■「ボケてコラボ委員会」が出来た理由とは

「ボケて」は通常のサービス運用以外にも、企業やポータルとの引き合いが増え、組織体制は各社が強みを活かせる委員会方式をとるようになっていきます。最初は友人同士で繋がっていたのが委員会(ボケてコラボ委員会)という組織になっていったのです。21世紀的な働き方や組織論について、果ては売上げの分配についてひとつの仮説がありました。

イセ 「オモロキという会社は不思議な会社で、代表の鎌田はいつも『基本的にみんなひとつずつ会社を持ったほうがいいんじゃないか』と言っています。一方でひとつの会社でずっと勤めるのも、今の時代けっこう難しいですし、誰かが上で誰かが下、というのをやりたくなかったんです。
それで基本的にフラットであるのがベストと考え、委員会方式にたどり着きました。映画の製作委員会も近いと思うのですが、参画した企業が有機的につながっていくっていう組織のつくり方をしたいと思っています。

スピードとか利益を最優先にすると、ひとつの会社に全員集めて、一気に立ち上げるのが効率が良いんですが、『ボケて』は異なるやり方でサービスをちゃんと普及させようっていう実験的な試みをしています」

新甚 「鎌田はずっとそういう発想なんです。最初に話をした時は、媒体も育てていくつもりでやるから独占で販売させて欲しいと言いました。そうすると通常は『代理店方式』 で、売上げのマージンが何%といった収益配分の割合の話になりがちですが、それだと面白くないよね、と。

最後彼は、“等分”って言うんですよね。関わる人は全員等分でやるっていう。いろいろ議論して常に正しい答えはないのですが、等分にやるとうまくいくはず、っていう実験に良い意味で僕らも巻き込まれてる感じです」

イセ 「等分でやる場合、例えば力の入れ方が、全体を10とした場合に、A社が6でB社とC社がそれぞれ2だとすると、6のA社はがんばらざるを得ないですけど、B社とC社の人がサボりだす、ということもあるんですよ。でもA・B・C社がそれぞれ3、3、3にして1余らしたりすると、みんな3以上がんばる。『ボケてコラボ委員会』は、各社が3以上のパフォーマンスを出している、いい状態だと思っています」

──現時点でのフラットな組織体についての評価はいかがですか?

イセ 「相対的に見たらすごくおもしろくできてるなと思いますね」

新甚 「あえて悪い点を挙げると、相互の信頼が大きいため、各自がマイペースになることくらいです。それぞれ、この分野はあの人が考えて進めるから、と考えていて、良い意味で外からのプレッシャーがあまりありません。今のところ上手くいっているので、努力して継続していきたいと思っています」

イセ 「それはありますね。だからもし同じスピードで成長する競合の会社が現れたら、やり方を考えなきゃいけないのかも」

──フラットである、売上げ等分である、というのが今っぽい感じがします。フラットがゆえにコミュニケーションが煩雑になるのではと思いましたが、いかがでしょうか。

イセ 「もちろん同じ組織内にいたほうがコミュニケーションは早いんですけど、基本ほぼオンラインでやってますので、できなくはないな、という感じですね」

新甚「みんなコミュニケーションの手段やタイミングをあまり間違えないのと、そもそも信頼が築けているというのが、大きいと思います。なんだかんだ言って、最後は、この人はこういう感じで実現させるんじゃないか、という期待感はあるので、それほど心配はしていません」

イセ 「コミュニケーション能力は大事ですよね。なので、いきなり新卒が入ったら確かにきついとは思います」

新甚「このジャンルはこの人、そのジャンルはこの人、もしくは迷ったら2人で決める、それでも決まらなかったら誰に話をする、というプロセスが暗黙の中で合意がしっかりとれているのが良いんだと思います。だからみんなプロジェクトをいろいろ抱えていても、レスが早い。やっぱり発想とか思想で一緒にできる人が集まっている感じがします」

イセ 「あと、たまに合宿したりします。普段はオンライン上での会話なので、会う時間はすごく貴重に感じますし、楽しいですよね。毎日ミーティングしているとちょっといやになることもあるんですけど(笑)、たまに会うと嬉しいじゃないですか」

■働き方と世代論

イセ 「働き方の話になると、よく出るのが世代論ってあるじゃないですか。オモロキは、ほぼ全員同世代で、なぜか僕以外ほぼ同じ大学の同じ学科卒で」

新甚「それは、1周回って“ダイバーシティがない”とも言えます。職務経歴のダイバーシティはあるけど、指向性としてはわりと一緒っていう」

イセ「いつからインターネットに触れているかとか、すごく大事な気がしてて。コミュニケーションコストは最小限にしたいから、話が通じやすい人とやるっていうのは大事なんですよ。そうするとコンテクストが近い人のほうがやっぱりやりやすいなという実感があって。たまたまなのかもしれないけど、必然性もちょっと感じちゃいますね。

例えば、年齢が5歳ぐらい離れているだけでも、子どもの時に流行したものを説明するのに時間がかかるじゃないですか。とくに、お笑いのサービスを提供していく上で、お笑いの共通言語を持っているかどうかは重用だと。また、会社として同年代でやろうとなったときに、普通同年代を雇うのって難しいじゃないですか。そうすると、同じ世代同士の会社と会社で組んでいくのがよいのかなと思います」

<プロフィール>
イセオサム
株式会社ハロ/ HALO Inc. 取締役COO。日本テレビ放送網株式会社へ入社し、ズームインスーパーの制作に関わる。2008年株式会社ハロを設立、取締役に就任し現在に至る。2013年にプレイ株式会社を設立、同じくボケてを運営する株式会社オモロキ取締役に就任。「シェアしたくなるニュース ViRATES」のプロデュースも行う。

新甚智志(しんじん・さとし)株式会社キャッチボール代表取締役。プリント基板検査装置メーカーに入社後、中東・アフリカ地域を含めた欧州における販路拡大・ドイツ現地法人設立およびグローバル営業管理を担う。その後、2008年株式会社バスキュールと共同で、デジタル/ソーシャル領域に特化したPR&メディアエー ジェンシーの株式会社キャッチボールを創業。バズ・拡散志向のPR企画をクリエイターやマーケターと共創する他、「写真で一言ボケて(bokete)」「Togetter」のマネタイズパートナーも。TIAA、ONE SHOW、文化庁メディア芸術祭等受賞。

<取材・文>
ライフネットジャーナル編集部 岩田慎一