金柿秀幸さん(株式会社絵本ナビ代表取締役社長)

金柿秀幸さん(株式会社絵本ナビ代表取締役社長)

約4万冊の絵本からお気に入りの1冊を見つけることができる絵本・児童書の総合情報サイト『絵本ナビ』。ウェブサイト上で全てのページの試し読みを行ったり、プロフェッショナルな視点から選書を行ったりと、今まで知らなかった絵本に出会うことができるようなアイディアが秘められています。大手シンクタンクでの出世コースに疑問を感じ独立を決めた『絵本ナビ』創業者で代表の金柿秀幸(かながきひでゆき)さんは、「絵本と出会って自身にも大きな変化があった」と話します。絵本の持つ魅力とは何か、お話をうかがいました。(前編はこちら)

■“我が家のエピソード”と”専門家の視点”が絵本との出会いをつなぐ

──インタビュー前編では、もともと大手シンクタンクで「仕事一筋」に働いていた金柿さんが、どのような思いで独立し『絵本ナビ』を立ち上げるに至ったのかをうかがいました。『絵本ナビ』では本を探すほかに、レビューを残すこともできるんですよね。

金柿:レビューについては立ち上げの当初から、客観的な商品評価や専門的な絵本の書評ではなく、絵本を読んだ時の「我が家のエピソード」を自分の言葉で、とお願いしています。「うちの子はここでほろっと泣きました」「なぜだか分からないけれどここが好きなんです」というような。レビューの仕組み自体が特別なわけではなくて、コンセプトが他と違うのかな、と思います。そのエピソードから「面白そう」「読んでみたい」と連鎖が生まれてくれると嬉しいですね。

──書店で行われるフェアのように本が紹介されているのも気になります。

金柿:お子さんが読みたい本と出会えるように細かいテーマを作っています。たとえば「下の子が生まれたときに読みたい絵本」「春を迎えるときに読む絵本」というようなもので、今では約1500テーマもあります。これは普通、書店員さんや司書さんがやっていることなんですよ。「この絵本が好き」と言われたら「じゃあこれを読むのはどう?」と手渡すような「つなぎ手」としての役割です。

──最近では「絵本コンシェル」という新しいサービスが始まりましたよね。

金柿:10年以上やってきて、蓄積された膨大なデータをもとに、ようやく作ることができたシステムです。これは、年齢と好きな本を3冊選ぶとおすすめの本を探してくれるもので、試し読みも出来ます。こうした新しいサービスも使っていただいて、家にいてもお気に入りの絵本に出会う楽しみを感じてもらえたら嬉しいですね。

■子どもと大人の間にあるコミュニケーションツールとしての「絵本」

──金柿さんご自身は、絵本によって何か影響を受けましたか?

金柿:それまでビジネス書しか読んだことがなかったくらいなので、絵本に驚かされることが多かったです。独立して絵本ナビをつくって、子どもに絵本を読んであげて……。人生をやり直しているようですね。

(次ページ)子どもとの心をつなぐ、コミュニケーションツールとしての絵本