当然のことですが、そこで企業の印象を良いように装飾しても、実態が伴っていなければ「共通の友人」などからバレてしまいます。

「結局のところ、つながり採用で問われるのは企業の『素』の姿なんです。これは企業だけでなく、求職者も同様です。

一部の学生や社会人にはソーシャルメディアで自分の姿を『盛る』(過剰に良く見えるよう演出する)傾向がありますが、確かにそういったセルフプロデュースはネット上で注目を集めることはできる。ネットで優秀な人材を探している採用担当者の目にも留まるかもしれない。

しかし、ソーシャルメディアでつながることは『つながり採用』の入り口でしかありません。そこから互いにコミュニケーションを重ねていくことで、本当に企業がほしい人材か、求職者が働きたいと思える企業なのか、見極めていくことが『つながり採用』の本質なのです。だから印象だけを良くしても、そこに実力が伴っていなければ採用の過程で見抜かれてしまうでしょう」

■「ネットでの自己PRが苦手な人」にも恩恵がある?

こうした「つながり採用」の特徴は、ネットでの自己PRが苦手の人にもプラスに作用するのではないかと宮崎さんは言います。

「ソーシャルメディアを通じたダイレクトリクルーティングといってしまうと、いかにも仕事ができて、ネットでのPRもうまい人に恩恵がありそうに聞こえます。でも私は『仕事はできるけど自己PRは苦手な人』もすくい上げる可能性が、『つながり採用』にはあると思っています」

ネットでの自己PRがうまい人は面接もうまい。だから「つながり採用」に限らず、競争相手の多いナビサイトからのエントリーでも勝ち抜いていける確率は高そうです。

「しかし『つながり採用』はその人の『素』の姿を問うので、日々、少しずつでも仕事の内容や、学生ならば学生生活の成果をネット上にアップしていけば、その伝え方が上手でなくとも、採用担当者の目に留まることがあり得ます。

しかも『つながり採用』はエントリーシートや面接の“一発勝負”ではありません。採用担当者も求職者とのコミュニケーションに時間をかけ、その人の本質を知ろうとするので、人間性や仕事の実力で採用の可否を判断してもらえるチャンスが生まれるのです」

もちろん、世の中には自分の業務について口外できない仕事もあります。しかも、そういう仕事は金融関係やコンサル、研究職など、平均年収が高い業界に多い傾向があるものです。こうした業界の人材にリーチできることをウリにしたダイレクトリクルーティングのサービスもあります。

■社員の「外の世界とのつながり」を活用すべし

このように「つながり採用」はさまざまな業界・業種に広がっており、ソーシャルメディアを利用する人がますます増えている以上、この流れは加速していくと感じられます。

企業も求職者も「素」の姿で採用活動に向き合うことが求められる時代。最後に宮崎さんに、そんな時代において、企業は自社の良いところを求職者に向け、どうPRすべきなのか聞いてみました。

「ひとつ言えるのは、『素』の姿で企業が評価される今は、社員ひとりひとりのソーシャルアカウントこそがもっとも効率の良い広報ツールであるということです。

社員は自社の社員とだけつながっているわけではありません。優秀な社員は、他社の優秀な人材ともつながっている。そんな社員が自社の情報をソーシャルメディアを通じて発信すれば、他社の優秀な人材に届き、それまで転職を考えていなかった人の潜在的なニーズを掘り起こすこともできます。

つながり採用が優秀な人材を一本釣りする方法として注目されるなか、ネットを通じたダイレクトリクルーティングのノウハウを知っていることは、ますます企業にとって重要になるでしょう。だから企業が社員のネット発言を禁止することは、デメリットが大きくなってくると思います。新しいサービスに敏感に反応して試行錯誤を繰り返していくことでしか、時代に乗り遅れないすべはないのです」

『ムダ0採用戦略 21世紀のつながり採用』(いろは出版)

『ムダ0採用戦略 21世紀のつながり採用』(いろは出版)

<プロフィール>
宮崎智之(みやざき・ともゆき)
1982年3月、東京都出身。明治大学文学部卒業後、大学受験予備校、地域紙記者、編集プロダクションを経てフリーライターに。若者、社会問題、就職、採用活動、カルチャーなど幅広い分野で執筆活動を展開している。『未来をつくる権利―社会問題を読み解く6つの講義』(荻上チキ著、NHKブックス)、『NEXT WORLD―未来を生きるためのハンドブック』(NHKスペシャル「NEXT WORLD」制作班著、NHK出版)、『あなたのプレゼンに「まくら」はあるか? 落語に学ぶ仕事のヒント』(立川志の春著、星海社新書)など、書籍の編集協力も多い。

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉

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