16042201_1Powered by ライフネット生命保険

最近の若者は消費をしない──。そういう声がメディアにあふれています。しかし、それは本当なのでしょうか?

子育て世代の保険料を半分にしたいという企業理念を持つ当社として、次代を担う若者たちの消費意識を知ることは、とても重要なこと。今、若者たちは「お金と消費」についてどう考え、実際、どんなものを好んでいるのか?

『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』『さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち』など、若者と消費の関係を分析した話題作を多く上梓する、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平さんに話を聞きました。

■高額単品消費から低額ちょこちょこ消費へ

──今の若者は「消費離れ」していると言われます。その原因はどこにあるのでしょう?

原田:ひとことで言ってしまうと、団塊ジュニア世代と比べて、今の若者たちは単純に「お金がなくなって」います。もちろん、いつの時代も若者は給料が低くて当たり前。そんな中でも、団塊ジュニア世代の若者たちは車や海外旅行の費用を捻出していたので、車離れ、海外旅行離れをしている今の若者たちが、突出して「ケチ」に見える。でも、その見方は正しくありません。

──同じように給料が低いにもかかわらず、なぜそんなに消費のスタイルが変わったのですか?

原田:「見込み消費」ができなくなったのが大きいのです。会社に就職すれば、年功序列で給料が上がっていく時代であれば、今は給料が低くても、将来はこのぐらいになるからという「見込み」で、ローンを組んで家を買ったり、車を買ったりできた。背伸びした消費ができたわけです。

でも、非正規雇用が増え、会社員も年功序列で給料が上がっていく時代ではなくなりました。その結果、若者たちの間で将来の所得増に対する期待値が下がり、「見込み」による消費がなくなったのです。

かつて、若者たちの「三種の神器」が、「車・海外旅行・お酒」だった時代がありました。それは全部、高額消費です。車はもちろん、海外旅行だって今はLCCなどありますが、それでも欧米に行けばかなりの費用が必要です。お酒も一回一回はそれほど高額とは言えませんが、以前はもっと飲みに行く頻度が多く、結果として、かなりのお金を支払っていました。今の若者はそうした高額消費のすべてから離れてしまっています。

──その「使わなくなったお金」はどこに向かっているのでしょう? 貯金ですか?

原田:いえ、家計調査などを見る限りでは、今の若者の貯蓄額が特に上がっているとは言えません。高額消費がなくなっても、若者たちはちゃんとお金を使っています。ただ、かつては「単品高額消費」だったのが、今は「低額ちょこちょこ消費」に変わっているのです。

──低額ちょこちょこ消費とは?

原田:わかりやすいのがカフェ代です。「居酒屋で朝まで飲む」ことは減っても、「カフェを1日4軒はしごする」ことはある。車は買わなくなったけど、10万円くらいの自転車は買う。つまり、単品で大きな消費が、すべて小粒な消費に分散しているのです。

象徴的なのが自動車業界です。車を購入する若者は減ったけど、その代わりに、今はカーシェアがものすごい勢いで伸びています。それは「使う時だけ、ちょこちょこ支払いたい」というニーズに合致しているからです。

原田曜平さん

原田曜平さん

■若者向けヒットの条件をレッドブルに学べ

──しかし、低額ちょこちょこ消費が台頭すると、企業は大打撃を受けそうです。

原田:カーシェアの例のように、発想を転換すれば、モノを売ることで稼いできた企業も、今の若者たちに対応した商品やサービスというのは生み出せると思います。若者と消費の関係が話題になっているのも、今がちょうど、その転換期だからなのかもしれませんね。

──なるほど。原田さんから見て、低額ちょこちょこ消費に対応した、現代の「新・三種の神器」とは何だと思いますか?

原田:先ほども言ったように、「低額ちょこちょこ」なので、「三種の神器」という単品消費に対応した考え方は合わないんですよ。それでも無理やり考えるとしたら、……カフェと散歩とレッドブルですかね。

──カフェと散歩と、レッドブルですか?

原田:エナジードリンク市場というのは、主に20代が牽引しているんです。冷静に考えれば、あの量であの価格(250mlで280円)はちょっと高い。でも、このぐらいの価格帯だと、若者は100円くらい高くても、あまり気にしません。その価格差に敏感なのは主婦層ですね。特にレッドブルはクールなイメージをうまく訴求することで、若者たちの節約志向を乗り越えることに成功しています。そこから日本の企業が学べることは多いはずです。

──レッドブルからは「若者向けヒットの条件」を学ぶことができる、と?

原田:ええ。まず、従来品に比べて見栄えがいい。今の若者は感覚のベースとして、スタイリッシュなものを好む傾向があります。これはファストファッションの普及と関係がありますが、今って、本当にダサい若者って滅多に見なくなりました。昔はかなりいたんですよ。でも、今は秋葉原に行っても、そういう若者を目にすることは珍しくなりました。

──若者のファッションの平均値が上がっている。

原田:そうです。ユニクロに行けば、誰でも手軽にそれなりの格好ができますからね。それに今はSNSで多くの友人とつながっているため、若者たちは常に外からの目にさらされて生きています。昔よりもずっと、人の目を気にして生きているんです。

うちの若者研究所でも、昔ながらのオタクの子がいました。それこそ、お風呂に1週間も入らないような。でも、そんな彼がある日、全身脱毛していました。それはやっぱり他人の目が気になるし、実際に「もうちょっと洋服考えたほうがいいんじゃない?」と言われるからなんです。

そういう今の若者たちのライフスタイルに、レッドブルはハマります。SNSに写真をそえて、「レッドブルなう」とつぶやくだけで、なんとなくスタイリッシュな印象を演出できる。若者向けのヒットを考えるには、この「SNSに投稿しても恥ずかしくない、見栄えの良さ」が重要です。

■海外旅行はしないけど、海外にはあこがれる

原田:もうひとつSNSの普及に関連して言うと、レッドブルが海外で売れていることも、ヒットの要因となっています。

──それは「日本人は海外物に弱い」みたいなことでしょうか?

原田:少し違っていて、今の若者は海外旅行からは離れてしまっていても、海外の情報にはどんどん敏感になっています。それは海外のニュースやトレンドが、SNSを通じてダイレクトに入ってくるからです。

例えば、昔はアメリカの若者のライフスタイルを知るためには、海外のドラマや映画を観なければわかりませんでした。いわば、フィクションの世界だったわけです。でも、今は知り合いにアメリカの大学に留学する子がいたら、現地の情報がフェイスブックなどでどんどん入ってきます。それであこがれが募る。

ここ数年のハロウィンの大ブレイクも、SNSを通じて海外のハロウィン事情を知るようになり、「ああいうイベントを自分たちもしてみたい」と思う若者が増えたからだと分析できます。

──海外旅行に行かなくなったのに、海外の影響というのはむしろ上がっているわけですね。

原田:そうです。さらにレッドブルから学ぶことがあるとすれば、やはり、日本の企業よりも、若者に特化したマーケティングをしっかりやっているということでしょう。エアレースやダンスイベント、音楽イベントなどを主催することで、若者カルチャーとレッドブルを結びつけている。日本の企業でこれほど若者向けのマーケティングをやっているところは、少ないですね。

■中国の若者たちも今は「まったり」が好き

──先ほど、「新・三種の神器」にレッドブルのほか、カフェと散歩を挙げていらっしゃいました。カフェと散歩が趣味というのは、若者というより、まるでお年寄りのような……。

原田:かつての若者たちのようなガツガツさはないですよね。でも今の若者が変なのではなくて、むしろ戦後の経済成長期が、歴史的に見ると異常だったのだと思います。なぜかというと、最近は日本の若者だけでなく、世界中の若者が非常に近いライフスタイルを選ぶようになってきているからです。

例えば、アメリカの若者も、ヨーロッパの若者も、中国の若者でさえも、都市に住む若者はみんな同じようになってきています。私は5、6年前に、よく北京や上海に調査に行っていましたが、当時は若い人たちはものすごいエネルギーで、本当に経済成長の勢いを感じて、このままでは日本はやられてしまうなと危機感を覚えたものです。でも、今の北京や上海の若い人たちを調査すると、もう“まったり”したライフスタイルを好むようになっています。

日本だけでなく、どこの国でも、貧しい時代から経済成長していく世代というのは、大きな夢を持ってガンガン働いて、実際に経済も伸びるので、ガンガン「見込み消費」をしていく。でも経済が成熟して低成長のステージに入ると、どこの国でも若者は消費をしなくなるんです。日本だけが特殊なわけではありません。

最近、ロンドンとパリで若者たちの調査をしてきましたが、彼らは日本以上に、本当にお金を使わないで暮らしています。外食なんて週末以外はほとんどしない。基本、友人や家族と家でまったりするのを好んでいます。さらに失業率も高く、将来への不安があるので、見込み消費もしません。アメリカも格差が広がることで、似たような状況になりつつあります。それが表れているのが、現在の大統領選です。

──とういうと?

原田:民主党のバーニー・サンダース候補の人気です。彼は「国立大学を無償化して、格差を是正するんだ」と言ったことで、ほとんど無名だったにもかかわらず、若者たちの熱狂的な支持を集めています。背景には、若者が抱える将来への不安があるわけです。

実は同じような現象はほかの国でも起こっていて、イギリスのジェレミー・コービン(労働党党首)や、フランスのエマニュエル・マクロン(経済・産業・デジタル大臣)といった、サンダースと同じような主張の政治家が、若者たちの支持を集めています。日本からはこうした政治家は出ていませんが、すでに奨学金をもらっている大学生が5割を超え、欧米と似たような状況になってきているので、いつ登場してもおかしくはないと言えます。

だから繰り返しになりますが、今の若者たちの「消費離れ」の背景には、将来への不安があり、それで「見込み消費」がなくなっている。決して「ケチ」ではないのです。しかも、これは世界的なトレンドであり、しばらくは変わることがないと捉えるのが、企業にとっては重要だと思います。

■売れるアイデアも世界共通?

──とはいえ、ライフネット生命も含めたこれからの日本企業は、そうした若者たちに商品やサービスを売っていかなければなりません。レッドブルの例もありましたが、若者向けの商品やサービスを考えるうえで、どのような発想が必要になるでしょうか?

原田:先進国の若者はどの国も同じようになってきている、ということはひとつのヒントになるかもしれません。

例えば、カーシェアを日本でよく見るようになったと思ったら、ニューヨークでもジップカーというサービスが伸び、ロンドンでもやはり伸びている。世界中の若者のライフスタイルが似通ってきたことで、世界各国、ほぼ同時に同じようなものがヒットするようになってきました。

つまり、生命保険でも自動車でも、若者たちに売れるアイデアというものを考えることができたら、グローバルで通じる可能性があるわけです。今どきの若者を見る視点としては、すごく大事なことです。

それこそ生命保険は、売り方を工夫すれば、今の若者たちに十分に“刺さる”商品だと思います。若者たちから見込み消費がなくなっているのは、将来への不安があるからです。まさに生命保険というのは、その不安にそなえるために必要じゃないですか。だから、消費が刹那的になっている若者たちに向け、「今入っておいたほうが、将来安心だよ」と伝えていくことが、生命保険の需要を喚起するうえで、重要なことだと思います。

(後編につづく)

16042201_3

<プロフィール>
原田曜平(はらだ・ようへい)
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、博報堂入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。2003年JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。専門は若者研究。日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行っている。近著に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』、『さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち』など

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉

人生と仕事とお金について考えるメディアライフネットジャーナル オンライン 公式Facebook

Powered by ライフネット生命保険