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蒸し暑い季節は、ついついオフィスの冷房温度を下げがちになってしまいますが、長時間冷房のきいた室内にいると、体がだるくなったり、頭痛がしたり、お腹の調子が悪くなったり……と、さまざまなトラブルが起こりがちです。
たかが冷房と侮ると、意外な落とし穴が……!?これからの季節、気になる「冷房病」についてチェックしておきましょう。

■「冷房病」って何?

夏によく耳にする、冷房病の正体とは、ズバリ「自律神経が乱れる病気」のこと。 原因は、冷房が強すぎる環境にあります。
温度の感じ方には個人差があり、自分の感覚だけでオフィスの冷房を弱めたり、強めたりするわけにはいきません。とくにこの体感温度には、男女による差も大きく、一般的に男性は暑がりなのに対して、女性は寒がり、と言われることからも、公共の場では個人的な感覚で温度調節はしにくいものです。

この体感温度の違いにより、自分では温度調節しにくい環境かつ、その場所が寒いと感じ、その上長時間そこにいなくてはならない、といった状況が冷房病を引き起こす大きな原因と言えそうです。では、そもそもなぜ、体感温度は人それぞれ、あるいは男女で異なるのでしょうか。

■体感温度と「筋肉」の関係

人には、常に同じくらいの体温を維持しようとする機能が備わっています。
例えば、寒いと体が勝手にふるえる「シバリング」という生理現象がありますが、それは寒すぎる環境下では、自律神経の働きで筋肉を動かして(ふるえさせて)、なんとか体温を上げようとしている証です。
また運動すると筋肉を動かすことで熱が作られ、体温が上昇します。しかし体温が上昇しても、汗をかくことで体の中に発生した熱が体外へ放出され、体温を下げることができます。
以上のことから、体温調節(体感温度)には筋肉が関係していることがわかるかと思います。一説には体温調節のうち、筋肉が関係する熱産生(※)の占める割合は6割ほどとも言われています。
そのため、一般的に男性よりも筋肉量が少ない女性は、男性よりも冷えを感じやすくなるのです。また、シバリング時も筋肉量が少ないために、熱を産生しにくいとも言われています。

※熱産生……物質を代謝して、熱を放出すること。

■体感温度と「皮下脂肪」の関係

また、女性が冷えやすいのは皮下脂肪によるもの、と考えることもできます。通常、皮下脂肪とは体の内部(つまり大事な内臓の働き)を冷えないようにする、いわば断熱材のような働きをしています。
しかし、一度冷えてしまうと、あたたまるまでに時間がかかってしまうのです。それは、皮下脂肪には血管が少ないため。このことから、一説には男女の体感温度の違いは8度もあると言われています。

■冷房病の気になる症状

体温調節を行っているのは自律神経ですが、どんなときでも体温を上げたり、下げたりできるわけではなく、調節できるのは、せいぜい5℃以内です。
真夏の暑い外の環境から、涼しい部屋の中に入ると、とても気持ちいいものですが、5℃以上もの温度差を何度も繰り返してしまったり、寒い部屋の中に何時間もいたりすると本来働くはずの自律神経の働きが乱れてしまうのです。

自律神経の働きが乱れることで、

  • だるさ(倦怠感)
  • 頭痛
  • 食欲低下
  • 下痢や腹痛などの消化器症状
  • 生理不順
  • 不眠
  • 寝つきがわるい

……などの症状を引き起こします。

■冷房病の予防法

冷房病を予防するためのポイントを「自分で気をつけられること」と「みんなで気をつけること」に分けて考えてみましょう。

<自分で気をつけられること>
1. 簡単に脱ぎ着できるものを用意する
 →カーディガン、ひざ掛け、靴下などオフィスに常備しておくと良いでしょう。
2. ストレッチをする
 →筋肉を動かし、血行をよくすることで体温が上昇します。オフィスワークの合間に、軽いストレッチを取り入れてみるようにしましょう。
3. 飲み物に注意する
 →暑いとつい、冷たい飲み物が飲みたくなりますが、体を芯から冷やしてしまうため、意識的に温かい飲み物を飲むようにしましょう。
4. 栄養バランスのいい食事をとる
 →夏はただでさえ食欲が落ちがちです。消化が良く、また温かい食べ物を選んで食べるようにしましょう。
5. 湯船につかる
 →シャワーだけで済ませがちですが、湯船につかることで、収縮した血管が広がり、体が芯から温まります。
6. 適度な運動をする
 →適度な運動を定期的にし、汗をかくことで、体温調節機能を正常に保つようにしましょう。

<みんなで気をつけること>
冷房の設定温度と外の気温との差を5℃以内になるようにしましょう(25~28℃程度)

■医師からのアドバイス

自分自身で気をつけることで、かなりの確率で冷房病を予防できます。しかも、そのほとんどが特別なことではなく、簡単に取り入れることができるちょっとした工夫ばかり。規則正しい生活の中に、少しの工夫をプラスして、冷房病に負けず、夏を元気に乗り切りましょう!

<クレジット>
文責/Doctors Me