社労士バンドWORKERS!の『HOPE〜障害年金からの贈り物〜』PVより

社労士バンドWORKERS!の『HOPE〜障害年金からの贈り物〜』PVより

「ハタチの約束〜国民年金〜」「恋の任意継続」「Change my Life〜異動と転職の狭間で〜」——。社労士ロックバンドWORKERS! の楽曲は、一度聞いたら忘れられないタイトルが並びます。

中でも「HOPE〜障害年金からの贈り物〜」は、実際にリーダー・中山卓さんに失恋の相談をした現役高校生がモチーフとなっているユニークな曲。PV完成に至るまでには、さまざまな葛藤と想いがありました。インタビュー後編では、中山さんとボーカル・ギターを担当する中嶋美緒さんにWORKERS!のリアルな曲作りについてお聞きします。(前回から読む)

■「HOPE〜障害年金からの贈り物〜」は多くの運命的な出会いから作られた曲

──WORKERS! さんの楽曲の中でも特に印象深いのが、「HOPE〜障害年金からの贈り物〜」です。PV制作には、現役高校生から学校の先生、地元の町内会の方たちまで、多くの皆さんの協力があったと聞きました。

中山:この曲は、初めて仕事として依頼を受けて作ったものでした。社労士の佐々木久美子さんという方が、僕らのライブを見て活動理念に非常に共感してくれて、楽曲制作の依頼をしてくださったんです。「仕事を依頼することが応援につながると思う。私のライフワークである障害年金をテーマにした曲を作ってほしい」と。

この時、「障害年金」というテーマだけが与えられました。本当に難しいお題でしたね。僕らの曲作りには、そこにストーリー性があることが多いんですが、今までのパターンだと、障害年金を伝えるためには、曲の中で誰かに怪我や病気を負わせるような設定にしなきゃいけなかったりする。それをロックで奏でるって、なかなか難しいですよね。

社労士バンドWORKERS! リーダー・ピアノ 中山卓さん

社労士バンドWORKERS! リーダー・ピアノ 中山卓さん

中山:そもそも障害年金をロックにしていいのか、という葛藤もすごくありました。僕らは、障害を持つ方々の本当の大変さを分かっているわけでもないのに、その気持ちを代弁しようとするなんておこがましいんじゃないか、と。

障害年金を実際に受給されている当事者の方に何度もお話を伺って、曲を作っては作り直しという試行錯誤を何度も繰り返しました。決定打となったのは、高校で特別授業をしたときに出会った高校の生徒さんでした。特別授業の後もSNSを通じて連絡をくれていたのですが、ある日、彼から失恋の相談を受けたんです。僕は心の中で「それが青春だよ!」と思いながら話を聞いていましたが、そのときにふと「辛いことがあっても乗り越えようと前を向いて生きていこうとしているのは、何も障害者に限ったことではないんじゃないか」と考えるようになりました。

──この曲のPVは男子高校生が告白して振られるシーンから始まりますが、それがモデルになっているのですね!

社労士バンドWORKERS!の『HOPE〜障害年金からの贈り物〜』PVより

社労士バンドWORKERS!の『HOPE〜障害年金からの贈り物〜』PVより

中山:そうなんです。彼から失恋の相談を受けた時に、この曲のテーマと重なりました。高校生も、障害者も、みんなそれぞれが目の前の障害に向き合ってがんばって生きている。障害というのは、実は誰もが人生で突き当たる壁や困難という言い方に置き換えられるんじゃないかと。だから、無理に障害者の目線に立つ必要はないんじゃないか。そう思い始めてからグンと肩の力が抜けました。

また、一般の人の障害年金についての知識は、高校生と大して変わらない。そこで、そうだ!失恋した高校生が、高校の特別授業で障害年金について知る、というモチーフで曲を書こう!と曲の構想が一気にできあがりました。

ちなみに、僕らのPVの冒頭部分で男子高校生を演じているのがこの曲のモデルとなった彼本人です。

■PV制作には、地元の人々からソーシャルワーカーの仲間まで、多くの協力があった

──この曲のプロモーションビデオはまさにストーリー仕立てで、映像を見るだけでも面白かったです。

中山:映像化はどうしても成し遂げたい取り組みでした。障害者の中には当然耳が聞こえない人もいます。そういう方たちには、僕らがいくら音源だけを配信していても僕らのメッセージを届けることができません。そのために映像化は必須でした。

この構想は僕らのライブに参加した方からいただいたメッセージにありました。僕らのライブでは歌詞の内容をしっかり伝えたいので、必ずバックスクリーンに歌詞を投影するスタイルを採っています。あるときライブ会場に聴覚障害者の方がいて、「初めて音楽を一緒に楽しめました!」というコメントをいただきました。今まで音楽を聴きたくても聴けない人の存在があることなんて考えたこともなかったのですが、そのコメントをいただいたとき、思わず目頭が熱くなりました。そのときあらためて僕らの活動意義を再認識した次第です。

──曲中のラップパートを担当されていたのは、ソーシャルワーカーをしている方だという話を聞きました。

中山:そうです。SOCIAL WORKEEERZ (ソーシャルワーカーズ)のTOMOYAさんです。SOCIAL WORKEEERZは、音楽やダンスなどの非言語コミュニケーションと福祉を繋ぐ活動をしているダンサーユニットです。僕らの活動のコンセプトとも非常に親和性があるので、活動当初からお付き合いさせていただいていて、ライブではいつも彼らにバックダンサーをお願いしています。

社労士バンドWORKERS! ギター・ボーカル 中嶋美緒さん

社労士バンドWORKERS! ギター・ボーカル 中嶋美緒さん

中嶋:私たちは社労士の資格を持っているけど、障害を持つ人たちと関わる機会がそれほどあるわけではなくて、メンバーも障害年金を直接扱うことが少ないんです。TOMOYAさんは、障害を持った子どもたちと普段仕事で接していたり、障害を持つ方のためのイベントも企画したりしていますから、“障害”という垣根を越えた幅広いネットワークを持っているんですね。

だから、彼は障害を持つ方やそのご家族の気持ちをよく分かっているんです。そんな彼に、ぜひ私たちの楽曲に参加してほしいと依頼しました。私たちでは気付かない目線から、一緒に歌詞を書いてもらいたいなと。

中山:僕らは社会保障制度の説明はできても、障害について語ることはできません。そこで、ソーシャルワーカーとして活動するTOMOYAさんの目線が入ることで、障害というものをソーシャルワークの視点からも捉えることができるんじゃないかと考えました。彼のラップが入ることで、曲にグンと温もりが生まれた気がします。

中嶋:当初は、障害年金をテーマの曲にラップを入れるのはいかがなものだろうと、実は結構勇気が要りました。そんなに軽々しく扱うものじゃないんじゃないかと。でも、現場にいつもいるTOMOYAさんだからこそ、それができるんです。腫れ物を触るみたいな“壁”のようなものを壊してくれたのが、彼だったというわけです。

■「第3号被保険者になってくれ」というプロポーズは時代遅れ!?

──WORKERS! さんの曲の歌詞は社会保険制度がテーマになっていますから、やはり法律が変わると、歌詞も変えていくのですか?

中山:最初から法律が変わることを想定しているので、なるべくその影響を受けないような作り込みをしています。

ただ、時代とともに世の中の情勢も変わっていくので、そのあたりの難しさはあります。例えば、結成当初に歌っていた「プロポーズ~第3号被保険者になってくれ~」という曲。大切な人に、「第3号被保険者になってくれ」とプロポーズする曲です。

中嶋:妻になってくれっていう意味ですね。扶養されている配偶者を示す言葉ですが、今の時代には少々マッチしないところがあります。女性の社会進出が進む中で、「扶養にとどまって僕を支えてくれ」というのはちょっと時代錯誤な感があります。

中山:そういう難しさはありますね。自分が歌いたい曲を歌うだけじゃダメなんだと。社労士という国家資格を看板に掲げて活動している以上、やっぱり時代の要請に応えるものでなくてはならないし、同業者の皆さんの声を代弁するものでなくてはいけないという責任の重みと使命感はすごく感じます。

中嶋:例えば、労働基準法関係なんかは、労働者有利に作られている法律です。それを頭に入れておかないと、経営者側の人から「それを書かれるとちょっと……」みたいなこともあり得るんです。

中山:経営者側と労働者側のどちらかに偏ってしまうと、誰かを不快な思いにさせてしまうこともある。なので、歌詞を書くときはどちらにも偏ることないニュートラルなスタンスを保つように心がけています。

──そこの落としどころが、すごく考えられているんだろうなと思いながら曲を聴いていました。

中嶋:リーダーが作詞作曲した曲を、みんなで遠慮なく「ここはやめたほうがいい」とか「これはどうかと思う」と議論をするんです。

中山:実は、公開している曲の影にはこの5倍くらいのボツ曲があるんです。メンバーと喧々諤々、内容を揉んだ末にやっと表舞台に出せたのが、ライブでやっている曲です。

──次に作りたいテーマは何ですか?

中山:既にいくつかの新曲の構想が出来上がっていますが、今着手しているのは、中間管理職に向けた応援ソングです。「上司だって苦労してるんだよ。みんなで支えてやろうぜ!」みたいな(笑)。経営者でもなく部下でもない中間管理職にスポットを当てた一曲です。

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<プロフィール>
中山 卓(なかやま・すぐる)リーダー、ピアノ
静岡県伊豆半島(函南町)出身。株式会社エンパワーメント・ジャパン代表取締役。静岡県社会保険労務士会三島支部所属。
7歳からピアノを始める。本流はクラシックで、ショパン、ドビュッシーをこよなく愛する。資格学校は一切使わず、残業の多い毎日を送りながらも、自作の暗記ソングでひたすら”耳勉”に励み、2度目の挑戦で社労士試験に合格。社労士受験生時代に作った暗記ソングをもとにメンバー集めに奔走し、WORKERS!発足に至る。ミュージカルの世界ツアーに参加、ピアノ調律師等、異色の経歴をもつ。

中嶋美緒(なかじま・みお)ボーカル・ギター
静岡県浜松市出身。M.I.OFFICE代表。東京都社会保険労務士会中央支部所属。
幼少よりピアノを習い始める。10歳の頃からB’zに没頭しギターに興味を抱く。その後、ゆずの音楽をきっかけにアコースティックギターを弾き始め、大学では軽音楽部に入部。洋楽のROCKに心を射抜かれ、エレキギターの虜に。大学卒業後は所属していた会社の軽音楽サークルでギターを弾くOL生活を送る。社労士となった矢先、社労士バンド発足に情熱を燃やす中山卓に出会い、結成を決意。現在に至る。

●社労士バンドWORKERS!

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/森脇早絵
撮影/村上悦子

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