松本理寿輝さん(まちの保育園代表。写真左)と子育て中のライフネット生命保険社員

待機児童問題の解消や、子育て世代の多様な働き方に対応するため、内閣府が制定した「企業主導型保育事業」では、企業が従業員のために事業所内に保育所をつくることを支援・助成しています。もし、ライフネット生命が事業所内に保育園をつくるとしたら、一体どんな保育園になるのでしょうか。「まちの保育園・こども園」という保育・乳幼児教育施設を運営し、事業所内保育の支援も手がける松本理寿輝(りずき)さんと、子育て中のライフネット生命社員で「妄想会議」を開いてみました。

前編は、松本さんが運営する「まちの保育園・こども園」の概要から、社員たちの保育園経験談、そして事業所内保育の仕組みについて、話が展開していきます。

■地域にとけこむ保育園で子どもを育てるということ

──それではみなさん、まずは自己紹介からお願いします。

松本:ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表の、松本理寿輝と申します。「まちの保育園」「まちのこども園」という保育所と認定こども園の運営などをしています。

ライフネット生命・関根:ライフネット生命で人事の仕事をしている関根和子と申します。共働きで、今小学4年生の娘がいます。子どもは0歳から東京都認証保育所に入れていて、途中から認可の保育園に転園しました。

ライフネット生命・川端:川端麻清(ますみ)です。関根さんのお宅と同じく、うちの子も今年小学4年生です。だから今日は、息子が保育園にいたころのことを思い出しながら、お話できればと思っています。

ライフネット生命・石井:ライフネット生命に新卒一期生として入社した、石井寧(やすし)といいます。息子が昨年の11月末に生まれて、この4月に小規模保育の保育園に入れました。なので、まだまだ保育園初心者です(笑)。今日はいろいろ勉強しに来ました。

──松本さんが運営する「まちの保育園」は、どういう保育園なのでしょうか。

松本:「子ども主体のまちぐるみの保育」を目指している保育園です。その実現に向け、2つのことに取り組んでいます。1つは子どもたちの成長や学びのために、地域のいろいろな方や施設に協力していただくということ。例えば、地域の専門家や、高齢者、中高生にボランティアに来ていただくなど、地域のさまざまな方に参画いただいて、子どもたちの学びの環境を一緒につくっています。

2つ目は、保育園やこども園をまちづくりの拠点にするということ。保育施設は地域交流の希薄化を食い止め、若い世代をつなぎ合わせる役割が果たせるのではないかと考えているんです。保育施設というのは、若い世代、つまり乳幼児を育てているお父さん・お母さんが毎日通ってくる場所ですよね。そこで若い世代の横のネットワークを育み、町内会や自治会が築いてきた年配の方々のネットワークとクロスすることで、地域が一体的につながりあえると思っています。

松本理寿輝さん。現在4つの認可保育所と認定こども園を運営。10月には「まちのこども園 代々木公園」が開園予定

川端:うちは、0歳で認証保育園に入れて、3歳のときに、その地域で一番古くからやっている認可保育園に入ることができました。その園は地域交流の中にうまく入り込んでいて、地域のお祭りがあるときはその保育園が休憩所になるし、地域のイベントがあるとその保育園の鼓笛隊が呼ばれて発表をする。そうなると、町を歩いている息子に対して近所のおじさんやおばさんが、「気をつけて帰りなさいね」とか言ってくれるんですよね。町の人たちが子どもを見守ってくれるというのは、すごく安心感がありました。

松本:すでに地域交流が盛んで、その拠点になっている保育園だったんですね。すばらしい。

川端:松本さんが手がけている保育園は、今はまだそんなに地域のネットワークが密ではないところで、新しく交流の拠点になろうとしているんですね。それはすごくおもしろい試みだと思います。

ライフネット生命 マーケティング部 川端麻清。小学4年生の男の子のお母さん

■保育園は、子どもをただ「置いておく」場所なのか

松本:ありがとうございます。ただ保育園をつくるだけで地域の拠点になれるわけではないので、いくつか工夫をしています。例えば、コミュニティコーディネーターという地域と保育園をつなぐ役割のスタッフを置いたり、小竹向原の園には「まちのパーラー」という保育園併設のカフェをつくったりしているんです。

関根:そのカフェは、保育園に子どもを預けていない人でも利用できるんですか?

松本:誰でもOKです。夜はバルみたいな雰囲気で、お酒も飲めます。「保育園でちょっと飲んできた」というと、ただ飲んでくるより奥さんも受け入れやすいみたいで(笑)。お父さん方にも好評なんです。

石井:わかります……! そういう場所、あったらいいですね。我が家では、朝、僕が子どもを保育園に連れていき、妻がお迎えに行くという役割分担になっているのですが、朝ってまったく他のお父さん・お母さんと話す余裕がないんです。

川端:朝は特に時間がないので、「いいから早く靴を脱ぎなさい!」みたいに、みんな殺気立ってますからね(笑)。私も他の保護者の方とお話するのは、必ずお迎えのときでした。

石井:そうですよね。だから、保育園にお迎えにいって、一服して、誰々くんのお父さんと少しおしゃべりする、みたいな場所があったらいいなと思っていたんです。しかもお酒が飲めるなんて最高ですよ。子どもができて、ほとんどお酒を飲みに行かなくなりまして。別にそれはいいんですが、今のお話を聞いて、「保育園で一杯ひっかける」という手があるのか……! と(笑)。

松本:私が見ている限りだと、お父さんたちはお酒がちょっと入ったほうが堅苦しくなく話せるみたいですね。あと、まちの保育園・こども園では「主体的に学ぶ環境を整える」ということも重要視しています。今、教育が大きく変わろうとしていて、与えられた問題に決まった答えを出すのではなく、自ら課題を見つけ、創造的に解決する能力を育もうという方向にシフトしつつあります。

テストなどでは測れない非認知能力を育むのには、0歳から6歳までの教育環境がもっとも重要であるという考えに基づき、子どもたちがのびのび主体的に学べる環境を用意しているんです。

関根:子どもを保育園に入れようと思って、いくつかの施設を見学していたとき、「保育園は子どもを1日ただ安全に置いておく場所だ」と説明されたこともあったんです。それがけっこう衝撃的だったのを思い出しました。まちの保育園みたいに、保育施設を「子どもの学びの場所」だと認識してくださっている園はありがたいです。

ライフネット生命 事業企画部 石井寧。昨年11月にお子さんが生まれたばかりの新米お父さん

石井:フランスに留学していたことがあるのですが、フランスでは0歳から教育を始めるという考え方が根付いているんですよね。だから、保育園は「教育の場」とされているんです。でも、日本だと保育園は教育というよりも、共働きの家庭のための単なる「預かり場所」だと認識されていることも多いんじゃないでしょうか。

松本:フランスでは、希望者は0歳から全員無償で保育園に入ることができます。育児や教育に対して、国がかなり投資をしているんです。石井さんは「0歳から保育園に入れるなんてかわいそう」と言われたりしませんでしたか?

■子どもたちとの触れ合いは、親の成長にもつながる

石井:妻は少しそう思っているみたいですね。僕は自分が小さい頃から保育園に通っていて、そんなに寂しい気持ちもなかったですし逆に、幼児期にたくさんの人とふれあったほうが社交性が高まるという研究結果の記事を読んだことがあったので、だったら保育園に通ってたほうがいいんじゃないかな、と考えました。

関根:わかります。うちは一人っ子だから、なおさらたくさんの人と触れ合える機会ができてよかった。保育園って、小規模だとずっと同じメンバーで過ごすから、みんなが兄弟みたいになるんです。一緒にいる時間が長すぎて、子どもたちは着替えて置いてある洋服の匂いを嗅いだら誰のかわかる、という話を聞いたときは驚きました(笑)。

ライフネット生命 人事総務部 関根和子。小学4年生の女の子を子育て中

松本:そうなんですよ(笑)。描いた絵や文字を見ただけでも、すぐに誰のものかわかるんですよね。

関根:私の子どもが保育園に通っていたときも、「預けるのはかわいそう」と言う人はけっこういました。でも保育園で楽しそうにしてる子どもを見ていると、私一人で育てる方がかわいそうなんじゃないかと思うようになったんです。

川端:親にとっても、保育園に預けることで学ぶことは多いですよね。保育園には、やんちゃだったり、おとなしかったりと、本当にさまざまな性格の同年代の子どもがいるので、自分の子1人しか見てなかったら心配になるようなことも、「これくらい大丈夫なんだ」と思えるようになります。

石井:自分対子どもだと、どうしても安心安全第一で、そーっと扱ってしまいます。でも、うちの子が保育園で2歳の子にわっしゃわっしゃ乱暴に撫でられてるのを見て、「これくらいもみくちゃにされたほうがいいよな」と思ったんですよね(笑)。社会に出たら、何があるかわからないじゃないですか。だったら、守られている環境で、子どものうちになるべくエクストリームな経験をしたほうがいいと思うんです。

川端:そのうち、一緒のクラスの子が自分の子と同じように見えてきますよ。自分の子が、他のお父さん・お母さんから呼び捨てで呼ばれているのを初めて聞いたときは、けっこうびっくりしました。でもだんだん、「ああ、自分の子と同じ感覚で接してくれているんだな」とうれしく思うようになりました。

石井:わかります。園に、息子と同じ0歳児の子があと2人いるんですけど、その子たちが園を休んでいるととても心配になります(笑)。なんか、こういう気持ちって今まで感じたことがなくて。母性みたいなものが生まれてるんだなあと。子育ては親育て、と言いますが、まさに自分が親として育てられているのを感じます。

松本:先ほど、幼児期にたくさんの人に会うのがいい、という話が出ていましたが、それは「愛着関係を育んだ状態で」、というのがポイントなんですよね。そのとき、一番身近な存在で多様性を担保してるのが、保護者の方々なんです。自分の親ではないお父さん・お母さんに出会うことで、違うタイプの性格の人がいるということや、違う仕事をしている、違う考え方をしている人がいる、ということを知っていく。たくさんの保護者が子どものことを気にかけてくれて、子ども自身もよそのお父さん・お母さんに愛着を持つようになると、子どもを中心とした大きな家族のような関係ができていくんです。

■事業所内の保育施設はどうつくる?

──さて、そろそろ本題の事業所内保育の話に移りましょうか。そもそも、事業所内保育とはどういうものなのでしょう。

松本:事業所内保育は、企業内、または事業所の近辺に設置する従業員向けの保育施設です。もともと、内閣府が2年前に制定した「子ども・子育て支援新制度」では、保育への財政支援の枠組みが2つあり、1つは施設型給付。これは、認定こども園、保育所、幼稚園を対象としています。もう1つが、地域型保育給付といって、ここに、事業所内保育が含まれていました。ただ、この認可型の事業所内保育は企業の保育施設ですが、設置するかどうかを認定するのは自治体なんですね。そのため、待機児童問題が深刻化する状況において、対応に時間がかかってしまう。ということで、昨年度から内閣府が新たな制度を作りました。それが、「企業主導型保育事業」です。

松本さんの解説に真剣に耳を傾けるライフネット生命社員たち

関根:なんだか、いろいろあるんですね……。

松本:これは、先ほどの子育ての財政支援とはお財布を別にして、企業の拠出金を元に、自治体を通さずとも保育所がつくれるようにしたというものです。だから、もしライフネット生命さんが保育園をつくるなら、オフィスがある千代田区を通してつくってもいいし、企業主導型保育というかたちをとるのもあり、ということですね。一応、地域型の事業所内保育だといわゆる「認可」と言われるものになり、企業主導型保育だと、「認可外」になります。でも、認可外であっても内閣府が助成金を出しているので、企業側や保護者の負担額はあまり変わらないように設定されています。

──この新制度ができてから、「会社に保育園をつくりたい」という企業は増えているのでしょうか。

松本:そうですね、全国的に事業所内に保育所をつくろうという動きが出てきています。これだけ、働くということと育児をするということの距離が縮まっているのは、歴史的に見てもめずらしいことなんです。子育てを支援することが、雇用の継続や、仕事の質の担保につながるという考え方も広まってきています。この流れを受けて、社会全体で子育てについて考えることが当たり前になるといいな、と思っています。

(後編につづく)

<プロフィール>
松本理寿輝(まつもと・りずき)
ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役。1980年東京都生まれ。一橋大学商学部商学科卒業。2003年博報堂に入社。不動産ベンチャーの経営を経て、かねてから温めていた保育の構想の実現のため、10年ナチュラルスマイルジャパン株式会社を設立。東京都認証保育所(のちに認可)「まちの保育園 小竹向原」を設立。現在、六本木、吉祥寺で認可保育所、代々木上原で認定こども園を運営。今年10月に代々木公園内に認定こども園を開園予定。
●まちの保育園・こども園

<クレジット>
取材・文/崎谷実穂
撮影/村上悦子

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