を持ち、共に働いたことのある同僚の出身国は、60カ国以上を数える。

<クレジット>
取材・文/ライフネットジャーナル オンライン編集部
撮影/村上悦子

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本記事に記された見解は著者個人のものであり、国連世界食糧計画の見解を何ら反映するものではありません。