為末大さん

為末大さん

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LGBTなどの性的マイノリティへの支援を表明することを「ストレート・アライ(Straight ally)」、もしくは「アライ」と呼びます。今、この「アライ」が増えています。

※英語のally(同盟、支援)が語源で、主にLGBTではない人がLGBT当事者を理解し支援する人のことをさします。

元プロ陸上選手の為末大さんも、そんな「アライ」の1人です。参加者がカラフルなコスチュームを身につけて走ることで、性の多様性を表現するランニングイベント「カラフルラン東京」にもゲストとして参加するなど、LGBTへの支援を表明しています。

ライフネット生命も2015年11月4日から、「同性のパートナー」でも死亡保険金を受け取れるように、受取人の指定範囲を拡大しました(詳しくはこちら)。

そして、渋谷区で「同性パートナーシップ証明書」の交付が始まるなど、LGBTの社会的認知は高まりつつあります。性の多様性を認める動きが盛り上がっているなかで、スポーツにおけるLGBTの問題や、オリンピックに向けて日本はどんなことに取り組んでいくべきなのか? メディアで積極的に発言を行っている為末さんに、お話をうかがいました。

■ソーシャルメディアの普及がLGBT支援を後押し

――為末さんが「アライ」になったきっかけはあったのでしょうか?

為末:特に意識して応援しているわけではなく、気がついたらそうなっていたというのが正しいですね。僕がアスリートとして海外で活動をしていた頃には、すでにLGBT支援が盛り上がっていましたから、これは世の中の流れとして当然のことだと思っていました。

当時はLGBT支援に対して日本と世界の意識のズレがものすごくあったんです。でも日本が国際化していくなかで、いずれ「日本ってまだそんなことで議論をしているの?」という意見が出てくるだろうとは思っていました。
だから応援するのはそうなのですが、「世の中はLGBTを容認する流れになっていくに決まっているから、早くその流れに乗っておいたほうがいいよ」というメッセージも伝えてきたつもりです。

――ここ最近支援の動きが盛り上がってきている背景には、何があると感じていますか?

為末:ソーシャルメディアの影響が大きいと思っています。ソーシャルメディアの普及によって、ひとつのムーブメントが世界に広まりやすくなりました。例えば、2年前の世界陸上はロシアで行われましたが、その直前、ロシア国内では「同性愛宣伝禁止法」が可決されました。それでロシア人選手が、「大会に参加する海外の選手も、その法律に従うべきだ」と発言したんです。すると、ソーシャルメディアを通じて世界から非難が殺到しました。

――「ソチ五輪をボイコットしよう」という意見まで噴出しましたね。

為末:ええ。しかもその世界的な炎上の様子を、やはりソーシャルメディアを通じて世界中が見ていたわけです。これまでLGBTについてあまり深く考えてこなかった国々では、「こういうことをすると国際的にアウトなのか」と初めて気がついた人がたくさんいたと思うんです。そういうことが積み重なって、今になって日本でもLGBT支援が注目されるようになってきたのだと思います。

■東京五輪が未来に遺すべきものは建物でもメダルでもない

――為末さんから見て、LGBT支援において、これから日本が取り組むべきことは、なんだと思いますか?

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為末:制度だけでなく、意識の改革が必要ですよね。偏見の多くは、意識的なものではなく、無意識的なものです。だから、これからは無意識にどうやってアプローチするかということが問われていくと思っています。表面上は政治的に正しく振る舞う人は増えても、意識の深い層の偏見を取り除いていかなければ、解決したとは言えないでしょう。時間はかかりますが、取り組む価値はあります。

2020年の東京五輪をひとつの目安にするならば、僕はダイバーシティの分野で日本が世界の先頭を走っていたらすごくカッコいいと思うんです。後世の人々が振り返ったときに、「2020年の東京五輪が遺したレガシーで一番大きかったことは、建物でもメダルでもなく、マイノリティを包摂する社会システムを作り上げたことだよね」となったら、国際的にも、日本に住んでいる人たちにとっても、すごく誇れることですよね。

――オリンピックを良い意味で利用して、「東京はマイノリティに寛容な街です」と世界にアピールする機会にしようということですね。

為末:そうです。僕が意識しているのは、「社会の問題をどうやってスポーツで解決するか?」、そして、「社会の問題をどうやってオリンピック・パラリンピックで解決するか?」というポジションに立つということです。

もちろん五輪はめでたいことなんですが、2020年が終わってみたら、「あれ? 根本的な問題を先延ばしにしていただけだぞ」とはなってほしくない。

今の日本の問題って、例えばLGBTの問題にしろ、少子高齢化にしろ、本来はスポーツで解決できないことばかりなんです。でも五輪の開催に向かう勢いを利用すれば、真剣に問題に取り組むタイミングを前倒しにできるかもしれない。だから解決できるかどうかではなく、とりあえずコンセプトに掲げて、そこにみんな向かっていこうと宣言する。そういうことが必要なんです。

■性の多様性を認めると、スポーツの公平性が保てない?

――スポーツにおいてもLGBTの問題はありますね。スポーツは「競技の公平性」という点で、性の多様性を認めるのが難しい分野だと思うんです。例えば男性として生まれたけど、性自認は女性という人は、男性・女性のどちらで出場すべきなのか。今まで、スポーツ界ではどのように議論されてきたでしょうか?

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