編集長の岩田です。
「みんなの毎日が楽しく、明るくなることを目指しています。」
これは、次世代お笑いウェブサービス「写真で一言ボケて(bokete)、以下ボケて」の説明資料に書かれていた一文です。ネットサービスはとかく、ページビュー(以下、「PV」)やユーザー数やビジネスモデル、マネタイズとスケールについてなどなど、数値的な部分が評価されることが多いのですが、果たしてその側面だけでサービスの価値を判断してしまってよいのでしょうか。

左:イセオサムさん(株式会社オモロキ) 右:新甚智志さん(株式会社キャッチボール)

左:イセオサムさん(株式会社オモロキ) 右:新甚智志さん(株式会社キャッチボール)

今回、「ボケて」のサービスを支える制作・システム開発・プランニング担当の、株式会社オモロキのイセオサムさん、株式会社キャッチボールの新甚智志さんに、「笑い」をベースとしたサービスとチーム構成や働き方についてインタビューしてきました。

■きっかけは2人の開発者の思いから

ソーシャルメディアの広がりとともに、国内最大級といえるお笑いに特化したウェブサービス「ボケて」。月間2億PV、アプリのダウンロード数も400万を突破、大手企業とのコラボ企画を実施するなどと、順調に成長を続けるウェブサービスです。そのベースは、たった3か月で作ったプロトタイプからスタートしました。

イセ 「オモロキの創業者である鎌田と和田が2人で2008年に『ボケて』を作りました。2人がお笑いをベースに、こんなサービスがあったら面白いよね、と考えながら、3か月ぐらいでプロトタイプを制作し、僕は彼らの友人ということもありそのタイミングでβテストから参加しました。
当時“笑いのツボが近い人同士は友達になりやすいんじゃないか”という仮説があって、それをSNS的なウェブサービスとして開発していました」

──立ち上げ当初から、ここまでずっと順調に伸びてきたのでしょうか。何か途中でブレイクするきっかけはありましたか。

イセ 「実は立ち上げてから、月100万PVぐらいまではスムーズに伸びたんですね。ただそこから、2012年の前半まではずっとその状況が続いていました。ただ彼らはその状況が良くないとは思っていなくて。

ところが、2012年の5月に急に盛り上がったんですよ。「ボケて」は、コアなファンたちがどんどん投稿して、ボケとお題が溜まっていったんです。目立った変化はその間はないものの、どんどん蓄積されていて。
おそらくタイミングの問題が大きいなと思うのですが、ソーシャルメディアとかまとめサイトが普及し、急にそれまで蓄積されていたコンテンツがまとめられるようになったんですね。それがFacebookやTwitterのシェアで広がりはじめました」

──ユーザーの変化は感じますか?

イセ 「2008年の立ち上げ当初は、投稿も評価も30代・40代のインターネットと言葉遊びが好きな方々や広告業界の人が多かったようです。そこから、ただ見ているだけで楽しむという人が増えたんですよね。そして、徐々にその人たちも、自分も投稿しようとなってきて、大きく広がっていった感じです。深夜番組がゴールデンにいくような感じだと思いますね」

■ウェブサービスの成長を深夜からゴールデンに昇格する番組に例えてみると・・・・

──イセさんはTV業界からネット業界に移られました。番組制作で経験したことはウェブサービスでも活かせていますか?

イセ 「それはすごくあります。テレビ局入社当時は“すごい斬新な映像”を作ろうと考えていたわけですが『ズームイン!SUPER』という朝の番組を担当することになってから、1千万人が視聴する番組とは? 小学生からお年寄りまで分かる内容とは? ということをすごく学んで、それが先ほど言った『ボケて」がちょうど深夜番組からゴールデンへと移り変わっていくときに役に立ったと思います。大衆にウケるということの価値、というか。

多くのネットサービスがそれを超えられないですよね。やっぱり自分がおもしろいと思ってるものしか受け入れられないから大きくなれないんです。かっこ悪いじゃないですか、大衆がどうとかって言うのは。もっとエッジの効いたことやりたいと思いますし。でも本当は大衆にウケることに価値があるって言える人はやっぱりかっこいいなと思って」

■企業コラボ、委員会方式によるプロデュースという新しいウェブサービスの形

──2012年からユーザー同士で楽しむボケてに企業がお題を出す「企業コラボ」というメニューが追加されました。そもそも企業からオファーがあって実現したのでしょうか。また、ユーザーからネガティブな反応はありませんでしたか?

新甚 「コラボ企画については、企業からお声がけいただくことが多いんですよ。2008年に、アドビさんとのタイアップを弊社キャッチボールが代理店として実施したのが最初です。ユーザー数が順調に伸びるつれ、いよいよ企業からのオファーが増え、対応が煩雑になっていくのが分かったので、僕は制作や運用をしているメンバーには今の仕事に注力して欲しいと思って、オモロキさんに、一緒にやりませんかと声をかけました。ありがたいことにユーザーからのネガティブな反応も、これまではありません」

イセ 「それだけ慎重に実施したからとも言えますね。要はユーザー同士で盛り上がっているところに、企業がいきなり入ってくるわけなので、“バリバリ広告増えたな”と思われると嫌だなっていうのがありました。また、一番気をつけているのは、ユーザーが楽しめる企業コラボにしようと。“こんな企業をいじっていいのか”という驚きを提供することを最初からすごく意識してました」

新甚 「そういう意味では参加する企業の側においても、それなりのスタンスで準備をしないと、ユーザーからスルーされてしまう仕組みになっています。敢えて、『ボケて』というコンテンツプラットフォームでコラボ企画を実施いただくからには、ユーザーを巻き込んだり、職人の創造性をかき立てられてこそ、企業のプロモーションとしても成功だと捉えています。そのため、企業の担当者様には、ボケてのサービス特性をしっかりと説明し、『ユーザーと向き合いましょう』というお話をして、ご理解いただけた企業さんとご一緒させていただいてきた、というのが現状です」

(次ページ)『ボケて』がうまくいくための、究極のフラットな組織とは