写真左:岩瀬大輔(ライフネット生命保険 社長)、右:堀江貴文さん

堀江貴文さんは2016年3月、病気を未然に防ぐ予防医療の普及活動に取り組む団体「予防医療普及委員会」を立ち上げ、同年9月には今後の健康と医療に対する考え方をまとめた『むだ死にしない技術』を出版されました。

堀江貴文・予防医療普及協会著『むだ死にしない技術』(マガジンハウス)

ライフネット生命の社内勉強会に堀江さんをお招きし、社長の岩瀬が予防医学の現状や今後についてうかがいました。果たして、堀江さんが熱心に取り組む「予防医療」は、私たちの健康をどう変えていくのか? 社内勉強会レポート前編です。

■胃がんの99.5%はピロリ菌が原因

岩瀬:今回は多岐にわたる堀江さんの活動の中でも、ちょっと意外な「予防医療」について教えていただければと思います。そもそも、関心を持たれたきっかけは?

堀江:もともと医療に興味はあり、自分自身が健康で長生きしたいと思っていました。ES細胞とかiPS細胞といった最先端の医療が出てきたときに、これは完全にパラダイムシフトだと思ったんです。自分が一番の被験体になって、医療ビジネスの渦中に入りたいと。

以前は医者にならないとできないと思っていたことが、これは弁護士でも会計士でもなんでも一緒で、専門家を雇えばいい。僕には医療ビジネスの仕事をしている友人が何人もいて、彼らと一緒に医療法人の経営改革をしたり、医者のエビデンスに基づいたサプリメントの開発をする会社を作ったりと、いろんな模索をしてきました。

「ホリエモンドットコム」という僕のオウンドメディアがあるのですが、そこにある記事は全部僕が取材して、科学技術に関するしっかりとした記事を掲載しているんですね。医療系の人も結構取材していて、あるときたまたま、ピロリ菌の権威の方に会ったんです。


岩瀬:それは日本の方ですか?

堀江:そうです。国立国際医療センター理事の上村直実さん。胃がんとピロリ菌の関係性について世界的な成果をあげた先生です。上村先生が言うには、「少なくとも日本人に関しては、胃がんの99.5%はピロリ菌が原因だとわかった」と。
ただ上村先生は、「この研究によって、99.5%の胃がんを予防するための医療を切り拓く道は作ったから、自分は残り0.5%のピロリ菌由来ではない胃がんの原因について研究している」とおっしゃった。

「ザ・研究者」という感じでかっこいいじゃないですか。そこで僕は「わかりました。じゃあ僕が99.5%の胃がんを撲滅する運動をやります」と言って、それからいろいろ調べ始めたんです。そうしたら胃がんだけじゃなく、がんは感染症が原因になっていることがすごく多いとわかりました。

ピロリ菌由来の胃がんは細菌感染症ですね。ほかにも肝臓がん、昔は酒の飲み過ぎが原因だと思われていましたが、実はそんなことはなくて、大半はC型肝炎、B型肝炎の感染症が原因なんです。主に50歳以上の人がかかりやすくて、それは子供の頃に予防接種を受けたとき、注射針を使い回されていたことが原因となっているそうです。それに関連した訴訟をビジネスにしている弁護士もいるくらいです。

ちなみに、C型肝炎は根治する薬が出ています。薬価がめちゃくちゃ高く設定されていて、1タブレットが8万円とかするので、根治まで300万円とかかかっちゃうんですけど。

岩瀬:それは健康保険が適用されますか?

堀江:高額医療費制度が適用になります。だから安心してください。これを飲めばウィルスがほぼ消えます。でも、この知識が全然広まっていないんです。だから未だに酒の飲み過ぎが原因で肝臓がんになるとか言われてしまう。

■「あのとき検査に行っておけば……」


岩瀬:なるほど、堀江さんはいろんな側面から予防医療にかかわってらっしゃるわけですけど、そこにビジネスチャンスを見ているのか、それとも世の中に広めたいという思いからなのかどちらですか。

堀江:これは両方です。マネタイズと普及活動は車の両輪で、ビジネスでお金を稼ぎながら、稼いだお金をビジネスに突っ込むということをやらないとダメなんです。だからビジネスはビジネスとして、例えばピロリ菌の有無を郵送で検査できるキットを販売したりしています。

郵送検査キットのビジネスモデルってまったく普及していなんですよ。健康管理上、血液検査や尿検査を定期的に行うことはとても大事で、数値をずっとモニタリングしていると、自分で異常に気が付きやすいんです。

岩瀬:堀江さんも毎月検査されているんですか?

堀江:僕の場合、医者に行くたびに検査をしてもらっています。風邪を引いたときとか、インフルエンザの予防接種とか、人間ドックとか、そのたびに合わせて検査してもらっています。

岩瀬:堀江さんは予防医療への取り組みをはじめとして、新しいことに次々とチャレンジされています。そんな中で、自分がやろうとしていることの意義をわかってくれるのは、どんな人ですか?

堀江:基本的にこういうのはアーリーアダプターの人までしか響きません。キャズム理論でいうところの世の中の15%未満の人たちにしか響かない。これは経験的にわかっています。

岩瀬:そういうものだと思いながらやっていると。

堀江:まあ、ずっとやっていると、何かのきっかけでキャズムを越える瞬間がボンとやってくると思うんですよ。例えば、乳がん検診を啓蒙するピンクリボンキャンペーンはみなさんご存知ですよね? あのおかげでマンモグラフィの検査を受ける人が増えたわけですけど、同じように僕たちは、まずはピロリ菌がきっかけになって、そのあとにC型肝炎、B型肝炎の予防医療が広まってほしいと思っています。

僕の友人で肝臓がんになった人がいて、肝炎が原因なんです。僕がこれだけ活動しているのに、周りはなかなか検査に行かないんですよ。うちの祖父も大腸がんになって、やっぱり「なんで!?」って。15年くらい前にも膀胱がんになって膀胱を切除しているんです。がんになりやすいのはわかっているはずなのに、ずっと病院に行ってなかった。便潜血検査でも受けてくれれば早期発見できて、大掛かりな手術をしなくても内視鏡で治療できたのにって。

■心筋梗塞の原因にもなる本当は怖い歯周病

岩瀬:歯の話も本で書かれていましたね。

堀江:歯の予防医療はがんよりもさらに重要で、最近は世の中の意識が高くなってきたと思いますけど……、そうだな、みなさんの中で年に1回以上、歯石クリーニングをしている人は手を挙げてください。

(会場の手が挙がる)

堀江:ほら、けっこう多いでしょう? でも3割くらいですね。歯の予防医療は本当に大事で、僕が子供の頃、おじいちゃんになったら歯が全部抜けると思っていました。それは、さっきお話した大腸がんになったおじいちゃんが50代で総入れ歯になっていたからです。

これはなぜかというと、歯周病が原因なんです。歯周病以外で歯が全部抜けるなんてありえない。虫歯だけでは何本か抜けることがあっても、歯が全部抜けることはありえません。だから歯周病予防として歯石クリーニングするのはめちゃくちゃ大事なんです。

あと、70歳くらいになると、歯が割れるんですよ。寝ているときの歯ぎしりが積み重なって割れることが多いみたいですね。だから僕はその対策として、犬歯をストレッチし(伸ばし)ました。

岩瀬:それはどうやられたんですか?

堀江:犬歯って糸切り歯ですね。糸切り歯は奥歯が直接噛み合うのを防止しているんですが、経年劣化で摩耗してしまう。すると奥歯と奥歯が直接ぶつかるようになって、歯ぎしりの原因になり、それが高齢になると歯が割れるなんてことを引き起こす。

それで僕は歯医者で検査してもらったとき、犬歯の先がけっこう丸くなっていると言われたので、レジンという歯の詰めものとかに使うプラスチックを犬歯に付けてもらいました。

岩瀬:歯周病を防ぐだけじゃなくて、犬歯のケアも重要だと。

堀江:ええ。何度も言いますけど歯周病って怖い病気で、歯が抜けると痴呆症になる確率が大幅に上がるんですよ。合併症としては糖尿病にかかる可能性もある。万病の元なわけです。歯の毛細血管から体中に歯周病菌がまわってしまい、心筋梗塞の原因になったりとか。歯周病菌の死骸が核になって、そこにコレステロールが溜まって動脈硬化を引き起こすなんてことがあるんです。

病気以外にも、そもそも総入れ歯になったらQOL(Quality of Life 生活の質)がものすごく下がりますし、歯周病だと口も臭くなる。口が臭いオジサンとご自身で自覚があるなら、まず歯周病を疑ったほうがいい。だから僕、「お口臭いドットコム」というウェブサイトを作ろうかと思っていて。実際、これの鼻毛バージョンのサイトはあって、匿名で「あなた鼻毛が出てますよ」ってメールが送れるっていう(笑)。

でも、これは大真面目に作ろうかと思っています。入れ歯のCMはたくさんありますけど、社会的責任から言えば、本当は入れ歯にならないために、歯周病予防を啓蒙するCMを流すべきなんです。

岩瀬:僕も5、6年前にタンザニアでカレーを食べていたら石ころが入っていて、歯を1本折ってしまったんですよ。それで友達の歯医者でインプラントをしてもらったんですが、やっぱり35歳を過ぎたら、定期的に歯医者に来いって言われましたね。

堀江:そう、だから僕の話を今日こうして聞いた人は、すぐに歯医者に予約を入れてください。そこで歯間ブラシとかやると、最初はほとんどの人が歯ぐきから血が出ると思います。それは歯ぐきが腫れているからで、歯周病予備軍なんです。

岩瀬:自分は虫歯がないからって歯医者に長い間行っていない人も、余計に歯周病のリスクがありそうですね。

堀江:そうなんですよ。「私、一度も虫歯ができたことがないんですよ」って自慢する人ほど危ないですからね。

(後編につづく)

<プロフィール>
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年福岡県生まれ。旧ライブドア社長。SNS株式会社オーナー兼従業員。近著に『むだ死にしない技術』(マガジンハウス)、『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』(SB新書)、『君はどこにでも行ける』(徳間書店)のほか、西村博之氏との共著『やっぱりヘンだよね』(集英社)など。

<クレジット>
取材・文・撮影/ライフネットジャーナル オンライン編集部

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