15090101_1ここ数年、65歳までの定年延長とセットで役職定年制度を導入する企業が増えているようです。年功序列制度の形骸化が進むなか、年上の部下を持つ管理職が増加していくことが予想されます。また、働く女性の増加やグローバル化などの要因もあり、日本の職場環境は大きく変化しています。年齢、性別、国籍が入り混じる環境で、部下とコミュニケーションがうまくとれない、管理職としての振る舞い方がわからないと、悩んでいる方は少なくないのではないでしょうか。

そんな人たちに向けて、コミュニケーション心理のプロである五百田達成さんに、「これからの職場の人間関係のコツ」というテーマでお話をうかがいました。まずひとつ目の切り口は「年下上司と年上部下」。思わず「確かに!」と頷いてしまう具体例を交えつつ、わかりやすく教えていただきました。

■「年上部下」に苦手意識を感じるのは男性の特性

──管理職に就いたとき、部下に年上がいると「やりづらい」と感じる人が多いと思いますが、そもそもどうしてそのような苦手意識を持ってしまうのでしょうか。

五百田: 「年上の部下」にやりづらさを感じたりしているのは男性が多いと思うんですよ。というのも、男性は年齢というものにすごく縛られているからです。年齢がひとつでも上だったら、無条件に敬語を使うし、ビールも注ぐし……という風になります。逆に1日でも遅く生まれた相手だと、ちょっと下に見てしまう。極端な例かもしれませんが、それは、男性が昔から野球やサッカーといった集団スポーツや部活文化になじんできたために、人間関係を先輩後輩という枠でしか捉えられないからだと考えています。

例えば、結婚式のテーブルで一緒になってしまった初対面の男性同士のぎこちなさを見ると、よくわかります。年齢関係と上下関係がわからないと、話せないんですよ。ビールを注ぎながら、探り探り「お仕事は?」なんて話をする。でもわからない。「年次は上? でも年齢はどうなんだろう?」なんてお互い頭の中で考える。とうとうしびれを切らした方が「ちなみに、何年生まれですか?」と切り出して、「37歳です」、「じゃあ、ひとつ上ですね」と確認が取れて初めて、ようやく和やかに会話が始まる(笑)。それくらい男の人たちは年齢に縛られているので、「年上の部下」を相手にすることはとっても辛いと思います。

──今まで慣れ親しんできた枠にはまらない関係性だからですね。女性だとそこまで気にならないのでしょうか。

五百田:男性に比べて女性は、それほど上下関係にとらわれないんですよ。横の関係性を重視する傾向が強くて、年齢をあまり気にしない。年齢が上だと確認した相手でも、タメ口で話すし、初対面でもグイグイなじむ、というのは職場でよくある光景ですよね。

だから、職場の組織を円滑にさせる、チームの仲を良くさせるというところを目標にするのであれば、女性上司と年上の男性部下の方がうまくいくかもしれない。

──なるほど。現状では日本の管理職は男性の割合が高いので、年上部下を持って悩んでいる人もほとんどが男性ですよね。

五百田:そうですね。管理職という上の立場から、指導しなくてはいけない、命令しなくてはいけない相手が年上というのは、非常にやりにくいことだと思います。さらに言うと、多くの男性がずっと「下っ端芸」でやってきているわけじゃないですか。上司や先輩から言われた仕事を最前線でやってきた。それが管理職という立場になると、芸風の転換を迫られるんです。自分の成果も上げなければならないし、人に指導しなくちゃいけないし……これだけであたふたしている30代、40代が多いのに、さらに「君の部下は年上だから」といわれたら、パニック状態になってしまう人も多いでしょう。

■ポイントは「取引先の人」と思って接すること

──しかし、年功序列制度が崩れていったら、年上の部下を持つ人は増えていくと思います。そうなった場合に、うまく関係性を築いていくためには、どのような基本スタンスをとればいいのでしょう?

五百田:部活的な発想から転換しなくてはいけないですね。「お前、筋トレやっとけ」みたいに、ぞんざいに命令するだけがキャプテンではないので。本当のマネジメント、組織を動かすということを考えていかなければならないと思います。その上で、具体的なコミュニケーションのコツとしては、「取引先の人」くらいの感覚で接するのがいいんじゃないでしょうか。

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