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将来に対して漠然とした不安を持つ学生時代。キャリアについて学ぶ機会はあっても、家庭の築き方を学ぶ機会はほとんどありません。しかし、それでは本当の将来像が描けないのでは──。そんな疑問から、「いまの女子大生が安心して母になれる社会を作る」をコンセプトに2014年6月に学生団体manmaを立ち上げた新居日南恵(におり・ひなえ)さん。現在は、主に女子大生が未就学児のいる家庭を訪問し、1日同行することで、ママやパパの子どもとの関わり方をリアルに体験できる「家族留学」を活動の柱に据えています。大学院への進学を決意し、院試を直前に控えながらも精力的に活動を続ける新居さんに、その原動力やmanmaのこれからについて聞きました。

■「私にもできそう」と安心して将来を考えてもらえる仕組み

──新居さんがmanmaを立ち上げたのは大学1年生の秋ですよね。立ち上げの経緯について教えてください。

新居:いまの女子大生が子育てをしながら安心して暮らすことができる社会を作る、という同じ課題意識を持った友人2人とmanmaを立ち上げました。本格的な活動がスタートしたのは2014年1月から。いまはメンバーも10名に増えました。

──最初から「家族留学」を手がけていたんですか?

新居:いえ。最初にやったのは、女子大生100人に「母親から受け継いだことば」を色紙に書いてもらうという取り組みです。含蓄のある言葉がたくさん集まって、しみじみと感動しました。その後は、「子育てをしながら安心して働ける社会」の「安心」の部分にウエイトを置いて活動を広げていきました。例えば、食。母親になったら食の安心安全の確保は欠かせません。そこで、83才のいまも現役で働いていらっしゃるNHKの料理の先生のところに行って料理教室を開催して、魚の捌き方を学んだりしましたし、オーダーメイドの託児所を運営しているcreche bebe(クレッシュべべ)で託児所の体験をしたこともあります。

新居日南恵さん

新居日南恵さん

──「安心」をテーマに幅広い活動をされていたんですね。

新居:そうなんです。でも、そうした活動だけでは、結婚・出産をなかなかリアルにイメージできないんですね。就職活動をしていても、母になった後のイメージがわかない。子育てに奔走して、子どもが泣いているイメージがそもそも想像できないわけです。そんなとき、manma主催のワークショップの協力企業に勤める女性から誘われて、ご自宅に遊びに行く機会がありました。双子を育てているワーキングマザーのお宅です。

──子育てのリアルな現実が見えた?

新居:会社で格好良く働く姿だけじゃない。家庭で子育てに奮闘するリアルなワーキングマザーを目にすることができました。仕事と子育てを両立するってこういうことだったんだと目が覚めた。「これを知りたかったんだ」と感じました。そのワーキングマザーの方は大変そうでしたが、これなら自分でもやれそうだ、とも思ったんです。

──そこからスタートしたのが「家族留学」?

新居:自分の経験から、仕事と子育てを両立するリアルを知れば、自分の将来もイメージできて、より「安心」につながるのではないかと考えました。女子大生に「私にもできそう」と安心して将来を考えてもらえる仕組みとして始めたのが、「家族留学」のプログラムです。

■仕事と子育ての間には無数の選択肢がある

──「家族留学」のプログラムの内容について教えてください。

新居:女子大生を中心とするプレママ・プレパパ世代が、1日、未就学児のいるご家庭を訪問します。赤ちゃんのだっこやミルク、おむつ替え、お風呂、バギーでの散歩などパパとママに同行し、ときには手伝いながら、ママと子どもとの関わり方を見たり、生き方についてお話をお聞きするプログラムです。さまざまな家族のあり方にふれることで自分のライフキャリアプランと向き合ってもらうことが狙いです。

manmaウェブサイト

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──プレパパということは男子学生の参加もあるんですか?

新居:少ないですが、ありますね。manmaにはこれまで約160人が参加していますが、そのうち20人が男子大学生です。女子と比べると、男子はライフキャリアプランについて真剣に悩んでいる人は少ないように思います。結婚や出産で人生が大きく変わる可能性が高い女性と違って、男性はほとんど影響を受けないから考える機会がないんです。でも、「女子大生がmanmaに参加しているのを見て、自分も考えないといけないと思い参加しました」とか、「結婚する相手にも働き続けてほしいと思っているので、世の中の旦那さんはどうサポートしているのかを知りたい」という動機で参加する男子大学生もいます。

──女性の参加者も大学生が中心ですか?

新居:男性の参加者は100%大学生ですが、女性は高校生もいるし、卒業した社会人もいます。一番多いのは大学3年生ですね。就活が近づいてきたときにいろいろ不安になり、アンテナを張って将来について考え始めるのかもしれません。

──やはりキャリア志向の女性が多い?

新居:さまざまですね。専業主婦志向の人もいれば、バリキャリ志向もいる。「私はキャリア重視だから子育てには向いていない」という女子大生もいれば、「子どもはそんなに好きじゃないけれど、最初から子どもを諦めるのも違う」と思っている女子大生もいます。

──「家族留学」に参加した後、考えが変わるというケースもありますか?

新居:ありますね。よく専業主婦志向が増えているって本当ですかと聞かれるんですが、manmaの活動に参加しているメンバーは、旦那さんの給料だけで生きていきたいと考えている子はほとんどいません。でも子どもが小さいうちは、できるだけそばにいてあげたいと考えている子が多いんですよ。

そういう子が「家族留学」を通して、専業主婦にならなくても、ゆるく働き続けるという方法があることを知って、「別の選択肢を考えられるようになった。manmaに参加して良かった」と言っていました。共働きのお母さんから「仕事にも子育てにも誇りを持てるので、子どもに自信を持って接することができる」と聞いて、「共働きをポジティブにとらえられるようになった」と感想を漏らす子もいます。あと、「子どもはあまり好きじゃなかったけれど、『家族留学』に行ってみたら、子どもが可愛いと思えたので大丈夫だと思った」とか(笑)。

──「家族留学」によって、いろいろな選択肢があることを実感できるんですね。

新居:仕事と子育ての間には無数の選択肢があって、どちらかが100ならどちらかが0になるわけじゃないですよね。シッターさんに手伝ってもらうという選択肢だってある。理想の割合は人によって違う。それを実践している先輩方に見せていただくのが「家族留学」なんです。

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■「家族留学」を通して家族に社会的サポートを届けたい

──受け入れる側の家庭の反応はいかがですか?

新居:女子大生も熱いですけど、家庭も熱いですよ(笑)。いきなり子育てに放り込まれたというママがすごく多いんですが、そういう方が強い思いを持って、学生を受け入れてくれるんです。「もっと早いうちから子育てを体験していたら、おじけづかずに済んだかも」と共感してくださるママが目立ちますね。

──パパは「家族留学」をどう受け止めているのでしょう?

新居:女子大生が行くと、パパがママ以上に歓迎してくださることがあります(笑)。仕事人としての評価はされることがあっても、自分自身の家族が認められたり、憧れのパパと言われる機会は多くはないですよね。それが嬉しくて、最初は抵抗感があっても、次第に「家族留学」の受け入れに前向きになってくださる方も多いです。

──「家族留学」を始めたことで、新居さんも何か考え方が変わりましたか?

新居:家族観が変わりました。私の家族は、父が収入の源泉で、母は仕事をしながら楽しく暮らしているという構成です。私自身はそういう家族をイメージできなかったんですが、いろいろな家庭を見に行くことで、家族はチームだと考えるようになりました。数十年の人生をいっしょに生き抜くためのチームとして家族がある。どう乗り越えられるかをいっしょに考えると家族は回っていく。どちらが強いとか弱いじゃなくて、対等に乗り越えられる家族っていいなと思います。

──新居さんは大学院に進学される予定とか。

新居:そうなんです。「家族留学」をプロジェクトとして進めながら、家族や結婚制度のありかたを研究するつもりです。家族が置かれている社会制度の中で問題を解決していくために動きたいですね。

──今後のmanmaの活動計画について教えてください。

新居:大学院に進んでもmanmaの活動は続けます。家族留学については、東京以外でもできる環境をどんどん整備したいです。いまは、メディアや自分たちのネットワークを通して参加する人が増えていますが、必要な人に自然に届く環境を作りたい。企業の就業インターンシップにからめることも検討しています。この春から女子大の授業にも関わらせていただくことになったので、そこでも取り入れたいです。

──企業や大学のゼミで「家族留学」を導入したら大きく広がっていきそうですね。

新居:将来的には、「家族留学」を通して家族に社会的サポートを届けていきたいと考えています。家族の中に第三者が入ってくることは普通ないんですが、女子大生が入ることで、家族を見つめ直す良い機会になると言っていただくことが多いんですね。子育てについても、それから介護についても、社会が家族をサポートする環境作りに貢献していきたいと思います。

(後編では女子大生たちによる座談会の模様をお届けします)

<プロフィール>
新居日南恵(におり・ひなえ)
1994年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学法学部政治学科4年。2014年1月に発足した「いまの女子大生が安心して母になれる社会をつくる」をコンセプトにした学生団体manmaの発起人代表。子育て中の家庭を訪問する「家族留学」などの企画を中心に活動している。
●manma

<クレジット>
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子

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