15081101_1いきなり個人的な話で恐縮ですが、ビジネス書のベスト10を選べといわれたら、この本が間違いなく入ります。テレビ東京の名物プロデューサー、“伊藤P”こと伊藤隆行さんが2011年に上梓した『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』です。

「モヤモヤさまぁ~ず2」「そうだ旅(どっか)に行こう。」など、テレ東を代表するバラエティ番組のプロデューサーとして知られる伊藤さん。本書では、その発想の源が解き明かされています。

しかし、そこで説かれている仕事術は、クリエイターやプロデューサーといった人にだけ通じるものではありません。むしろ、普通のビジネスパーソンこそが参考になる内容であり、だからこそ、誰にでも勧めることができるビジネス書になり得ているのです。

まず、伊藤さんは自分を「凡人」だと評します。しかし99%は凡人であっても、たった1%は天才な部分がある。これは自分だけが特別なわけではなく、あらゆる人が「他人とは違う」という意味で1%は天才なのだから、そこを信じて番組を作っているのだといいます。

99%は凡人でも、誰もが1%は天才――。これはもともと伊藤さんが駆け出しの頃、大先輩のYさんから聞いた言葉でした。

「無理しなくてもいい。企画書にしてもカッコつけなくていいんだ。おまえなんて誰も求めてねえんだよ。だって面白くないんだし。

だけどな、結局、99%は凡人でも1%は天才じゃないといけない。と言うのは、テレビ番組を作ってお金をいただいているわけなんだから、『自分はこれができるんだ』という情熱とか取り柄とか、それを活かして仕事をしないと、人様に失礼だろ?

おまえに多くは求めない。でもおまえと俺は違う人間なんだから、おまえの1%はどこか天才なんだよ。それは信じきらないとダメだぞ」

伊藤さんはYさんのこの言葉を、「テレビマン限定ではなくて、何かの職業でメシを食っている」人たち全員に共通することだと振り返ります。

では、私たちがその1%を活かすためには、どうすればいいのか。伊藤さんの答えはシンプルです。「明確に『こういう番組をしたい。だからつきあってください』という誠実な気持ち」を伝えること。その1%がウソをついていなければ、それがどんな仕事であれ、人を巻き込んで、新しいことを実現していけるといいます。

その「ウソをついていない1%」は情熱であり、こだわりと言い換えられるでしょう。そして伊藤さんは、その情熱を相手に伝えるためには、「誠実」であることが何より大切だと説いているのです。

こうした伊藤さんの姿勢は、本書で何度も繰り返されています。例えば、ラジオ番組でプロデューサーならではの説得力の鍛え方を聞かれた際には、

「結局、正直さに勝る説得力はないんです」

と語り、テレビの現場で一番大切なことを聞かれれば、

「それは天才的な発想や、超人的な体力ではありません。人に気を遣えることです」

と答えます。

誰もが尊敬する100%の天才であれば、自然と周囲がついて来るかもしれません。しかし、ほとんどの人は「99%は凡人」である以上、他人の協力がなければ何も成し遂げることはできません。だから自分の仕事に対する情熱を「誠実」に伝え、協力に「感謝」することを忘れてはならないのです。

「でも、その1%の天才(才能)すらない」と嘆く人には、伊藤さんはこう語りかけます。

「絶対、何かありますよ。接客業ならお客さんに『ありがとう』と言われる回数だけは負けないとか、調理人だったら大根の皮をむくスピードが異常に早いとか、家庭で素晴らしくキレイに掃除するとか。プライドを持てる分野が必ずあるはずなんです。

周りからなんと言われても、もしかしたらここは天才じゃないか、というものを、残りの99%を逆転させるぐらい、恥ずかしげもなくバカなくらい思った方がいい。だってどこかで晴天の霹靂のようなチャンスが訪れた時、発動できる1%を持ってないと頭角を現せないでしょう。信じてないかぎり、何も叶いません」

そして、最後の「おわりに」には、意外な人物からのコメントも。自分の中の1%の天才を信じ、他人に誠実に向き合い、数々の困難な仕事を成功させてきた男は、周りからどう評されるのか。その内容は、ぜひ本書を手にとって確かめてください。ビジネス書ではあまりない、グッとくる感動が待っています。

『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』(集英社新書)

『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』(集英社新書)

<クレジット>
文/小山田裕哉

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