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女子大生は自らのライフキャリアプランをどのように描いているのでしょうか。学生団体manma(現・NPO法人manma) が実施する、1日家庭訪問企画「家族留学」を体験した人は、そこから何を得て、何を学んでいるのでしょう。憧れ、不安、心配、希望。キャリアと家庭、仕事・結婚・出産をリアルにイメージしたいと模索し、未来を真剣に考える女子大生5名とライフネット生命の取締役・中田華寿子(当時)が語り合いました。
(前編のmanma代表・新居日南恵さんインタビューはこちら)

※この記事は2022年4月に一部内容を更新して再掲しています。
※記事の内容は2016年5月時点のものを含みます。

■子育てと仕事の両面からリアルで率直な話が聞けた!

中田:今日、お集まりいただいたみなさんは大学がバラバラですよね。どういうお知り合いですか?

新居:manmaの活動メンバーと、私の個人的なつながりで来てもらったメンバーです。こういうかたちで集まるのは初めてなので、ドキドキしますね(笑)。

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中田:この中で「家族留学」に参加したことのある人は?

小山田:私は参加しました。就職活動では、仕事や子育てに関してざっくばらんに話を聞くことがなかなか難しいので、それができればと思って。

中田:リアルな日々の生活の話を聞くことはできました?

小山田:私が訪問したご家庭は、旦那さんが建築関係、奥さんが国内のメーカーに勤務されていて、お子さんはまだ生まれたばかり。奥さんが育休中だったのでゆっくりお話を聞くことができました。保育園の問題などタイムリーな話題も聞けたので興味深かったですね。

中田:なるほど。子育てと仕事の両面から話を聞ける機会なんですね。

小山田:土曜日に訪問したので旦那さんもいらっしゃいました。家事はどう分担しているのか、子どもとの関わりもばっちりと見られたのもよかった(笑)。最初から優しい旦那さんだったらしいですが、子どもが生まれてからさらに家事・育児に協力的になったという話でした。

「家族留学」を主催するmanma代表・新居日南恵さん(慶應義塾大学4年)

「家族留学」を主催するmanma代表・新居日南恵さん(慶應義塾大学4年)

中田:ライフネット生命も育休を取る男性社員が多いんですよ。20代、30代の若い社員が多いので、いつの間にかそれが当たり前になりました。彼らが育休から戻ってきたとき必ず言うのが「育児は予想をはるかに超えて大変だった」。育休中の経験が、母親はこういうことに困っているからそれの支えになるような商品やサービスを開発したいという提案にもつながるので、自然な良い流れだと思います。

よく、育休制度はあっても使えない雰囲気が会社内にあるという話を聞きますよね。その点、当社のような新しい会社だと男性も活用することに全然抵抗がない。私には子どもはいないのですが、遠い親戚のおばさんのような感覚で、若い社員の家族を見て勝手に感じています(笑)。うちの会社には年に1回ファミリーDAYという日もあるんですよ。知ってました?

全員:えー! 知らないです。

中田:夏休みに、ファミリーで会社に来てもらう日で、子どもだけで30数名、旦那さんや奥さん、社員のご両親が来ることもあって、総勢60〜70名かな。その日は会社中を子どもが走り回っています。子どもといっしょにランチを食べたり、お父さんのデスクに子どもが座ってみたり、仕事内容を聞いてお父さんへの尊敬が生まれたり。いっしょに育っているという実感がわきますよ。お父さんもお母さんも子育てで成長していくし、それは隣で見ている私も同じ。このぐらいの規模のベンチャーだと自分たちでそういう制度を作っていくことができるんですよ。

全員:いいなあ(笑)。

佐川:私も「家族留学」に参加した1人です。留学先の奥さんは、不妊治療を経て、高齢出産で2人のお子さんを授かった方でした。私は、いままで高齢出産のリスクや不妊治療についてほとんど知らなかったので勉強になりました。ほしいときにいつでも子どもを産めるわけではないこと、子どもを持つことがどれだけ幸福なことかというお話を聞いて、視野が開けたように思います。

manmaメンバー・佐川奈央さん(慶應義塾大学3年)

manmaメンバー・佐川奈央さん(慶應義塾大学3年)

中田:それこそリアルな声、リアルな体験ですよね。

■女性と男性の数だけライフキャリアプランのイメージがある

中田:みなさん、いまライフキャリアプランについて「こういうことが気になっている」といった悩みや不安はありますか?

韓:私は研究者志望なんですが、結婚は難しいのかなと感じています。「博士課程に行く人は結婚しないし、子どもも持たないよね」と言われたことがあるんです。研究者を志すと家庭をもつのは厳しいのかも。

韓雪さん(麻布大学2年)

韓雪さん(麻布大学2年)

中田:うーん。人生は想定外のことが起きるものだから、研究のさなかに運命的な出会いがあるかもしれないし、まったく違う畑の人と出会うかもしれない。研究以外で人生が豊かになるかもしれない。人生にはいろいろな可能性があるから、いまから結婚は難しいと決めつけないでほしいと思うな。いまはたくさん悩み考える時期。同じ意見や違う意見に触れて、たくさん悩むいまの時間を満喫してほしい。いつになるのかわからないけれど、自分なりの答えが出ると思いますよ。

新居:「家族留学」に参加したいと言ってくる女子大生の中には、自分は理系で仕事と家庭の両立については心配なことが多いので、実際に研究者のワーキングママに話を聞いてみたいという人がけっこういますね。

中田:みんな働き方と家庭の両立のイメージと問題意識を持っているのね。当時の私には働くイメージしかなかったなあ(笑)。

榎本奈々さん(立教大学2年)

榎本奈々さん(立教大学2年)

榎本:私は「家族留学」に参加したことはないんですが、いま、ある学生団体の活動でインターンシップ制度に携わっていて、女性のライフキャリアプランに焦点を当てています。私は、働いたとしても子どもができたら家に入りたいタイプ。十人十色というか、きっと女性と男性の数だけ、ライフキャリアプランのイメージがあるんじゃないでしょうか。

中田:本当にその通り。共感しますね。学校を卒業して就職して結婚して出産して育休を取って、というひとつのパターンしかないように思えるけれど、人の数だけ生き方があるんですよ。選択肢の中から選べるのがいまの世の中だと思います。

私のことを少しお話すると、大学卒業後、広告代理店に入って秘書業務から営業職につき、その会社を辞めたあとは、日本に進出したばかりのスターバックスの立ち上げに、次にマンツーマン英会話のGABAの事業拡張に携わった後、ライフネット生命に転職しました。誰しも就職活動をしていくうちに仕事のイメージが見えてきて、この業種はいいけれどここはちょっと違うかも、と感じることがきっとあると思います。みなさんが仕事を選ぶときの基準はどんなことですか。

小山田:私はバリキャリ志向なので、manmaに参加する前は子どもを持つ選択肢は一切考えていなくて、とにかく自分の実力を認められるような働き方をしたいと思っていました。マゾヒストの体質なのか(笑)、自分を追い込んでいたいんです。がんばっている状態が自分が一番イキイキしていると感じるので、若いうちから仕事にコミットできる環境を探しています。

manmaメンバー・小山田珠理さん(慶應義塾大学4年)

manmaメンバー・小山田珠理さん(慶應義塾大学4年)

中田:就職活動の中で手応えはありますか?

小山田:いまのような発言を就職活動でしたとき、企業の方がどういう反応をするのかを見ています(笑)。若いのにがんばろうとしているねと言うところもあれば、何を言っているのか? という対応の会社もありますね。

中田:面接は企業が応募者を見る場であると同時に、応募者も企業を見る場。面接官も試されているわけだから、その目線を持つことは発見があり面白いと思いますね。

■感度を高く持てば、出会いが増えて人生は豊かになる

榎本:中田さんにお聞きしたいんですが、学生のうちにやっておいた方がいいと思うことは何ですか?

ライフネット・中田華寿子

ライフネット・中田華寿子(当時)

中田:そうですね。これから人生は長く続くので、焦る必要は全然ない。ある選択肢を選んだとしても、やっぱり違うと思えば修正すればいいと思いますよ。家庭に入ってみて違うなと思えば働けばいいし、その逆でバリバリ働いてから家庭に入るのもありだし、両立しても良いし、仕事じゃなくて何か別の活動をしても良い。

私も一時期、専業主婦をしていた期間がありましたから。みなさんも、自分の気持ちに素直にしたがって、次のステップに進んでほしい。自分の気持ちに正直になることで、自分も家庭も前向きな生活をしていけると思うんですよ。

新居:そう思います。

中田:今日はちょっとびっくりしました。みなさん、すごく家族を作ることに前向き! 素晴らしいと思います。感度を高く持っていると、出会いが増えて人生は豊かになる。結婚するにしても出産するにしても、これからもアンテナを張って感度を高くして、出会いを増やしていってほしいと思います。

全員:ありがとうございました。

<座談会参加>
新居日南恵さん(manma代表、慶應義塾大学4年)
小山田珠理さん(manma、慶應義塾大学4年)
佐川奈央さん(manma、慶應義塾大学3年)
韓雪さん(麻布大学2年)
榎本奈々さん(立教大学2年)

<クレジット>
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子