新川てるえさん(作家・コメンテーター・家族問題カウンセラー、NPO法人M-STEP理事長、NPO法人Wink理事)

新川てるえさん(作家・コメンテーター・家族問題カウンセラー、NPO法人M-STEP理事長、NPO法人Wink理事)

Powered by ライフネット生命保険

2002年に、子どもの健全育成と家庭問題に悩んでいる女性の自立支援を図るためNPO法人Winkを設立した新川てるえさん。10年が経過した後、理事長の座を長女の新川明日菜さんにバトンタッチし、ご自身は新たにNPO法人M-STEPを設立されました。

どちらかに子どもがいて再婚する「ツレ婚」家庭を対象に、有益な情報や教育事業を提供したいとM-STEPの活動を精力的に繰り広げている新川さんに、「ツレ婚」家族ならではの問題点やこれからの目標についてうかがいました。
(インタビュー前編はこちら)

■10年計画で目標を達成する

──NPO法人の活動の中で、新川さんはカウンセリングに力を入れているとお聞きしました。

新川:カウンセリングは、NPO法人Winkを立ち上げてまもなく取り入れました。ウィリアム・グラッサー博士の選択理論を基本にしています。それまでは我流でやっていましたが、あるとき、相談に来られたシングルマザーの方から「新川さんにはできるけど、私にはできない」と言われて頭を抱えてしまったことがあったんです。その人の悩みを整理して、どういう選択肢があるのかを提示しなければ本当の意味での解決にはならない。そう感じて、本格的にカウンセリングを学び始めました。

──カウンセリングの効果は大きいですか?

新川:悩みを客観的に整理できる力はもちろんですが、自分自身の生き方も前向きになりました。カウンセリングのポジティブなパワーに刺激されるんですね。

──スタートから10年後に、長女の明日菜さんにNPO法人Winkの理事長を継承された経緯について教えてください。

新川:立ち上げ時から私は10年計画を掲げていました。ゴールを掲げ、目指す地点を明確にしないと一生懸命がんばれません。会社経営と同じですね。NPOの活動を継続していくのは簡単なことではありません。目標を決めて活動するのが一番いい。目標がないと途中でやめたくなりますから。幸い、10年でシングルマザーという言葉もある程度普及し、ひとり親家庭の問題点は広く知られるようになってきました。娘も思春期の頃は「自分の離婚を商売にして」と私によく言っていましたが(笑)、やがて自分から「やりたい」と言ってくれたので、継承することに決めたんです。彼女は離婚再婚家庭の子どもの支援を手掛けています。

──組織とお嬢様の両方が自立された、ということですね。新しく立ち上げたM-STEPでも同じように10年計画を立てているんですか?

新川:もちろんです。「ツレ婚」家庭、つまり子連れ再婚家庭の認知度を上げて、10年後には、「うちはツレ婚なんです」と普通に言えるようにしたいですね。ちょうどいまは、「母子家庭」という言葉しかなかった時代とよく似ています。当時はひとり親であることにネガティブな印象がありました。現在の子連れ再婚家庭がまさにそう。「うちは再婚なんです」と公に言えない方がまだ多く、隠している方が大半です。10年後には子連れ再婚なんだと誰もが堂々と言えるように持って行き、M-STEPは60才で引退する計画です。後は、いっしょにやっている人に任せたいと思います。

■子連れ再婚家庭の問題点を知ってほしい

──M-STEPの活動内容について教えてください。

新川:毎年3月31日を連れ子家族デーと定めてお祝いし、認知を図っているのと同時に、ツレ婚家庭の実態調査にも力を入れています。中央労金社会貢献基金助成金を得て、2014年と2015年にはステップファミリーの調査を実施し、支援者向け養成講座のテキストを作成しました。支援者を対象に講座を開いたこともあります。支援者というのは、相談窓口に立つ人や学校の先生方、子どもたちに関わる教育関係者ですね。ツレ婚家庭にいったいどんな問題があるのかと疑問に思っている方がまだ多いので、問題点を知り、必要な支援に関する認識をもってもらうことを現在の目標に掲げています。

──子連れ再婚家庭の問題点とはどのようなものなのでしょう?

新川:日本では再婚すると「よかったね、幸福になれて」と言われ、ちょっとでも愚痴ろうとすると、「それぐらい覚悟して再婚したんでしょう」と返されてしまいます。でも、実は再婚してからが大変なんですね。他人の子どもの親になるためにがんばっているのに、そこを世の中はなかなか認めてくれません。里親になる人は「えらいね」と言われるのに、継母、継父にはそうした言葉はかけられない。だからストレスを抱えている方がとても多い。相談窓口で2次被害を受けるケースも少なくありません。

──「2次被害」とは具体的にはどのようなものですか?

新川:「継子を愛せない」と勇気を出して窓口で相談しても、「抱きしめてあげればいいんですよ」と片付けられてしまうんです。抱きしめられないことに悩んでいるのに、そのアドバイスでは傷が深くなるだけ。他の相談窓口で、「スキンシップをとって継子を愛してください」と言われたという方に、「自分の子どもではないのだから、同じように愛せなくてむしろ当たり前ですよ」と私がお話すると、バッーと泣き出される方も多いですね。

■ツレ婚する当事者の意識も変えたい

15110602_2

──「2次被害」を防ぐためにも、「ツレ婚」の悩みを理解した人のカウンセリングが必要なんですね。

新川:そうなんです。ただ、当事者の認識も変えていく必要があると考えています。というのも、1度結婚に失敗しているために、「次こそはうまくやる」という根拠のない自信が強く、いざ再婚してから「あれ、こんなはずじゃなかった」と気づく方が多いんですね。母子家庭から再婚すると経済的に豊かになると思い込んで、再婚すると仕事を手放して専業主婦になる人も目立ちます。でも、再婚すると養育費や児童扶養手当がなくなってしまうため、かえって貧乏になるケースがたくさんあるんですよ。

──子連れ再婚だからこそ発生する問題が多いんですね。

新川:ツレ婚をすると、子どもだけではなく、再婚した相手の元妻側のおじいちゃんやおばあちゃんもいっぺんについてくる(笑)。1対1の結婚とは違う点がたくさんあります。そこに気づかず再婚すると、後でいろいろな困難に直面して途方に暮れる。だから、シングルマザーにはそうしたことをちゃんと学んでから恋愛してほしいと思います。経産婦と初産とでは出産に対する受け止め方や乗り越え方が違うように、再婚も事前に学ぶのと学ばないのとでは大きな違いがありますから。

──再婚の方が、お互いの認識合わせを細かくやる必要がありそうですね。

新川:ええ。アメリカでは再婚家庭のためのプログラムが用意されていて、「しつけはどうするか」などさまざまなテーマで話し合うようになっています。日本は、言葉にせずに、「言わなくてもわかっているだろう」と考えがちですが、話し合うことはとても大事ですね。

──ツレ婚に関する人々の認識を変えるには、何が効果的だと思われますか?

新川:シングルマザーが世の中に浸透していったきっかけは、表に出る当事者がたくさん出てきたことでした。芸能人だったり、シングルマザーが登場するドラマが増えたのも契機になった。最近、タレントの山口もえさんがツレ婚をされたので、私も取材される機会が増えましたが、そうした方が多くなれば、シングルマザー同様、意識が変わっていくと思います。ツレ婚はそれなりに問題があって大変だけど、よくあることだからと明るく言えるようになる。活動を通して、そんな社会を目指したいですね。

──新川さんは10代の頃にアイドルグループの一員として芸能活動をされています。その経験が役立っている面はありますか?

新川:ものおじせずに、人前で話すことができるという点では役に立っていると思います。あと、人があまり口に出したがらないことを平気で話すとも言われますね。例えば、「いま更年期障害で、ホットフラッシュが始まって」と私が口火を切ると、みな「私も」「私も」と言い始めるとか(笑)。そう考えると、私の性格やこれまでの道のりすべてが現在の活動に集約されているのかもしれません。

<プロフィール>
新川てるえ(しんかわ・てるえ)
1964年 東京都葛飾区生まれ、千葉県柏市育ち。10代でアイドルグループの一員として芸能界にデビュー。その後、2度の結婚、離婚経験を生かして、97年12月にシングルマザーのための情報サイト「母子家庭共和国」を開設。2002年に、子どもの健全育成と家庭問題に悩んでいる女性の自立支援のためのNPO法人Winkを設立。理事長を10年間務めた後、長女に理事長の座を譲り、2011年4月にひとり親家庭と子連れ恋愛と再婚(子連れ再婚家族・ステップファミリー)を応援するNPO法人M-STEPを設立。ツレ婚家庭が抱える問題を社会が理解し、必要な支援のある暮らしやすい社会の実現を目指して、作家、講師、TV司会など多方面の活動を繰り広げている。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン編集部
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子

Powered by ライフネット生命保険

人生と仕事とお金について考えるメディアライフネットジャーナル オンライン 公式Facebook