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ライフネット生命保険 社長の岩瀬大輔が、今をときめくメディアアーティスト・落合陽一さんと、雑誌『SAPIO』にて対談しました。前編に続き、後編では英語やプログラミング教育について、今後の保険営業と人工知能について話題はさらに広がります。

(前編はこちら)

岩瀬:落合さんの著書『これからの世界をつくる仲間たちへ』の中では、グローバル化やIT化を意識して子どもに英語やプログラミングを習わせる親に対して、落合さんは疑問を投げかけていますね。

落合:僕の英語も決して流暢ではないから語学は重要だとは思うのですが、いまはコンピュータの翻訳もかなり高いレベルになってきて、今後はもっと進化していくので「英語を話せるだけ」では役に立ちません。機械に負けてしまいます。

岩瀬:大切なことは、「伝えたいメッセージがあるか」ですね。それがないと英語も意味がありません。僕も国際会議に行くと、さまざまな社会問題について外国人から意見を求められるので、それを痛感します。語学のテクニカルな部分が機械で代替できるようになれば、なおさら喋る話す中身のほうが大事になるでしょう。

落合:すでにLINEのアプリでは、メジャーな外国語に対応してメッセージを翻訳してくれるサービスがあります。VoiceTraというアプリは、英語や中国語、フランス語はもちろん、タイ語、ミャンマー語、ハンガリー語、ポーランド語などまで翻訳し、それを発音までしてくれます。多くの人が考えている機械翻訳の精度よりも、かなり正確です。

ただしそこで大事なのは、コンピュータが翻訳できるロジカルな日本語を書いたり話したりできることです。たとえば「私はあなたとこれから食事に行きたいと思います」という日本語は機械が完璧に翻訳してくれますが、「メシどう?」みたいな言葉遣いでは翻訳できません。

岩瀬:翻訳に限らず、すべてをロジカルに考える能力が重要ですよね。そういう能力はどういう教育で身につくと思いますか?

落合:一番いいのは論文を書くことでしょう。ロジカルな文章を書く訓練は、小学生のうちからやっておくべきだと思います。

岩瀬:英語と同様、「プログラミングだけ」を身につけても意味がないのでしょうね。「これからはITだ」と考えて、プログラミングを習う合宿のような教室に子供を送り込む親御さんも多いようですが。

落合:その教室でプログラミングを教えているバイト学生が、その子供の未来の姿ではないでしょうか(笑)。プログラミングができるだけでは、やはり大したアドバンテージにはなりません。それよりも、自分が何をやりたいかを考えることのほうが大事だと思います。

岩瀬:語学もプログラミングも何かを実現するためのツールにすぎないということですね。それで何をしたいのかという構想力を育てなければいけない。

落合:人間にしかできないことは、そういうことです。コンピュータに代替されて、人間のやることがどんどん少なくなっていきますが、それがどこまで進んでも、コンピュータには「モチベーション」がないんです。「何を作りたい」「こんな社会を実現したい」というモチベーションこそ、人間にしか持ちえないものですね。

岩瀬:われわれ生命保険業界には、コンピュータやネットの進化をどう取り込めばいいと考えますか。当社はネット生保ですが、生命保険は一生に1度か2度の買い物だから、ネットとの親和性が他の業界に比べて低いのではないかという考えもあります。

一方で、人工知能が発達すると、保険の営業職員は不要になるだろうという人もいますが、そんな時代がやってくると思いますか。

落合:あるときから、みんながネット保険に一気に移行する時期が来ると思います。
その転機になるのは、昔ながらの生命保険セールスパーソンよりも人工知能のbot(*)のほうが話しやすい、と多くの人が感じるようになったときじゃないでしょうか。

岩瀬:そういう時代になるのはいつごろですか。

落合:10年か15年後くらいだと思います。人工知能との会話が「多くの消費者の信頼を得る」までには時間がかかりますが、人工知能自体は数年で劇的に進化するでしょう。

たとえばフェイスブック社が開発して大きな話題となっている「メッセンジャーbot」というサービスは、ユーザーの好みや行動パターンを勝手に学習して、ピザ好きな人にはピザ店から「これはいかがですか?」とメッセージが届いたりする仕組みです。これが進化すれば、人が何かを食べたいと心の中で考えているときに、行動パターンなどからコンピュータがドンピシャのタイミングでその商品を提示できるようになるはずです。人生設計のパターンなども把握できるので、生命保険の相談も個別にできるでしょう。

岩瀬:ネット上で働く仮想営業職員をつくってしまうわけですね。お客様とのやりとりや、保険提案のパターンはどうやってbotに学習させるのですか?

落合:社内で蓄積したデータをコンピュータにひたすら「食べさせる」のです。コールセンターの営業職員と顧客とのやり取りの録音データをすべてテキスト化して人工知能プログラムに入れれば、どんな家族形態の人にはどんな保険がお勧めかとか、よくある質問とそれに対する答えも覚えられます。必要なデータ量は、10万件以上が目安とされています。それくらい「食べさせ」れば、かなり優秀な営業職員になるはずです。

岩瀬:それが実現すれば、生命保険業界に限らずあらゆるビジネスが劇的に変わりますね。

* 人間に代わって作業したり、やりとりしたりするプログラムの総称。たとえばツイッターでは、自分について書かれたツイートを自動的にリツイート(他の人の投稿を引用して投稿する)したり、特定の時間にツイートしたりするbotがある。

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<プロフィール>
落合陽一(おちあい・よういち)
筑波大学助教、デジタルネイチャー研究室主宰。コンピュータ研究者、メディアアーティスト。「米ワールド・テクノロジー・アワード」(2015、ITハードウェア部門)受賞。著書に『魔法の世紀』(Planets、2015年)、『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館、2016年)がある。

<クレジット>
構成/SAPIO編集部

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