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ライフネット生命の「ライフネットジャーナル オンライン」とサイボウズの「サイボウズ式」とのコラボレーションにより、ライフネット生命とサイボウズで育児休暇(育児を理由とした有給取得も含む)を取得した男性社員4名による座談会が開催されました。

ともに育休取得を推進している企業であることから実現した当企画。育休取得のための事前準備から、長期間業務から離れる際の心情まで、ざっくばらんに話し合ってもらいました。

「すみません、育休前は『早く帰れて、楽でいいじゃん』って思ってました」(サイボウズ式)の記事と合わせてご覧ください。

■育休取得前に社内でしておくべきことは?

サイボウズ・華山:私の部署はダイレクトマーケティング部で、サイボウズのクラウドサービスを申し込んでいただいたお客さまに、導入までの支援をするコンシェルジュセンターの運営を担当しています。実は、ここの部署は社内で一番ママさんが多いんです。部長も女性ということもあり、社内の中でも特にワークライフバランスについて柔軟に相談できる環境ではあったと思います。

これまで3人の出産を経験してきて、1人目と2人目のときは育休を取らなかったんです。1人目は妻が里帰りして、私は仕事をやりまくる。2人目も同じ。でも、3人目となったときに、さすがにこれは自分も参加しないと無理だぞと。里帰りも大変だし、妻だけでは子どもの面倒を見切れないということで、3人目ができた時点で部長に相談をしました。

──出産予定の半年くらい前には育休に向けて段取りを始めていたわけですね。

華山:予定日が年末年始だったので、部署のキーマンには「その繁忙期に自分がいないかもしれない」と相談するところからですね。次は、自分がいなくても大丈夫な環境を整えておく。私に依存しているタスクや業務を整理し、うまくバックアップできる体制を作ってもらったりと、本当に助けられました。

サイボウズ・華山聖二さん。上の子が3歳、次の子が1歳、1番下の子が生まれたばかりの3児のパパ。育児休暇は3児目の出産時に5日間。

サイボウズ・華山聖二さん。上の子が3歳、次の子が1歳、1番下の子が生まれたばかりの3児のパパ。育児休暇は3児目の出産時に5日間。

ライフネット・肥田:質問を挟んでもいいですか? 僕の仕事はマーケティングなんですが、我々のような部署は極論、社内にどうにかバックアップ体制が整えば、なんとかなります。でも、営業みたいに得意先がいる部署の人は、どんなに準備しても予測がつかない事態が起こるじゃないですか。そこって、どうされているんですか?

サイボウズ・木地谷:
まさに私が営業なのですが、サイボウズの場合、営業がひとりで動くことがけっこう多いです。そうすると、おっしゃるように「バックアップをどうするんだ?」という問題が出てきます。でも実際に育休を取得した経験から言うと、最終的にはあまり問題にならなかった。

私は華山さんと違って、半年前から準備をしていたわけじゃないですが、出産予定日が2月だったので、年末には得意先にも、「2月に育休を取る予定です」と言っていました。連絡は取りづらくなりますが、緊急の場合は代理を立てますと伝えることで、みなさん理解してくれましたね。

華山:でも、そういう木地谷さんも、けっこう前から「子どもが生まれるので」という情報を得意先に伝えて、影響をできるだけ小さくしようとしていましたよね。
たしかに、育休取得には、影響をできるだけ小さくしようとする「段取り」が大事ですね。関係するメンバーに対しては、出産予定日が病院から示された時点で「○月かもしれない」、帝王切開となれば、さらに前倒しで「△月になるかもしれない」と未確定でも共有しておく。安定期に入って、確実な予定日がわかるようになり次第、具体的にその時期に起きそうな事態の予測から具体的に進めていく。

安定期は、実は心の中では安心はできなくて。いつでも出産できる時期に入ったということなので。例えば、業務の引継書など、引き継げるものは2か月前には社内で展開できるようにしていましたね。些細なことからでも布石を打っておけば、言われたほうも、いざというときに「聞いてないよ……」とならないようにできますからね。

肥田:すごくちゃんとしていますよね。僕の場合は育休中だからって24時間育児のことばかりするわけではなかったので、自宅から、ちょっとしたスキマ時間にはメールの返信をしたり、社内じゃないとできない対応は後輩にお願いしたり、という方向に切り替えちゃったんですよ。

もちろん、ライフネット生命は保険会社なので、個人情報を扱っているセクションの人は同じことはできないですが、自分の部署の環境を考えると、制限はあるが、そういうことができる、じゃあやってみようと。

ライフネット・肥田康宏。第一子が9月に生まれたばかり。育児休暇は1か月半取得。

ライフネット・肥田康宏。第一子が9月に生まれたばかり。育児休暇は1か月半取得。

──みなさんは、育休中にもお仕事されていました?

木地谷:
私もしていました。そんなに多くはないですが、1日数十分だけの日もあれば、1時間以上やる日もあったり。でも、メールの処理くらいでした。特にサイボウズはグループウェアの会社なので、自社製品のおかげで社内との情報共有で困ることはなかったです。自宅からでも、業務の状況はだいたい把握できましたね。

華山:サイボウズのお客さまは毎月、クラウドサービスの契約更新をします。数としては多くないのですが、時々更新を忘れてしまい、契約が切れてしまうお客さまがいる。そうするとサービスへのアクセスができなくなってしまうので、「このままでは業務が止まってしまう。なんとか助けてください。」という連絡が私のいる部署に来ます。

サービスは365日24時間運用しているので、いつそういう連絡が来るかわからない。でも、サイボウズでは在宅でも仕事ができる体制が整っていたので、自宅のノートPCから社内システムにアクセスをして、万が一のときはメンバーに連絡してもらうよう指示を出して対応ができる。幸い、私の育休中に連絡はなかったのですが、いつ起こってもいいように、ずっとスタンバイはしていました。

■育休取得を決めたときの家族の反応は?

──実際に育休を取得されたとき、家族の反応はいかがでした?

ライフネット・加納:1人目は6年前だったので、まだ男性の育休取得が世の中で話題になっていませんでした。だから、特に家族の会話に育休の話題も出ず、取得もしませんでした。でも、今は普通にニュースとかで目にしますよね。だから、2人目のときは取得する気満々で、妻にも早くから、「育休取るよ」って伝えていました。反応はすごく良かったですよ。自分が思った以上に喜んでくれました。「これで安心して産める」って。

ライフネット・加納龍二。この4月から小学生になる男の子と、生後3か月の男の子の2児を抱えるパパ。育休は2週間取得。

ライフネット・加納龍二。この4月から小学生になる男の子と、生後3か月の男の子の2児を抱えるパパ。育休は2週間取得。

肥田:ライフネット生命に入社する前は振替休日も消化しきれないくらいに働いていた時期があったんです。その頃は得意先に呼ばれたら、朝でも夜でも絶対すぐに駆け付けないと……という意識で働いていて、金曜日の夕方に呼ばれて、週明けの朝一に資料作っておいて……みたいなこともありました。

そんな環境から転職してライフネット生命に入って先輩社員が育休を取得するのをみて、「あれ? 男性も育休を取っていいらしいぞ」と。だから、妻に「今の会社は休めそうなんだけど、どうする?」って聞きました。どちらかといえば、妻も前職の職場環境を知っていたので、嬉しいというより、「休んで大丈夫なの? 査定に響くんじゃない?」と心配されましたね(笑)。でも、結果的には喜んでくれました。

木地谷:私の場合、育休は取得するのが当たり前という空気感がありました(笑)。社長も3人子どもがいて育休をとっている、言わなくてもそういう会社でしょ、という感じですね。実際育休をとって妻の会社への評判があがったというのは同じですね。

加納:うちは義理のお母さんがすごく喜んでくれましたね。「これはポイントが上がったぞ」って(笑)。義理のお母さんにとって、ライフネット生命の印象は、「ネットで保険を販売する新しい会社、以上」というのが素直なところだったと思うんです。でも、「男性も育休を取得できる会社」ということで、「子育てに理解があるいい会社ね!」と一気に印象が変わったようです。

木地谷:それわかります。妻だけじゃなく、妻の家族の評判も上がるんですよね。「私たちの時代では考えられなかったけど、最近の会社はそうなの? すごいわね」って言われます。

サイボウズ・木地谷健介さん。1歳になる子を持つ、1児のパパ。育児休暇は2週間取得。

サイボウズ・木地谷健介さん。1歳になる子を持つ、1児のパパ。育児休暇は2週間取得。

■仲間のサポートだけでは休めない?

──男性の育休取得は、家族や両親の会社の評判も上がるんですね。育休取得中の周囲のサポートはいかがでした? 会社へのリクエストなどありましたか?

加納:僕の場合は育休中も業務に大きなトラブルはなく、事前に念入りに予定していた対応でうまくいきましたし、職場復帰もすっとできました。ただ、僕は2週間の取得でもっと長期になるといろいろ変わってくるとは思います。

肥田:それこそ僕は1か月半育休を取得しましたが、メールでいつも状況がわかっていたというのがすごく助かりました。さすがにそれだけいなくて、自分が一切連絡しなくても部署が順調に回っていたら、それはそれで寂しいじゃないですか(笑)。

「何かあったら電話してください」とも伝えていましたし、電話とメールがあれば、オフィスに行かなくても、それに近しい感覚でいられる。そうやってずっと職場とはコミュニケーションをとっていたので、復帰もすごくスムーズでしたね。いきなり1か月半後にゼロから始めたら、難しかったかもしれません。

華山:最初に「自分がいなくなる前に、段取りを組んでおくのが大事だ」と言いましたが、どれだけやっても結局、漏れていることがあるし、予定外のことは起こるんです。私は出産予定日がズレて、さらに2日休まなくてはいけなくなった。

そこで「当初の予定と変わってしまいますが……」とチームの全員が見ることができるメッセージに書き込んだら、「それは困る」ではなく、「おめでとう!」「あとは任せてください」というたくさんのコメントを仲間からもらったんです。あのときは感動しましたね。

木地谷:社内の雰囲気というか、文化はすごく大切ですよね。私も育休中に得意先からの要望が来たとき、社内のメンバーには事前に「この日に生まれるかもしれないから、もし得意先からの緊急の連絡が来たときのために、一応スタンバイはしてくれませんか?」と話をしておいて。でも、そういうお願いをするときも当然のように引き受けてもらえたので、すごくありがたかったですね。

肥田:「育休でいなくなります」「育休から戻ってきました」と言ったとき、得意先ってどんなリアクションになるんですか?

木地谷:「無事に生まれてよかったね」「おめでとう」と祝福してもらいました。

肥田:そんな感じなんですね。僕は忙しく働いていたときは子どもがいなかったですけど、当時は、もし男性が育休を取ろうものなら、「お気楽だね」「これだけ仕事が溜まっているのに大丈夫?」みたいに思われそう……って考えていました。おめでとう、というより、僕の仕事ぶりをご心配していただくような。業界や会社によって特有の反応があるのかもしれないですね。

木地谷:サイボウズは会社として、世の中に「日本企業の働き方改革を推進したい。そのためにも働くママとパパを応援します」という男性の育児参加賛同も含めたメッセージを出しているので、「木地谷は~」というよりも、「サイボウズはそういう会社だよね」と受け止められているのだと思います。ある意味、自分が休むのを会社のせいにしてしまうというか。だって、こんな会社で私が休んでいなかったら、逆におかしいですからね。

加納:特に取引先に対しては、「男性の育児参加を応援する会社」という印象があるかどうかって、けっこう重要ですよね。

肥田:僕は忙しく働いていた頃の影響もあってか、休むことに対して不安があるんですよ。「1か月半休んでいいよ」って言われたけど、本当に大丈夫なのかなって思ってしまう。

──そう考えると、男性の育休取得には職場の仲間のサポートだけでなく、会社全体の姿勢も問われますよね。ただ制度があるだけでは、「本当は査定に響くんじゃないの?」と不安にかられる。

加納:でも自分が実際に育休を取得してみたら、会社員としてもいいことがあると思いました。家庭にいるときのほうが、会社のことを引いた目で見られるんです。1日の中で、ライフネット生命のCMに接触するのかしないのかとか、周りの人が保険を話題にするときって、どんなときなんだろうとか、そういうことがすごく冷静に観察できる。

育休を取ったことで、今まで会社の中で考えていたことの延長だけではダメだよなって、すごく気づかされました。だから男性の育休取得も、可能であればできるだけ取ったほうがいいんじゃないかと思いますね。

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(後編につづく)

<クレジット>
取材・文/ライフネットジャーナル オンライン編集部
撮影/村上悦子