AsMama代表・甲田恵子さん

AsMama代表・甲田恵子さん

子どもの送迎や託児をもっと気軽に安心して頼めることができたら──。これは、忙しい毎日を送っているママたちの共通の願いではないでしょうか?

ネットの仕組みを通して、昔ながらの「ご近所での頼り合い」を実現し、ママたちの切実な悩みに応えているのが、AsMamaの「子育てシェア」です。利用者が支援者に支払う謝礼は1時間500円〜700円。ユーザー目線で利用しやすく安心なサービスを追求した「子育てシェア」はママたちの支持を獲得し、登録者はすでに2万4000人を突破しました。

AsMamaを起業した甲田恵子さんを突き動かす原動力はどこにあるのでしょう? 起業への思いや「子育てシェア」を実現する道のりについてお話をうかがいました。

■支援して欲しい人と支援できる人が出会える場を作ろう

──AsMamaが生まれた経緯について教えてください。

甲田:以前勤めていた会社が従業員を解雇したんですね。それまで十数年働き詰めだったので、これからのことをあまり考えられず、とりあえず職業訓練校に通うことにしました。そこで出会ったのが、職歴を積んだ、たくさんの優秀な女性たちです。経済的・地域的にベビーシッターを利用することは難しく、かといって回りにも頼れる人も見当たらず、妊娠・出産がきっかけで仕事を続けられなくなった。そんな大勢の女性を見ていると、これは社会的な大損失だと考えるようになりました。

──それですぐに、起業へと動いたんですか?

甲田:いいえ。まずは自分の考えをブログで発信しました。子どもを安心して預けられるところが見つからず、困っている女性がいる一方で、時間的な余裕があり子育てが大好きで、社会的にも関わりを持ち収入を得たいと考えている女性がいる。支援して欲しい人と支援できる人が出会える場所があれば、双方のやりたいことが実現し、経済的なプラスアルファも得られると書いたんです。

──その記事に大変な反響があったんですね?

甲田:すごかったですね。2009年4月から職業訓練校に通いだして、ブログで発信したのは7月頃でしたが、1ヶ月で200位のコメントがつき、結局、コメント数は3か月で約800に達しました。炎上したのかと思ったほど(笑)。この反響を受けて、共感する人を集める旗振り役になろうと思ったのが、AsMamaを立ち上げようと思ったきっかけです。

──最初は何から着手しましたか?

甲田:慎重派なので、まずは友だちを呼んで座談会を開いたり、行政にヒアリングをしたり、ブログのスレッドの中で「情報交換をしませんか」と呼びかけてフィールドリサーチを実施しました。調べれば調べるほど、事態の深刻さが見えてきたんです。女性が働くことで男性の長時間労働の抑止にもなるし、シニアの社会参画も促進できる。世の中の根本的課題の原点が、子育てを母親が抱え込まければならない現状にあると痛感して、2009年11月にAsMamaを設立しました。

──組織を立ち上げてすぐに「子育てシェア」は始まったのでしょうか?

甲田:私が目指したのは、AsMamaをガスや電気、水道のようなプラットフォームにすること。地域の中で支援したい人支援されたい人が出会える場所を作るのが先だと考え、東京、横浜、大阪、名古屋4箇所で、互いの顔が見えるイベントを100回ほど開きました。

100回ほどやっても、すぐに「子育てシェア」には至りませんでした。みなコンセプトには共感してくれるものの、お互い頼り頼られるという関係を作ることができず、この時点で事業性はゼロ。最初はまったくのボランティアです。企業から人数をもっと多く集めればイベントを協賛すると言われて、大規模なイベントも開きましたが、今度は参加した人たちからすると頼れる人どころか、知り合い関係にさえならない。小規模でもダメ、大規模でもダメ。1年目は本当に厳しくて、AsMaMa創業当初のメンバー13人のうち11人が辞めてしまいました。

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