写真左:出口治明(ライフネット生命保険 会長)、右:津田大介さん(ジャーナリスト)

写真左:出口治明(ライフネット生命保険 会長)、右:津田大介さん(ジャーナリスト)

Powered by ライフネット生命保険 『働く君に伝えたい「お金」の教養 ~人生を変える5つの特別講義~』(ポプラ社)を出版したライフネット生命会長兼CEOの出口治明が、ジャーナリストの津田大介さんをゲストに迎えて出版トークショーを行いました。お金論から人生論にまで及んだ100分間トークを凝縮してお届けします。

■若者の、若者による、若者のための本

津田:この本のサブタイトルが『人生を変える5つの特別講義』ということで、今日のトークショーは補習といったところでしょうか。僕もこの本、楽しく読ませていただいたんですが、「お金の本だけど人間賛歌だな」と思いました。お金は人間のいろんな可能性を広げる道具である、と。大事なのは、優先順位を間違わないようにお金を使っていこうということなんですね。

出口:そうですね。その考えのもとになっているのは、昔読んだアンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』に書かれていたことです。うろ覚えなのですが、お金の項目に「使う時以外、役に立たない代物」といったようなことが書いてあって、「その通りやな」と思ったのです。

津田:なるほど(笑)。すごく有名な、皮肉のきいた辞典ですよね。

出口:でも正しいですよね。

津田:この本は若者の質問に出口さんが答える講義形式なっていて、出口さんに対して遠慮のない、時には失礼なんじゃないかというくらい本音レベルで質問をしているのが面白かったです。2~3時間で一気に読めてしまいました。本作りはどのように始まりましたか?

出口:出版元であるポプラ社の若い編集者の方が僕のところに来られて、「お金っていくら貯めたらいいんですか」と質問するので、「悔いなし遺産なし」の人生を送る僕は「お金なんか別に縛られなくたっていいと思うよ」と答えたのです。そしたら「その話をぜひ本にしましょう」となって、編集者とライター、それにライフネット生命の20代と30代の社員で構成されたチームが加わって、去年の夏頃から本作りが始まりました。

若い編集者とライターからの質問に僕が答える形なのですが、「それは本題とは関係ないです」とか「若い人はそういう話は興味ないです」と言われて、カットされた話がたくさんあります。ですので、僕が喋ったことがベースになってはいますが、リンカーンの言葉を借りれば「若者の、若者による、若者のための本」ですね。

津田:20代向けの本ではあるけれど、30代から60代の方が読んでも学べることは多いですよね。

■親の介護やマイホーム、極論から見えてくること

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津田:僕はお金のことにいい加減で、一番嫌いな仕事が請求書を書くこと。取りっぱぐれするようなこともあったので、読みながらお説教を受けているようでもありました。中でも恐れおののき、納得もしたのは、親の介護の話。「親のために貯蓄しなくていい」と言い切っています。

出口:僕には弟がいるのですけど、両親を三重県に置いて2人とも東京に出てきました。だから地元では親不孝の兄弟と言われていた。でもおふくろは96歳で今も元気。親父も一昨年亡くなったけど96歳まで生きました。子どもから「お父さんお母さん、もう楽していいんだよ」と言われるよりも、「ひとりで食べられてひとりでトイレに行ける間は、面倒みないよ」と言われたほうが元気なんじゃないかと僕は思っています。

津田:それって極論ではあるけれど、本の中では出口さんの体験談だけでなく、お医者さんの話や北欧の老人ホームの話も引っ張ってきているので、なるほどな、と思いますね。実は最近、近しい人が軽い脳梗塞で倒れて、無事だったんですけど、一度脳梗塞をやってその後に引きこもってしまうと今度はそれが原因で認知症が進みやすいという話も聞くので、他人事ではないと思いました。見守りつつ手を出さないということが大事なんですね。

出口:そうだと思います。

津田:この本にはその他にも、いろんなことをズバっと言い切っていますね。「マイホームは買わないほうがいい」とも。

出口:ある方が私に転職の相談をしてきたのですが、住宅ローンがあるから会社を辞められないと言うのです。でも、何か変だと思いませんか。そう、住宅ローンのために行動が縛られてしまっているのです。キャッシュで家を買える場合はいいと思いますが、あまりに住宅ローンに縛られるなら賃貸でもいいと思うのです。

津田:チャンスが巡ってきた時や転職したい時に動ける状況を作ったほうがいいということですね。

■同じ3万円を使うなら、一日でも早いほうが得

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津田:僕は20代の頃は平気で徹夜をしていましたが、今徹夜したら2~3日は引きずってしまいます。出口さんが身体の変化に気づいたのはいつ頃ですか?

出口:僕は中学、高校と陸上をやっていたので、足には自信がありました。ところが30歳くらいだったでしょうか、子どもの通う小学校のマラソン行事で校舎の裏を2キロ走った時に、歯がゆい思いをしました。練習も準備体操もせず、「2キロなら余裕だな」と昔の感覚で走りだしたら、1キロくらいで足がつったんです(笑)。結局、最後尾のグループと一緒にヨレヨレになってゴールしました。スタートからしばらくは先頭グループの中で走って気持ちよかったんですけどね。

津田:そうした体力の衰えを、仕事ではどのようにカバーしましたか?

出口:一番簡単なのは任せること。そのことに気づいたのは40歳くらいの時でした。僕はその頃、政府の金融制度改革の審議会で仕事をしていて、生命保険業界の人の発言を全部原稿にしました。するといつの間にか、日曜も仕事をしていた。一所懸命やっているのに、どうしてこんなに忙しいのか。それは原稿を全部、自分ひとりで書いているからだったんですね。

案の定、部下に任せてみたら楽でした。ただ、自分で書いていないとディテールがわからなくなるんです。人に仕事を任せて楽になるということは、ディテールがわからなくなることとトレードオフだと、その時学びましたね。

津田:いい意味で「テキトー」になったということですね。

出口:そうです。僕はもとともテキトーだったんですけど(笑)。人間ってやってみないとわからないことがありますから、仕事においても、やりながらいろんなことを学んできた気はします。

津田:自分が学んで成長するという意味で、この本が20代向けにすごく役立つなと思ったのは、若い時と年を取ってからでは、同じ3万円を使うのでも吸収量が違うという話でした。若いうちは体力があるから、貴重な体験がたくさんできる、と。

出口:はい、そう思います。僕は旅が大好きで、フィレンツェに行ったら以前は必ず大聖堂の塔を登っていたのですが、体力が落ちている今は「何回も登ったから、まあいいか」という気持ちになってしまいます。同じ入場料なのに、年を取ったらできることが限られてくるんです。だから同じお金を使うなら、1日でも早いほうが得、と思います。

(後編に続く)

『働く君に伝えたい「お金」の教養: 人生を変える5つの特別講義』 (ポプラ社)出口治明著

『働く君に伝えたい「お金」の教養: 人生を変える5つの特別講義』(ポプラ社)出口治明著

<プロフィール>
津田大介(つだ・だいすけ)
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。京都造形芸術大学客員教授。IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)など。テレビ・ラジオのレギュラー出演や役職も多数。週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。
津田大介公式サイト

<クレジット>
取材・文/香川 誠
撮影/村上悦子

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