写真左:安藤美冬さん(フリーランサー/コラムニスト)、右:出口治明(ライフネット生命保険 会長)

写真左:安藤美冬さん(フリーランサー/コラムニスト)、右:出口治明(ライフネット生命保険 会長)

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『働く君に伝えたい「お金」の教養 ~人生を変える5つの特別講義~』(ポプラ社)を出版したライフネット生命会長の出口治明が、フリーランサー/コラムニストの安藤美冬さんを司会に迎えて、トークショーを開催しました。お金に関する不安を解きほぐし、生き方や働き方の多様性に迫ったトークショーの模様をお届けします。

■お金についての不安が払拭された

安藤:『働く君に伝えたい「お金」の教養 ~人生を変える5つの特別講義~』は、出口さんとの対談のオファーをいただいてから読んだんですが、もう本当に面白くて、今朝もう1回読み直しました。ラストにはカタルシスもある。出口さん、よくぞおっしゃっていただいたという名言にあふれていました。

出口:ありがとうございます。

安藤:まず出版の経緯についてお尋ねしていいですか?

出口:平成元年生まれの若い編集者が僕を訪ねてきて、「僕も含めて、若者は将来年金をもらえないかもしれないと不安を持っている」と言われたんですが、僕は全然不安には思ってなくて。「じゃあ、それを題材にしましょう」となったんです。

安藤:私が本を読んで感動したのは、すごくまっとうなことが書いてあることです。私は24才で大手出版社に入社したんですが、入るとすぐに周囲から「早めに家を買っておいた方がいいぞ」とか「住宅ローンは良い金利で借りた方がいい」「給料の一部を定期預金に回せ」なんて言われました。保険会社に入った友人からは、私向けの保険のプランとして月に6万3,000円もの保険料を提示されたこともあります(笑)。

私だけじゃなく、若い人はお金についての不安を周囲の人たちによって増幅された経験があると思うんですよ。出口さんの本は、その不安をひとつずつ払拭してくれる。本の値段以上の価値があると思いました。

■世界を見ると定年なんて存在しない

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安藤:次にお聞きしたいんですが、お金の不安に立ち向かうためには何が必要でしょうか?

出口:お金に対して不安を抱いてしまうのは、ひとつには年をとったら定年で仕事を辞めると思い込んでいるからです。そう考えると、60才までにお金を貯めないといけなくなる。でも世界を見ると定年なんてないですよ。さらに言うと差別になるので履歴書に年齢は書けません。極端にいえば、働きたい意欲と職場に来る体力と読み書き算数のスペックさえあればいい。定年が無い国も多いと思えば、ひとつ不安が消えませんか?

安藤:消えますね。

出口:それに、団塊の世代がまもなく仕事から退きます。すると、どう考えてもこの国は労働力が不足しますよね。2036年には800万人足りなくなるという試算も出ています。だから理論上、絶対職にはあぶれないんですよ。60才までにお金が貯まらなかったら続けて働けばいいんです。

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安藤:年金がもらえないという不安についてはいかがですか? 稼げる力さえあれば国に頼らず、その分銀行に貯めた方がいいという考えもあります。

出口:ヨーロッパではそんなことを思う人はほとんどいません。理由は2つあって、近代国家では国より安全な金融機関はないんですよ。国が破綻しなければ年金は払われる。国が破綻するときには、他の金融機関は全部つぶれていますからね。近代国家の大原則です。不安の源泉のほとんどはこういったことを知らないからです。文字ができた5500年ぐらい前のシュメールの粘土板にも書かれていますね。「勉強をしないと商売人にだまされるばかりやぞ」と(笑)。太古の昔から変わっていません。

安藤:出口さんは歴史にも非常に精通されていて、歴史をひもときながらお金のことを書いていらっしゃる。それが出口さんの著書の面白さともいえますね。

出口:人間の脳みそは1万年以上進化していないんですね。進歩していないから、昔もいまも考えることは同じなんです。社会生活を営むためのお金はどの時代も必要です。昔はこうやったと書いた方がわかりやすいでしょう(笑)。

■財産三分法を知ろう

安藤:私たち個人がお金と付き合っていくための、お金の基本の「き」を教えてください。

出口:「使うときに楽しい」というのがお金の基本。でも、人間は衣食住を賄わないといけない。そこで、例えば毎月の手取りが20万円だとしたら、「これがなくても生活ができるかな」と考えてみる。仮に3万円なくても生活できると思えば、その3万円はパートナーへのプレゼントや英語の勉強、投資信託などに充てられる投資の金額です。残りの17万円のうち2万円ぐらいは、タクシーで帰るときとか、いざというときのために財布に入れておいて、残りは金庫代わりに銀行に入れる。

これがお金に対するマネジメントの基本、財産三分法です。このことを理解すれば、銀行は単なる金庫であって、キャッシュに代わることに意味があるとわかります。金利はあった方がいいですが、いつでも引き出せることが銀行の基本です。

安藤:お金を財布、投資、預金に分ける。なくなっていいお金を充てるのが投資で、銀行に預けるお金は流動性があって、いつでも引き出せるものなんですね。外国の国債を買って必死でお金を増やそうという人は投資と預金をごちゃごちゃにしている(笑)。

出口:そうですね。お金を増やすのは自分です。先週、とある方に教えてもらったんですが、大学の掲示板に「中国語が片言でもできる方募集。ドラッグストアのレジで時給3,000円」という張り紙があったそうです。大学生に聞いたら、通常の時給はその地域では1,000円前後やと。片言でも中国語ができるだけでそれが3,000円に跳ね上がる。自分に何かができたらお金は増えるんですね。

安藤:お金を増やそうと思ったら、自分に投資をすればいいんですね。

■株や投資信託を買ったら、買ったことを忘れよう

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安藤:財産三分法で言うと、私も毎月、積立預金はしていました。保険も積立型を選択する人が多いですよ。

出口:数字で見ると明快で、「72のルール」というのがあるんです。72を金利の数字で割ると、元本が倍になる年数が得られるというルールです。僕がサラリーマンになったときの金利は8%が最低でしたから、9年(=72÷8)で100万円が倍の200万円になった。いい時代ですよね。こういうときには保険を買っても10年で倍になる。
ところが、金利が1%だと倍になるまでに72年もかかる。0.1%だと720年ですね。あるところでこの話をしたら、聴衆のひとりが「いまの金利を当てはめたら旧石器時代に戻る」とツイートされてました(笑)。

金利が低いときには預金で増やすのはありえません。金利が下がったら投資信託と株、金利が上がれば預金や債券。いまは金利が低いから、買う対象は投資信託でも株でもいいと思いますが、1万円だけ毎月銀行引き落としにしておけばいいんですよ。安いときにはたくさん買えますから。

安藤:少額でも、長く続けていれば大きなリターンが出ますね。

出口:株や投資信託はいつ安くなるかはわからない。だから毎月1万円ずつ買っていくことです。ただ、大事なんは忘れること。買ったと同時に買ったことを忘れる。買った翌日に値が下がったら腹が立ちますが、忘れてしまえばそういうこともない(笑)。覚えていると精神衛生に良くないので、価格が変動するものは売っても買っても忘れるのが一番ですね。

(つづく)

『働く君に伝えたい「お金」の教養: 人生を変える5つの特別講義』 (ポプラ社)出口治明著

『働く君に伝えたい「お金」の教養: 人生を変える5つの特別講義』(ポプラ社)出口治明著

<プロフィール>
安藤美冬(あんどう・みふゆ)
1980年生まれ、東京育ち。(株)集英社勤務を経て独立。ソーシャルメディアでの発信を駆使した肩書や専門領域にとらわれない独自のワーク&ライフスタイルを実践。商品企画、大学講師、コメンテーター、広告&イベント出演など幅広く活動中。これまで世界50ヶ国以上を旅した経験を生かし、海外取材、内閣府「世界青年の船」ファシリテーター、ピースボート水先案内人なども行う。TBS系列「情熱大陸」NHK Eテレ「ニッポンのジレンマ」などメディア出演多数。新刊に『ビジネスパーソンのためのセブ英語留学』(東洋経済新報社)がある。会員制オンラインコミュニティ《Wonderland》主宰。

<クレジット>
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子

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