池田美穂さん(アシックスジャパン株式会社)

2月26日、いよいよ東京マラソン2017が開催されます。およそ3万6,000人が参加する日本最大のシティマラソンで、今年の抽選倍率は史上最高の12.2倍にのぼった人気の大会です。ライフネット生命はランニングのメッカである皇居に近く、社内にランニング部もあり、東京マラソンに興味津々の社員も少なくありません。2日後に迫る大会に向けて、ランナーたちはどんなことに注意すればよいのか? 大会直前、アシックス ランニングクラブコーチの池田美穂さんにお話をうかがいました。

■ランニングは「ブーム」から「文化」になった

──東京マラソンが初めて開催された2007年を境にランニングブームがやってきた印象がありますが、この10年間を振り返るとどう感じられますか?

池田:東京マラソンからブームが始まったことは間違いありません。私は学生時代から陸上部に所属してランニングを続けていましたが、東京マラソンが始まる前は、友人たちから「ただ走って何が楽しいの?」と言われ、変人扱いでした(笑)。それが、東京マラソン開催以降は、反応ががらりと変わったんです。

そのころから、モデルさんが数多くのマラソン大会に出場されたことが話題になったり、女性誌でもランニング特集が組まれるようになったりして、だんだん「走ることはおしゃれで健康的」というイメージが浸透し始めました。

実際、2007年以降は、特に女性のお客さまがたくさんいらっしゃるようになりました。近年は流行というよりも、ランニングが生活に根付き、「ブームから文化になった」という感じがします。


池田:スポーツ用品店のスタイルもがらりと変わりました。例えば、それまでのスポーツ用品店は、運動部に所属している人のための専門店という雰囲気でしたが、アシックスが初めて銀座にオープンした直営店は、銀座でブーツやヒールを履いている女性が、お洋服と同じ感覚で、ランニングウエアやシューズを手にとってもらえるようなお店をめざしました。実際におしゃれな女性が入店されたときは、心の中でガッツポーズをしました(笑)。

──かつて陸上競技用品は、スポーツ店の中でもかなりマイナーでしたね。テニスやヨガの商品が目立つところに置かれていて、陸上用のシューズは片隅とかストックに少しあるだけだったり。

池田:そうなんです。陸上用シューズは品数が少なく、色合いも基本的には白だけでした。昔の陸上大会の写真を見ますと、本当に全員白いシューズを履いているんです。

ところが、徐々に女性のお客さまたちから「もっとおしゃれなシューズはありませんか?」というご要望を受けるようになりました。私たち女性スタッフも積極的に意見を出して商品開発に反映させていき、この10年間でラインナップがどんどん増えていったのです。

初心者からトップアスリートまで、さまざまなニーズに応じたシューズを展開。カラーバリエーションも豊富で、「東京マラソンモデル」も

■初心者ランナーが心がけるべき2つのポイント

──池田さんはコーチという立場でランニングの指導をされているそうですが、初心者ランナーにはどのようなことをアドバイスされていますか?

池田:始めたばかりのランナーには、必ず2つのことをアドバイスします。ひとつは、「人と比べない」こと。もうひとつは、「がんばりすぎない」ことです。

人と比べると、モチベーションにつながることはありますが、初心者の場合は「Aさんはすぐに5キロ走れるようになったのに、自分は全然ダメで……」とネガティブに考えてしまう傾向があります。でもランニングって、スタートのレベルは個人差がありますし、継続していけば誰でも必ず伸びていくものです。だから、自分のできる範囲でやる。がんばりすぎない。ここが大事です。

最初は、おしゃべりしながら走れるくらい、ジョグというよりはウォーキングに毛が生えたくらいのスピードからスタートして構わないんです。指導をしていると、「ランニングはきつい」「速く走らなきゃ」というイメージを払拭させるところから始まる場合が多いですね。

銀座の直営店内にある計測スペース。ここで走り方を測定し、そのデータから最適なシューズを選んでもらうことができる

池田:もうひとつ、特に昔スポーツをしていた男性には、過去の自分と比べないでくださいと言います。何もしなければ年齢と共に筋肉も代謝も落ちてきます。ただ、スポーツの技術のイメージは記憶に残っていますから、体は動かないのに頭は動けると思ってしまうんです。そのギャップを埋めるのがすごく大変です。「まずは今の自分を知ることから始めましょう」ということを強調しています。

■大会2日前、ランナーはどのような準備をすればいい?

──26日に東京マラソン2017が開催されますが、大会の前日、前々日にやっておくべきことはありますか?

池田:「いつもと違う」ことはあまりしないことですね。例えば、普段あまり行かないマッサージに行くとか、あまり食べたことのないものを食べるとか。前日だからと気合いを入れて、栄養ドリンクを飲み過ぎてお腹を壊す人もいます。オススメの食事は、食べ慣れているものの中で、炭水化物が多い丼ものとか、パスタ、うどんなどですね。

それから、大会直前は、あまり体をたくさん動かさず、リラックスすることを心がけてください。直前にたくさん走っても、そこで走力がアップすることはありません。むしろ、肉体疲労を当日に残してしまう恐れがあります。それよりも、自分のリラックスできるストレッチをやるとか、お風呂にゆっくり浸かるとか、早く寝ることを意識してください。

もうひとつは、ウエアなどの必要なものをしっかり準備すること。フルマラソンは長丁場です。東京マラソンの場合、スタート地点に集合するのは7時くらいで、実際にスタートするのは9時すぎです。その間、2時間ほどの空き時間があり、スタート後も5〜6時間走りますので、合計7〜8時間は野外にいることになります。


池田:その間気温や天気も変わってきますから、ランニングウエアも多少調節できるものを用意するといいでしょう。前々日ならば、当日の天候をチェックして、例えば手袋やアームウォーマーなどの取り外し可能な小物を揃えることをオススメします。

あとは、当日のシミュレーションをすることです。何時くらいに都庁に着き、何時頃スタートして、どれくらいのペースで走る、という流れをイメージすると、不安が減ると思います。

──ここまで来ると、練習より当日の準備の方が重要なんですね。

池田:前日は走るよりも、足の筋肉を温存して欲しい。足が重たい状態でスタートラインに立つのは、あまり好ましくありません。前日は、体の疲労を取り除き、栄養を蓄え、走りたい気持ちも溜めておき、当日爆発させるということですね。

──今回は、ゴールが東京駅に変更になりましたが、その影響はありますか?

池田:この変更は選手にとって追い風になると思います。基本的に東京マラソンは記録が出やすい大会ですが、ゴールが東京駅になったことで、最後のきつい上り坂がなくなり、より記録が出やすくなったのではないでしょうか。

最大のポイントは、応援の数です。東京駅がゴールということは、応援がすごく増えると思うんです。実際にマラソン大会に出場すると、応援がいかにすばらしく、自分に力を与えてくれるかということが分かります。ランナーのみなさんには、ぜひ、応援を力に変えて走りきって欲しいです。

──東京マラソンが終わった後も、ランナーのみなさんには、ランニングを続けていって欲しいですね。

池田:はい、ぜひ続けていただきたいです! もし大会で燃え尽きてしまっても、少し休んだら、また再開してほしい。映画や読書などの趣味もすばらしいですが、スポーツでしか得られない爽快感や、体が強くなっていく充実感を味わっていただきたいです。

三日坊主になっても、1週間空いてしまうことがあってもいい。気が向いたときに軽い気持ちで一歩外に出る。外に出るまでのハードルが高いですが、一歩踏み出して外に出れば、楽しい世界が広がると思います。

<プロフィール>
池田美穂(いけだ・みほ)
アシックスジャパン株式会社 アシックスランニングクラブ コーチ、健康運動指導士。東京マラソンやニューヨークシティマラソン・ホノルルマラソンなどの市民マラソンから、横浜国際女子マラソンなどの国際レースまで、多くのレースに出場経験を持つ。全国各地で市民ランナーへのランニング指導を行うだけでなく、海外マラソンツアーのコーチや、タレント・モデルなどのパーソナル指導も担当。彼らをマラソン完走へ導いている。
フルマラソンベストタイムは3時間2分43秒(2012名古屋ウィメンズマラソン)。著書に『RUN女子入門~自分を変えるランニング』『ランニング手帳2012』。
●ブログ: http://runnerspulse.jp/mikeda/
●Twitter: asics_l_miho
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ASICS SUPPORTERS TOKYO MARATHON

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
撮影/村上悦子
文/森脇早絵

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