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幼い頃に好きだったアニメやゲームの思い出は、大人になっても強く残っているものです。幼少期にテレビアニメ『美少女戦士セーラームーン』(テレビ朝日系、以下『セーラームーン』)シリーズを観て育った世代の女性たちを「セーラームーン世代」と名づけ、彼女たちの価値観の形成にアニメが与えた影響を分析しているのが、『セーラームーン世代の社会論』(稲田豊史著、すばる舎リンゲージ)です。そのなかでいくつか興味深い分析が紹介されていたので、ご紹介したいと思います。

■セーラームーン世代は職場でのチームプレイが得意?

『セーラームーン』シリーズが放映されていたのは1992年〜97年。全5シリーズのテレビアニメに加え、劇場版も3作公開されていたことからも、当時の人気ぶりが分かります。主な視聴層は幼稚園〜小学校中学年の女子たち。2016年現在で29歳前後の、いわゆる“アラサー”と呼ばれる世代です。アラサー世代といえば、会社でも中堅の立場になり、責任ある仕事を任される機会も増えてくる頃でしょう。また、転職や独立といった転機を迎える人も多くなります。

そもそも著者がセーラームーン世代に注目したきっかけは、著者の周りにいるアラサー女性たちがみな、仕事ができる優秀な人ばかりであったからだそうです。そしてそのうち複数の女性たちから、『セーラームーン』が話題に上ったそうです。そんなことから彼女たちの根底にある共通項として、『セーラームーン』の影響について考えるようになったと言います。

著者はセーラームーン世代が幼いころに『セーラームーン』から仕事観を学び、現在の職場での行動規範に影響している可能性について、作品の特徴を2点挙げながら指摘しています。

一つは、女子だけがバトルをする作品である点。セーラー戦士たちは、いわゆる“戦隊モノ”におけるピンク担当のように、男性中心チームにおける紅一点のマスコット的キャラクターではなく、あくまで主役としてバリバリ働く存在です。

セーラームーン世代の、職場で女性が最前線で働くことは当たり前だと考える価値観は、この刷り込みが少なからず影響しているのではないかと分析しています。少し上の団塊ジュニアやバブル世代は「男には負けない」といった対抗心が強く立っているのに対し、セーラームーン世代が前線を志向する理由は自立心である、と他の世代と比較しています。

二つ目は、女子たちがチームを組み戦っている点です。美少女が戦闘する作品はそれ以前にも存在していましたが(『リボンの騎士』や『風の谷のナウシカ』など)、それらのヒロインは単独でした。しかし『セーラームーン』では、通う学校や趣味嗜好も異なる5人の女子たちがチームを組み、共通のミッション達成のために戦闘しています。

これにより、セーラームーン世代は役割分担が得意になり、かつ柔軟性を育むことの大切さを学んだのではないか、たとえば突然召集されたプロジェクトチームなどで、特に力を発揮するのではないかと推測しています。

■LGBTフレンドリーなマインドが形成された理由

著者はこの世代の特徴として、「LGBT(*)フレンドリーな人が多い」という点も挙げています。そのような思考が育まれた一因が、『セーラームーン』にはLGBTのキャラクターが多数登場しているからなのではないかと考えているのです。

たしかに『セーラームーン』には同性カップルと思われる仲間キャラクターや、オネエ言葉を話す敵キャラクターなどが複数登場していますが、セクシャリティを茶化したり、嫌悪したりするような描写は作中には一切ありません。このセーラームーンたちの寛容さこそが、セーラームーン世代のLGBTフレンドリーなマインドを育てたのではないかと分析しています。

もちろん、『セーラームーン』を観て育った人たちを同じ価値観で一括りにすることはできませんし、人によって影響の受け方、感じ方には個人差はあります。しかし、居酒屋談義のテーマの一つとして、周りにいる『セーラームーン』視聴者のパーソナリティと、アニメの世界観を比較してみるのは、なかなか面白いかもしれません。

*LGBT……L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダーの頭文字をとった単語で、セクシャル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつです。

『セーラームーン世代の社会論』稲田豊史(著)、すばる舎リンゲージ

『セーラームーン世代の社会論』稲田豊史(著)、すばる舎リンゲージ

<クレジット>
文/ライフネットジャーナルオンライン編集部

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