写真左:岩瀬大輔(ライフネット生命保険 社長)、右:厚切りジェイソンさん(IT企業役員、お笑い芸人)

写真左:岩瀬大輔(ライフネット生命保険 社長)、右:厚切りジェイソンさん(IT企業役員、お笑い芸人)

厚切りジェイソンさんと岩瀬大輔による「Why?」対談。後編では岩瀬も「アメリカのWhy?」をぶつけて応戦します! (前編はこちら)

■日本のビールのコップ、小さすぎだろ!

岩瀬:これから忘年会シーズンですが、日本の会社の飲み会って、どう思います?

ジェイソン:まず忘年会は「年を忘れる会」と書く。「その年はそんなに悪かったのか?」と思いますけど、それにしても飲み会がやたら多いですね。参加がほぼ強制的なのも不思議。アメリカで働いていたときの会社では、年に1回だけだった。それに行かなくても大丈夫。

岩瀬:飲み会の最中に変だなと思ったことってありましたか?

ジェイソン:いっぱいありますけど、まずはビールのコップがちっちゃい。本当は瓶のまま直で飲みたい。

岩瀬:(笑)。

ジェイソン:自分で注げないからずっと待ってる。「おっとっと」「まあまあまあ」。何その儀式? 

岩瀬:僕もアメリカの飲み会に言いたいことがあります。ずっと立ちっぱなしなの、あれ何なんですか。

ジェイソン:まあ、いろんな人と会話しやすいんじゃないですか。

岩瀬:うるさい中でみんな叫ぶようにしゃべるから、逆にアメリカの飲み会のほうが疲れることもある。むしろ小さいところで膝詰めて、「まあまあまあ」とやっているほうが落ち着きません?

ジェイソン:何のために飲んでいるのか、でしょう。アメリカはたくさんの人に会うため。日本はより深いコミュニケーションを取るための飲み会。

岩瀬:そうやって普段から多くの人とコミュニケーションを取っているから、アメリカって合コンもないですよね。「友達の友達は友達」という感覚があるし、知らない人にでも普通にしゃべりかける。ニューヨークでスタバに並んでいて後ろの女の子から「ここの建物、前に何があったっけ?」って聞かれたり、エレベーターで突然「I like your shoes」と言われたりしました。

ジェイソン:言われて気持ちよかったでしょ?

岩瀬:悪い気はしないですね(笑)。

■家事をしないお父さん、100年遅れてるよ!

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岩瀬:育児の質問です。いま日本では待機児童の問題などがありますけど、日本でお子さんを2人を育てているジェイソンさんは、困ったことはありました?

ジェイソン:僕は困ることはない。子どもが病気になったら会社を休んで看病するし。でも全体的に困っている人は多いですね。特に共働きしないといけない夫婦。

岩瀬:アメリカの共働き家庭はどうしているんですか?

ジェイソン:大手企業だと社内に施設があることが多い。嫁がアメリカで働いていたときは、社内に保育園があって、仕事の途中で「母乳あげてくるわ」とか普通にありましたから。

岩瀬:それはすごくいい会社だからでは?

ジェイソン:社内に施設があるかどうかは別として、社会全体の理解はあります。

岩瀬:育児や家事で「日本人おかしいだろう」って思うことはあります? 夫が家事を手伝わずに揉める家庭も少なくありませんが。

ジェイソン:日本人の考え方はアメリカの100年前の考え方。アメリカだと夫婦で家事を平等に分けるのは当たり前。僕のお父さんの世代でも家事をやっていたくらいだから。

■小さいマイナライ? 小さい人がいつも前でかわいそうだろ!

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岩瀬:日本で平日昼間に男性が近所をウロウロしていると、「あそこの旦那さん、仕事なくしたのかしらとか」とか噂されかねないんですが、アメリカに行くといろんな人がいます。ライフスタイルの多様性ですかね。

ジェイソン:多様性もあるけど、アメリカ人は他人の目を気にしない人が多い。僕は平日でも仕事がない日は公園で娘たちと遊んでいるんですけど、他のパパたちはいませんね。変な目で見られていても、僕は娘たちと楽しんでますから構わないですよ。

岩瀬:前にニューヨークで着物を着て地下鉄に乗ったら、「Oh! Kimono!」って写真を撮られるのかと思ったら、ガン無視。誰も僕の格好を気にしていなかった。アメリカ人と違って日本人が極度に人の目を気にしすぎなんですかね。

ジェイソン:若いときから「回りに合わせろ」「人と違うことをやるのは恥」という教育のせいじゃないですか。

岩瀬:「小さい前へならえ」ってやったことあります?

ジェイソン:小さいマイナライ?

岩瀬:日本の学校ではクラスで整列するときに、手をこういうふうに「前へならえ」ってやるんです。

ジェイソン:それしない。

岩瀬:昔、ハーバードの学生140人を連れて日本ツアーをやったことがあるんです。そのときにみんな駅とかに集合するんですけど、ちゃんと集合できない。バラバラ。一緒にいた日本人10人で14人ずつのグループを作ったのに整列できないんです。そこで気づいたのは、僕らは整列をするトレーニングをされているんだな、ということ。そのキーワードが「小さい前へならえ」。

ジェイソン:それもかわいそうじゃないですか。小さい子がずっと前に立たないといけない。

岩瀬:でも、こういうことができたから、60年代、70年代に、同じことを効率的にやることが企業の競争力にもなっていたんでしょうね。

ジェイソン:その時代は強かったですね。でも今の時代は、それはもう要らない。教育が昔から変わっていないんです。古い時代で成功するスキルを今でも身につけている。

■日本の若者も、ベンチャーやってみたらいいんじゃないか?

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岩瀬:日本のベンチャーとアメリカのベンチャーを比べて、不思議に思う事はありますか?

ジェイソン:日本のベンチャーは「EXIT」*しにくい。アメリカのベンチャーは「エコシステム」が浸透しているから、よりEXITできて、お金持ちになれて、そこからさらに投資できる。日本はそうなっていない。上場する以外に成功する道が少ないから、ベンチャー自体がなかなか成立しません。起業家のメンターも全然足りていないし、1回の失敗でその人のイメージが汚れてしまう。アメリカだと一度失敗しても2回目、3回目、4回目の会社でバーンと成功するケースも多い。

*ベンチャー企業の創業者が株式公開や株式譲渡などで創業利益を得ること。

岩瀬:先日「失敗を許容する文化」というテーマでアメリカの起業家とパネルディスカッションで話したんですけど、そのとき意外だったのは、リスクを取れるベンチャー魂を持っているのは、アメリカの中でもカリフォルニアだけだと。その人は東海岸出身で家族も保守的だから、「起業なんてやめて」と言われたそうなんですが、アメリカ国内でも東と西で差はありますか?

ジェイソン:最近はわりと東も西も活発で、ニューヨークやテキサス州オースティンとかでもエコシステムができています。僕の場合は、ちょうどドットコムバブルが高校時代に来ていた世代で、大したことやっていなくても「インターネット上で何かビジネスをやる」イコール「億万長者」という例がバンバン出てきて、「じゃあ俺もやりたい」と思う友達が少なくなかったかな。

岩瀬:より起業することとか、新しいサービスを始めることが身近だったから、そんなに深く考えずに、「まあやってみればいいじゃん」と?

ジェイソン:そう。やってみてダメなら就職すればいいという考え方。

岩瀬:最後に、今後の展望を聞かせてください。

ジェイソン:今、日本の大手企業はあまりよくない状況だと思います。でも若い人たちはまだ、大手企業に入って安定した暮らしをしたいと思っている。それをどこかで覆さないといけないと思います。

ベンチャー企業を立ち上げて、大手企業に勝てる会社を作る。まさにライフネット生命が挑戦しているようなことなんですけど、こういう会社がどんどん増えて、新しい世代の新しい考え方、新しいやり方が若い人たちに魅力的なものになれば、日本は変わると思います。コメンテーターとして、「こういう考え方がありますよ」とメディアで伝えるのも、ベンチャーを支えたいから。個人的にもベンチャー企業への投資は今後もしていきたいです。

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岩瀬:エンジェル投資家のようなことですね。もうすでにやっています?

ジェイソン:いま、1社と契約済みで、12月にもう1社投資することが決まっています。多分2017年も、もう1社決まります。

岩瀬:この記事を読んで、「ジェイソンさんに投資してほしい」と思ったベンチャー企業は、事務所に企画書を送ればいいですか?

ジェイソン:まあ、送ってもいいけどね!(笑) でも実際に、「Slush Asia」というベンチャー企業のイベントにも登壇するとか、面白いベンチャー企業を見つけるようなこともしています。

岩瀬:これからは今の仕事に加えて、ベンチャーを支えるために投資家として、オピニオンリーダーとしても活動していくわけですね。

ジェイソン:そうですね。その2つを同時にやれば、わりといろんな支援ができるんじゃないかと思います。

(了)

<プロフィール>
厚切りジェイソン(あつぎり・じぇいそん)
1986年アメリカ・ミシガン州生まれ。17歳で飛び級入学したミシガン州立大学を卒業後、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の大学院を卒業。日本企業の研究員として1年間勤めていたときに日本のお笑いに興味を持ち始め、2011年にお笑い芸人を目指して再来日。2014年にデビューを果たし、「Why Japanese people!?」の絶叫ネタで一躍ブレイク。IT専門家として、本名のジェイソン・デイヴィッド・ダニエルソン名義でも活動している。著書に『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』(ぴあ)、『ジェイソン式英語トレーニング 覚えない英英単語400』(主婦の友社)。

<クレジット>
取材・文/香川誠
インタビュー写真/村上悦子