AsMamaホームページ

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■顔見知りだけとつながる仕組みを作った

──厳しい状況を打開する突破口は何だったのでしょう?

甲田:とにかくママたちの生の声を聞こうと町にリサーチに出かけて、結果1000人の声を聞きました。その過程で、子どもの送迎や託児を知らない人に頼むのはいや、頼まれるのもいやという、リアルな声と接することができたんです。

──顔見知りだったら預けやすいし、預かりやすいということですね?

甲田:そうです。子どもを預けるのにわざわざ電車に乗っていくのはいや、無料サービスだと気兼ねして2回目がお願いしづらい。自分が払える範囲のリーズナブルな対価を払える方がいい、という切実な声が本当に多かった。次第に、「子育てシェア」のサービスの形がまとまり、2013年4月に顔見知りとしかつながらない仕組みを作りました。

──AsMamaの会社としての収益はどう作っていったんですか?

甲田:2011年からは、パートナー企業と組んで、企業の信用力を借りる形で地域交流会を開くようになりました。1,000人ぐらい集まるといろいろな話が出てきます。ママたちの興味の対象は、衣食住プラス健康と教育。これが鉄板の五大関心事です。戸建てがいいのかマンションがいいのか、ローンは変動にすべきか固定がいいのか。賃貸か分譲か。みな、的確な情報を得られずに困っていました。

そのときに思ったのが、企業は宣伝広告費をかけて情報を知りたいという人に投げているのに届いていないということ。私は前職が広報だったので、企業がママたちに対面でアプローチすれば企業にとってもwinだし、ママにとってもwinだと考えました。企業と手を組みながら、地域の人が出会う交流の場を作り、企業の広報やマーケティング、顧客化をお手伝いし、企業の事業価値向上につなげています。

■ユーザー目線で謝礼の金額を設定

──「子育てシェア」で利用者が支援者に支払う謝礼は1時間500円〜700円。100円でもなければ1,000円でもない。この設定は絶妙です。なぜ、この金額になったのですか?

甲田:完全にユーザー目線での設定です。友人や知り合いに子どもの面倒をお願いしたことがあるママ達に「謝礼についてどうしていますか?」と聞くと、少しの時間、子どもをみてもらう時はケーキ1個、丸一日ならホールのケーキといった具合に、モノのやりとりが多いんですね。

──謝礼は金銭ではなく、モノなんですね?

甲田:ええ。ただ、モノを謝礼にすると、煩わしい問題が発生します。相手はチョコを食べないかもしれないとか、よそのママが高級なチョコを謝礼にしたという話を聞くと、気恥ずかしくて2度目はもう頼めないといったケースも少なくありません。預かる方も、実はモノをもらうよりは、現金の方がありがたいと考えている。じゃあ、もらってうれしい対価っていくらだろうと探っていくと、子どもを短時間だけ預かってもらうときの謝礼は図書カード1枚が目安になっている。そこから、1時間500円〜700円に設定しました。

──この料金設定で何か変わりましたか?

甲田:お子さんを預ける方も預かる方も楽になった、妙に気を遣わずに利用できるようになったと思います。500円〜700円という設定は、ベビーシッターや保育のプロにとってはとんでもなく低い金額ですが、「子育てシェア」は地域共助。友人や知人が困っているときにお子さんを預かったとしても、そんなに高い対価を取る気にはなれませんよね。その感覚での設定なんです。

(後編へつづく)

<プロフィール>
甲田恵子(こうだ・けいこ)
1975年大阪生まれ。米国留学を経て、1998年3月に関西外国語大学英米語学科卒。同年4月、環境事業団(現 独立行政法人環境再生保全機構)に入社し、役員秘書及び国際協力室を併任部。2000年12月にニフティに入社し、海外事業立ち上げや上場・IRを担当。同社在籍中の2005年に長女を出産。2007年にベンチャー投資会社に転職し、広報・IR室長に就任。2009年に退社し、同年11月にAsMamaを設立。著書に『ワンコインの子育てシェアが社会を変える!』『子育ては頼っていいんです~共育て共育ち白書』がある。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン編集部
文/三田村蕗子