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ライフネット生命会長兼CEO 出口治明が、「産経デジタル」で連載した「ライフネット生命・出口会長が考える『明るい終活』」の中から、“人生と仕事とお金について考える”コラムをご紹介します。


今、日本は世界に先駆けて高齢化社会に直面しています。これは誰でも理解していることです。ところが、それが一体どういう意味を持っているのか、ということを根本から考えようとしている人はそれほど多くありません。だから、メディアが「大変だ」「若者が損をする社会だ」などと騒ぎ立てたりします。

これから、「明るい終活」というテーマで、日ごろ、私が考えていることをお話しようと思います。そこでまず、年寄りは何のために生きているのか、ということを、こんなエピソードから考えてみたい。

黒海沿岸のグルジアで約180万年前の原人化石が発掘されたのですが、この原人、歯がすべて抜け落ちていた。しかも、歯をなくしてから数年は生きたことが分かった。

歯がなかったらご飯は食べられないはずです。それなのに生きていたのは、つまり、誰かが食べ物をすりつぶして食べさせていたということになります。
では何のために、歯が全部なくなった老人を生かしておいたのか。動物だったら歯をなくした瞬間にすぐ死んでしまいます。なぜなら食べられないから。われわれの先祖は、その自然の摂理に反して、歯を無くした人をケアしていた。それはなぜだろうか。

学者たちが議論しました。その結果、現在、最も正しいであろうと思われる説は、群れが生き残るのに役に立つからである、ということになっています。

「地鳴りがしたら異変が起こる」とか、年寄りはいろいろな経験を経てきています。食物をすりつぶして食べさせる手間をかけても、その方が、群れが生き残る可能性が高いと知っていたから、すりつぶして食べさせて、ケアをしていたのではないかと。それが多数説です。

われわれの先祖は、高齢者を助けていた。それは若者が生き残るためなのです。

結局、年寄りは何のために生きているのかといえば、次の世代を守るために、あるいは次の世代が生きやすくなるために生きているんだ、と。だいたいそういうふうに、今は考えられているのです。

ベストセラー『ゾウの時間ネズミの時間』を書かれた本川達雄さんの『生物学的文明論』という本にも、同様のことが書いてあります。年寄りは生殖ができない。動物はみな、次の遺伝子をコピーするために生きているわけですから、生殖ができなくなるとみな死んでしまう。でも、人間の年寄りは、生殖はできないけれど生きています。それは、若い世代が生きやすくするためにいろいろな知恵を授けるためなのです。年寄りは若者にいい世界を残すために生かされているんだよと、本川先生はおっしゃっている。

 津波で大勢の方が亡くなった東日本大震災。現地に入ったNPO(民間非営利団体)の方から興味深い話を聞きました。同じ標高、あるいは海からの距離であっても、助かったか、助からなかったかには、かなりの差があったそうです。助かった方の共通点は、避難訓練をやったことがあること。ここからは、そのNPOの方の仮説ですが、訓練を2年以内にやっていれば、体が覚えているのではないかと。体が覚えているので、何かあれば自然に動く。

つまり大事なのは経験です。結局、経験や歴史を通じてしか、未来への発想や予測は生まれてこない。

 人間はアホな動物なので、以前起こったことを思い出したり、比較したり、そういうことでしか状況を読み解いていけないのです。ということは、高齢者が含まれる群れは、若者だけの群れに比べて経験値が高い。そうすると生存の確率が高くなる。
これが生物学的にみた高齢者が生きる意味だと思います。要するに、高齢者は次の世代のために生かされているのです。

※産経デジタル「ライフネット生命・出口会長が考える「明るい終活」より

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