会社近くのLeaden hall marketにあるパブでは、毎週金曜日には店外に溢れ出て道をほぼ占拠してしまうくらいの人が集まります

会社近くのLeaden hall marketにあるパブでは、毎週金曜日には店外に溢れ出て道をほぼ占拠してしまうくらいの人が集まります

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ロンドンの石井です。お久しぶりです。
今回は、イギリスの文化と言っても過言ではない「パブ」について書きたいと思います。(第1話はこちら)

パブは「イギリス版の居酒屋」とも言うべき場所で、もともとの名前は「Public house」、略して「Pub」となったそうです。その出自から、多くの人が集まるコミュニケーションの場で、現在でもスーツ姿の会社員(主に男性)が仕事帰りに、立ったまま(店内のイスは少ないです)、飲みながら(主にビールを)、延々としゃべっています。
パブでは周りが騒がしいので、同僚も口を大きく開けて大声でゆっくりしゃべってくれることが多く、ぼくにとってはむしろ聞き取りやすくなるので、それもパブでの会話の隠れた魅力です(あぁ、会社でのあの会話はそういうことだったのね、なんて納得することも)。

ロンドンにはとても多くのパブがあり、「犬も歩けば棒にあたる」レベルでパブを見つけることができます。
その歴史もさまざまで、ロンドンの街並みを木造からレンガ造りに変えてしまったと言われる「ロンドン大火(1666年)」後に再建された(つまり、その前から営業していた)パブがあったり、ビール好きの同僚が会社近くのパブを案内してくれた時には「切り裂きジャックに殺された売春婦たちがよく通っていた(事件発生は1888年)」パブにも連れて行ってもらいました。「ビールを飲みながら、文化や歴史も勉強できる」って素敵だと思いませんか?(まぁ、イギリスも日本も、ビールを飲むのに理由はいらないのですが……。)

さて、そんなパブに通い詰めるうちに、いくつかおもしろい発見をしたのでご紹介したいと思います。

▼適当な割り勘「Buy around」
日本の一般的な居酒屋と違い、基本的にはビールを1回頼むごとに代金を支払うのがパブのルールです。日本で「キャッシュオン」と呼ばれている仕組みと一緒です。ビールを注ぐカウンターの前にはだいたい長い列ができますが、よく見ているとひとりが何杯も注文します。これ、自分で全部飲むわけではもちろんなく、一緒に来ているメンバー全員分のビールをひとりが代表して買います。

そして、おかわりするごとにビールを買ってくる(Buy)人が変わっていき、1周(Around)したら“だいたい”割り勘をしたのと同じことになるわけで、これを「Buy around」と呼ぶそうです。

ただ、“だいたい”というのがミソで、ひとりひとり飲むペースが違うので毎回全員分を買うわけではないし、また回によって選ぶビールの値段もまちまちだし、そのうち先に帰る人がちらほら現れたりするともう何が何だかわからなくて、割り勘の手段としてはあまり厳密ではないのですが、それでも飲んでる間に年齢や役職に関わらず少なくともひとり1回は払う(もしくは払おうとする)紳士協定みたいなものがあります。

このあたりの適度なおおらかさ(適当さ?)と公平さ?が同居するところは、日本人の好みの分かれるところでしょうが、根は適当だけどほんのり真面目なぼくにはちょうど良い具合です(ただし、イギリス人の中にも時には“非”紳士がいるようで、彼らを“Tight”と呼ぶそうです。お金を“かたく”握ってなかなか離さない(払わない)イメージでしょうか)。

というわけで、イギリス人とパブにいるときに「自分のグラスが空いたから、自分の分だけビールを買いに行く」というのは、失礼とは言わないまでも、イギリス人からはちょっと不思議に見えるでしょう。「グラス空いている人、いる? 一緒に買ってくるから、何が欲しいか教えて!」とひと声かけるのが、パブにおけるイギリス流の礼儀です。

と、ここまで書いておいてなんですが、イギリス人の同僚にとってぼくは客人で、かつ、とても温かく迎えてもらっており、「お前は払わなくていいよ」と何かとおごってもらうことも多いです(笑)。

▼つまみの「Crisp」
パブではランチに食事を出すことも多いのですが、夕方以降は基本的には飲み物だけの提供となります。みんなビールだけで延々としゃべっています。小腹減ったな、と思っても、日本の居酒屋のようにバリエーション豊かなつまみがあることはほとんどなく、3~4種類の小さな袋に入ったポテトチップスがあるのが関の山で、せいぜいこれを食べるくらい。

ですが、このポテトチップス、日本ではお菓子扱いですが、イギリスではこれも立派な「おかず」のようで、コンビニの一般的なランチセットが「サンドイッチパックひとつ+小さなポテトチップス1袋+ペットボトル1本」だったりします。デスクでランチを取っている同僚の手元を見ると、家から持ってきたタッパーのサラダに、りんご1個、そして小さなポテトチップス1袋、というのも珍しい光景ではありません。とすると、パブのポテトチップスも、彼らにとっては立派なつまみの一品なのかも……。

ちなみに、ポテトチップスはイギリス英語で「Crisp」といい、逆に「チップス(Chips)」というとフライドポテトのことで、Fish & Chipsとはまさに「魚(のフライ)とフライドポテト」、見たまんまの名前です。

▼飲みニケーション=「Drinking communication」?
連日連夜というわけではありませんが、歓迎会、歓送会、誕生日会、など、何かにつけて同僚とパブに行ってるイギリス人。もちろん友達と行くこともあるのでしょうが、同僚と行く時には、プライベートの話だけではなく、仕事の話もしています。

日本語で「飲みニケーション」というと古臭くて時代遅れに感じる言葉でもあり、赤提灯で上司が部下に説教や自慢話をしているようなイメージも思い浮かびますが、パブでの「Drinking communication」では、誰かが一方的に話すわけではなく、役職の上下に関係なく、自分の思うところを対等に議論しているように聞こえます(もちろん英語なので、ぼくには話の細部やニュアンスはわからないのですが……)。

職場でもパブでも、役職や年齢に関わらず同僚とは姓(Last name)ではなく名前(First name)で呼び合うのが一般的で(客人のぼくも「Mr. Ishii」と呼ばれることはなく「Yasushi」と呼ばれます)、これがフラットなコミュニケーションを生み出しているような気もします。とにかく、日本の若い世代には毛嫌いされがちな「飲みニケーション」、少し形は違うかもしれませんが、イギリスでは全く普通のことだそうです(ちなみにぼくは飲みニケーション歓迎派です)。

さて、パブについては、まだまだ書きたいことがたくさんあるのですが、少し長くなってしまったので、ここまでにしたいと思います。総じて、ロンドンでの外食のコスパは日本よりも悪いですが(料理の質というよりも、ロンドンの高物価と実質的な円安の影響の方が大きいと思います)、ビールに関しては別で、パブでは650円(2016年5月現在)ほどで1パイント(568ml、日本でいうと“大きめ”の中ジョッキ)の質の高いビールを楽しめます。イギリスに来たら、ぜひパブへ!

パブで頻繁に見かけるポスター。そこには、「幸運にもあなたが21歳より若く見えたら、18歳以上であること証明してもらうために身分証明書を見せてもらいますよ」とあります。 イギリスでは18歳から全面的に飲酒可能なんですが、「未成年の飲酒は禁止されています」よりは何倍もユーモアが効いていると思いませんか?

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