写真左:徳山正一(ライフネット生命保険株式会社)、右:鈴木琢也さん(学校法人グロービス経営大学院)

写真左:徳山正一(ライフネット生命保険株式会社)、右:鈴木琢也さん(学校法人グロービス経営大学院)

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『バカヤンキーでも死ぬ気でやれば世界の名門大学で戦える。』。そんなタイトルの書籍を上梓したグロービス経営大学院の鈴木琢也さんと、ライフネット生命の徳山正一の対談後編です。

(鈴木さんと徳山の異色の経歴についてはこちら「エリートビジネスマンがヤンキーから学ぶべき大切なこと/元ヤンキー社員対談 前編」)

元ヤンキーからの一念発起で大学へ、という共通点がある2人の会話は、「勉強に地頭の良さは関係あるか?」という話題から、「大学不要論」に対する見解まで広がっていきます。

■アメリカで学んだ「組織に多様性が重要な理由」

徳山:本に書かれていたエピソードで、「地頭なんて関係ない。人間の本質的な能力に大した違いはない」と何度も言い聞かせながら猛勉強されていたのが興味深かったです。

鈴木:科学的な根拠は何もないんですけど、偏差値30台の高校出身の僕が、アメリカのエリート大学生(鈴木さんは名門のカリフォルニア大学バークレー校に留学)と競い合っていくためには、自分を奮いたたせるためにも、「地頭なんて関係ない」と言い聞かせなければやっていけなかったというのはありましたね。

もちろん、天才みたいな学生はやっぱりいて、経験がないこともすぐにできちゃうんですよ。そういうときに「やっぱり地頭か……」と挫けそうになるんですが、天才はほんの少数で、ほとんどのバークレーの学生が「自分は頭よくないから努力しなければ」とがんばっていて、そこで「いや、みんなものすごい努力をしているんだ」とモチベーションを保ち勉強しました。

徳山:「地頭」という言葉で自分に言い訳しない、ということですね。これも本の中で印象的だったんですが、政治学の議論をしているときに、後に首席で卒業するほど優秀な女子学生から『「ところで、タクヤはどう思う?」と聞かれて答えたら、一緒に勉強していたみんながメモを取って、自分の意見が彼らの参考になるんだと気が付いた。そういう経験の積み重ねが自信につながっていく』、と書かれていて、うらやましいなと思ったんです。

議論を重んじるアメリカの大学らしいエピソードですよね。教科書を読んでレポートにまとめる作業が中心の日本の大学では、こういう機会ってあまりないんですよ。

鈴木:確かに議論をすることで自分が理解していない点が明確になるし、同じ文章を読んでも人によっていかに解釈が違うかってことも実感できました。それに、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が集まって議論すると、それぞれの視点で意見を言うから、内容がより深く掘り下げられる。アメリカではよく「組織にはダイバーシティが重要だ」と言いますけど、こういうことかと実感しました。

■ビジネスにとって大学に行くべきメリットはあるか

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──ちょっとお聞きしたいんですが、アメリカでは起業家精神が大切だと言われますよね。だから大学に行くよりも、早いうちからビジネスの世界に進んだほうがいい、なんて意見もあります。元ヤンキーから大学進学を決めたお2人にとって、「大学に行く意味」ってなんだと思いますか?

鈴木:僕が専攻していたのは政治経済という分野だったので、そこで言うと、メガトレンドの変化というのは、ビジネスをしているだけでは捉えきれないのかなと思います。歴史や政治がどう変わって、それがどう我々の産業に影響を及ぼすか。そういった分析はビジネスの知識と経験だけでは難しいと思います。

徳山:先ほどの鈴木さんの話もそうですが、いろんな観点から物事を考えるようになれるのも、僕は大学教育のメリットだと思いますね。

──対談の前編で「ヤンキーは先のことを難しく考えないから、トライ&エラーを積極的に行う」「実は起業家精神に富んだ人々」という指摘がありました。意地悪な言い方ですけど、こうしたヤンキー文化のいい点が、大学に行くことでなくなってしまうという見方もできるのではないでしょうか。

鈴木:うーん、僕はまだ自分自身のビジネスをしているわけではないので、信ぴょう性が薄い話になってしまいますけど、しっかりした戦略を立てるためには、やっぱりいろんな知識や分析力があったほうがいいと思うんです。

もちろん、ビジネスが成功するかどうかなんて、やってみなければわからないことがたくさんある。ただ、戦略がしっかりしていれば、周りが付いてくるじゃないですか。「勝てるかわからないけど、あいつらとケンカするぞ」よりも、「このやり方でいけば必ず勝てるぞ!」といわれた方が、周りも戦う気になる。知識や分析力の重要性って、意外とそういうところにあるんじゃないかという気がしています。

徳山:僕はもともと「やってみて、後から考える」タイプの人間だったんですけど、大学に行っていろんなことを学んで、やってみる前に考えるようになりました。それで感じるのは、相手の視点がわかるってことはメリットだなと思うんです。

何も考えずに突き進むのも必要ですけど、交渉事とかで、相手が何を考えているか分析するためには、いろんな考え方について知らないといけない。議論に多様性があると内容が深まるように、深く相手のことを知るためには、多様な考えを身につけていなければならないと思います。

■気合いと根性だけで人生なんとか……ならない?

鈴木:まず社会に飛び込むことの大切さもわかるんですが、少なくとも受験当時の僕は、何をやったらいいかわからないけど、とりあえず大学に入りたいという目標に向かっていました。それで入ってみたらいろんなことがわかって、また何をやりたいか目標を立てる。その繰り返しでここまで来たんです。要するに、敗者復活戦みたいなかたちで大学を利用したんですね。

もちろん、全員が大学に行く必要はないし、最初から具体的な目標がある人なら、自分で調べてどんどんチャレンジしていけばいい。でも、もし当時の僕が「大学なんて行かなくてもいい」と言われたら、やりたいことも見つからないまま、ずっとモヤモヤしたまま日々を過ごしていたと思います。

そもそも、僕が大学に行こうと思ったきっかけは「リーマンショック」がよくわからなかったからなんですよ。自分の理解できない事象で仕事を失う人がたくさん出たり、派遣で職を失われた人たちがデモをしたりする。そういうことを目の当たりにして、「気合いと根性でがんばれば人生なんとかなる」という考えは、間違っているかもしれないと思ったんです。

徳山:それで大学の専攻が政治経済だったんですか?

鈴木:ええ。あのときの疑問が今の職業にもつながっていて、だから「社会人教育」にも興味を持ったんです。自分のような人のためにも実学だけじゃない大学教育は残ってほしいとは思います。

■家族関係の問題は仕事にも影響する

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──ちなみに、グレていたお2人が立ち直った一番のきっかけってなんだったのでしょう?

鈴木:僕は明確に家族の絆ですね。地元で不動産屋を経営している先輩からこんな話を聞いたことがあるんです。「うちのような小さな会社には有名大学を卒業したような人は来ない。ほとんどが中退か、高卒で、やる気があっても全力を出せない人が多い。それはなんでだろうとずっと考えていたんだけど、原因はみんな『家族関係』にあると気が付いた」と。

だから先輩は新しい人が会社に入ってくると、どこかのタイミングで三者面談をするそうなんです。両親と腹を割って話せる場を作ってあげる。そこで泣き出しちゃう人もいるんですけど、一度しっかり家族の問題に向き合うことで、仕事にも全力を注げるようになるといいます。

僕の家族もこの状況に近くて、子どもの頃は両親に愛がないと思っていたけど、自分が成長して振り返ってみたら、行動に見えていなかっただけで、心の底にはずっとあったと認識できたんです。そのときから、ちゃんと自分の将来を考えられるようになりました。

徳山:うちも同じように家族の問題がありましたね。あと、僕にとって大きかったのは「このままでいいのか?」という危機感でした。高校を中退して、バイトをしては遊ぶだけの生活。楽しかったんですけど、言葉ではうまく表現できない虚無感みたいなものが襲ってきたんです。

鈴木:それでいうと、僕は飽きっぽい性格だったかもしれません。友達と遊ぶだけの日々に高校2年生くらいで飽きて、ダンスを習ってみたり、とび職の世界に飛び込んでみたり、IT企業の営業をやってみたりと、いろいろやってきました。ある程度やって飽きたら次を考えて、また飽きたら次、ということの繰り返しで大学進学までたどり着きました。

そんな性格だからひとつのことを続けられる人を超リスペクトしているんです。徳山さんはプロボクサーだったんですよね(※)? それって本当にすごいと思うんです。

※高校中退から大学合格 きっかけは「人生の一次関数」(ライフネットジャーナル オンライン)

■勉強もボクシングも基礎を繰り返すことが近道

徳山:単純にボクシングが楽しかったんですよ。強くなりたいというよりも、ジムに行って練習することが目的で、気が付いたらプロになっていました。

鈴木:でも、楽しいだけで厳しい練習や減量を乗り越えられたんですか?

徳山:そうですね……、それまで人から褒められたことがない人生だったので、試合で勝った後の賞賛の言葉がうれしかったですね。自分を認めてくれる環境がボクシングにはあったんだと思います。

それに、がんばる人の裏には、応援したりサポートしたりしてくれる人がいるって気が付いたことも大きかったですね。自分が苦しくても、その人たちのために簡単に諦めてはいけない。報いるためにしっかりやるんだという意識が芽生えたのは、ボクシングをやって良かったことのひとつでもあります。

──最後に、そんなお2人が社会人の勉強法についてアドバイスするとしたら?

鈴木:正直なところ、近道はない、ということに尽きます。基礎を繰り返して、コツコツ量をこなしていくしかない。僕もショートカットの方法をいろいろ試してみたことがあるんですよ。でも、結局は基礎がないとダメなことに気がつくだけです。何千時間勉強したかということが、最後には重要になります。その事実に早く気がついて、早くから取り組んだ人が、他人と差をつけるのだと思います。

徳山:これはボクシングもまったく一緒で、試合に勝ちたかったら、プロだってひたすら基礎の繰り返しなんですよ。脳みそも筋肉だと思って、日々練習を積み重ねるしかないですね。

『バカヤンキーでも死ぬ気でやれば世界の名門大学で戦える。』(ポプラ社)

『バカヤンキーでも死ぬ気でやれば世界の名門大学で戦える。』(ポプラ社)

 

 

<プロフィール>
鈴木琢也(すずき・たくや)
1986年神奈川県川崎市生まれ。家族の不和が原因で中学生からヤンキーに。偏差値30台の県内最低の高校を卒業後、すぐとび職に。生命保険会社に16年間勤める父親が、初めて業績優秀者として表彰されたのを見て一念発起、専門学校に通いその後IT企業に。リーマンショックの直撃を受けた職場で「やれている同僚」を分析、彼らが卒業しているトップランクの大学に入ることを決意。カリフォルニア大学バークレー校に合格、卒業。アメリカの超優良企業の内定を蹴り、日本最大のビジネススクールであるグロービスに就職

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/小島マサヒロ

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