写真左 出口治明(ライフネット生命保険 会長)、右 徳谷柿次郎さん

会社を辞め、独立したばかりの編集者2人のユニット「柿次郎とだんご」。会社員からフリーランス(個人事業主)になった途端、保険や年金、貯金のことなど、今まで気にしていなかったお金に関する不安や疑問に悩むばかり。そこで2人は、『働く君に伝えたい「お金」の基本』『マンガでわかる!お金の基本』などの著者のライフネット生命会長・出口治明の元へ相談にやってきました。

※インタビューは2017年2月に行われました

■自分に合った保険選びのコツ

出口:お2人とも、今年から独立なさったばかりなんですよね。

柿次郎:はい、僕は会社を起業、だんごはフリーランスの編集ライターとして、ともに個人事業主になりました。

友光 哲さん(だんご)

だんご:会社に守ってもらえない立場になると、いろんなことが不安で。生命保険もいままで気にしていなかったのですが、入った方がいいのかなと思い始めました。

出口:だんごさんはご結婚されていますか?

だんご:結婚しています。僕も妻も27歳で、共働きです。子どもはまだいません。

出口:その場合「就業不能保険」がおすすめですね。そうだ、いい機会なので、ここで保険のプランを教えて差し上げましょう。

柿次郎:出口さん直々の保険案内って、こんな機会なかなかないよ!

出口:ひとり暮らし、もしくは子どものいない夫婦で、何がリスクかというと、難病や事故で働けなくなることですね。夫婦の場合、ひとりが倒れると、もう片方も看病のために働けなくなる可能性があります。就業不能保険は、そうして長期の入院や在宅療養で働けなくなった場合に、毎月の生活費をサポートする保険です。

『マンガでわかる! お金の基本』P54より

柿次郎:だんご夫婦が両方、就業不能保険に入っていれば、だんごくんに何かあった時、給付金を使ってケアマネージャーさんを雇える。そうするとだんご妻が働き続けられますね。

出口:その通りです。ライフネット生命の就業不能保険は、毎月15万円の給付金が出るプランの場合、27歳男性の標準ケース(保険期間・保険料払込期間:70歳、支払対象外期間180日、標準タイプの場合)で月々の保険料は2,826円ですね。奥さんも同じ条件だと月々2,835円。つまり、お2人で5,000円ちょっとの保険料でいいわけです。

柿次郎:思ったよりも安い! 飲み会1回分くらいですね。生命保険といえば、死亡保険のイメージでした。

出口:死亡保険は、赤ちゃんができてからでもいいと思います。なぜなら、日本は教育費がとても高いので、もしもの場合に保険金を子どもの教育費にあてるというイメージで考えてよいからです。まずは、社会人になったら就業不能保険、赤ちゃんができたら死亡保険、という風に考えるのをおすすめしています。

『マンガでわかる! お金の基本』P59より

だんご:その先は、また環境が変わってから考えたらいいんですね。難しそうに思ってましたが、意外とシンプルだ!

■「バブルおじさん」に惑わされないために

柿次郎:出口さんの著書『マンガでわかる!お金の基本』『働く君に伝えたい「お金」の教養』は、20代の若者向けですが、30代の僕でもめちゃくちゃためになりました。個人的には、本に出てきた「バブルおじさん」というのが気になったのですが。

出口:なるほど。それでは今、20代のだんごさんは、家や車を将来持ちたいと思いますか?

だんご:雑誌やテレビの影響だと思いますが、「男なら家や車を買う甲斐性を持て」みたいなイメージがなんとなくありました。でも、いまの稼ぎじゃ難しくて……甲斐性なしなんでしょうか……。

出口:それがバブルおじさんに惑わされている状態です。バブル時代は、経済が右肩上がりに成長して、給料も年齢とともに上がりました。給料が上がる保証があるから、若いうちに多少無理してローンを組んで、家や車を買うことが「当たり前」だったんです。でも、いまの日本は、経済も給料も、そんな状態ではないですよね? 

だんご:惑わされてました……! いま家や車を買えないからといって、不安に感じる必要はないわけですね。

柿次郎:自分にとって必要のないものを、イメージに踊らされて無理して買う必要はないから。バブルを経験した50〜60代の人が社会の上の方にいるから、いまだにバブル的な考えが影響力をもっているんでしょうね。

『マンガでわかる! お金の基本』P51より

出口:今、「常識」とされているものが、意外と「古い時代の常識」だったりするんですよ。だからこそ、自分で情報を調べて、自分の頭で考えて、物事を判断するクセをつけることをおすすめします。

柿次郎:本で書かれていた「リテラシー」を持つということですね。「フェイクニュース」が話題ですが、インターネット上でも、誤った情報が、さも真実のように広まってしまう場合がありますが。

出口:僕は「数字・ファクト・ロジック」が重要といつも言っています。数字(データ)を元に議論すること、その数字は検証可能(根拠がわかる)ものであること、そして前者ふたつを使って議論すること。感情論や思い込みではなく、正しいデータや歴史的事実を元に議論できれば、インターネットでも正しい声の方がいずれ勝つようになると思いますよ。

■「自分への投資」で楽しくお金を使う

だんご:僕は出口さんの本を読んで、「前向きなお金の使い方」があるということに感動しました。僕たちいまの20代って、物心ついた頃から不景気だったので、「お金を使う」ことを無駄遣いと思いがちな気がしていて。でも、「自分への投資」と考えれば無駄じゃないんだと知って、楽になったんです。

『マンガでわかる! お金の基本』P82より

出口:自分への投資はとっても大事ですよ。例えば先日、北海道大学の構内にとある求人票が貼ってありました。「片言でもいいので、中国語ができる人急募」というドラッグストアの求人だったんですが、時給3,000円だったんです。

友光:ええ! 北海道の時給としてはとっても高いですよね。

出口:北大生の平均時給の3倍です。つまり、もし「中国語の勉強」という自分への投資をしていれば、とっても割のいいアルバイトができたんです。外国語やプログラミングを勉強したり、料理を練習したり、なんでもいいんです。すべてが「自分への投資」になり、自分の価値を上げる。その結果、得をするということです。

柿次郎:僕が日本全国を取材する流れで、現地の作家さんの作品やお土産を大量に買っているのも、自分への投資ということなんですね。

出口:そうですね。好きなことにお金を使うということです。何か好きなことがあって、そこそこの技量があれば、将来、食いっぱぐれることはないんじゃないでしょうか。

だんご:本の中で「ストック(貯え)」より、つねに「フロー(収入)」が入ってくる状態を作ることが大事、と書かれていましたよね。自分のスキルを増やせば、そのぶん収入を得る方法が増えるのか!

出口:貯金や投資信託をどうしようと考えるより、「健康で稼げる」ということが一番、生活が安定すると思います。もしものときは、保険を上手に使ってもらって(笑)。

■「人、本、旅」で飛び込んでみよう

柿次郎:僕はいろんな先輩にお世話になってきて、「これは何か大事なお誘いだな!?」と感が働いた時は絶対に断らないようしてきたんです。自分のお金で「身銭を切る」と、本気で楽しもうと思いますし、その時の経験が、のちのち生きました。

出口:普通の居酒屋で毎回5,000円使うよりは、3回我慢して、尊敬する先輩といい店に行って15,000円使う方が、元が取れると思います。中途半端なところにダラダラお金を使うのが一番無駄。企業経営でも「集中と選択」が鉄則ですからね。個人の生活でも同じです。

柿次郎:いいお店に連れて行ってくれる先輩を見つけるのも大事かもしれません。「連れて行ってください」と言う勇気を出すことも!

出口:人生って、経験者に教えてもらうことが一番早いんです。面白い人を見つけたら押しかければいい。押しかけてダメだったら「今回は外れ」と思うだけ。お互い失うものはないですから。本も同じです。たくさん読んで、そのうち何冊か自分のためになればラッキー。旅も同じです。

だんご:出口さんの座右の銘「人、本、旅」(人に会い、本を読み、旅をすることによって、初めて人間は賢くなれる)ですね。どれも人と同じことをしても面白くないですよね。

『マンガでわかる! お金の基本』P173より

出口:自分で好きなところを見つける方が楽しいですよ。僕が地方を旅するときは、ネットやガイドブックで調べるより、基本的に現地の人に聞くようにしています。

柿次郎:僕が編集長を務めるウェブメディア『ジモコロ』の取材も同じです! 日本全国の「人」や「仕事」を取材しているんですが、まずは地元のキーマンを見つけるところから始めています。

出口:お2人ともまだ若いですから、どんどん「人、本、旅」に投資して、面白い記事を作ってくださいね。

だんご:これから胸を張って自分の投資のためにお金を使います! 妻に怒られない程度に。

『マンガでわかる! お金の基本(宝島社)』出口治明 (監修)、まさきりょう (イラスト)

<プロフィール>
柿次郎とだんご(かきじろうとだんご)
株式会社Huuuuのライター編集者ユニット。大阪出身の徳谷柿次郎、岡山出身の友光だんごの二人で全国47都道府県を取材している。
●株式会社Huuuu
●Twitter(柿次郎):@kakijiro
●Twitter(だんご):@inutekina

<クレジット>
取材・文・撮影/柿次郎とだんご