写真左:岩瀬大輔(ライフネット生命保険 社長)、右:山内奏人さん(ウォルト株式会社 Founder / CEO)

ライフネット生命が作成した動画「202×年 空想保険」。テクノロジーの進歩が生命保険とお客さまのつながりを、どのように便利に変えていくのか。ライフネット生命の社員たちが自ら考え、2020年代の近未来の生命保険のサービスを空想し映像として形にしてみた短編動画です。

(「ライフネット生命はなぜ、この動画を空想したのか?」はこちらの記事をご覧ください)

テクノロジーの活用によって、社会を変えようとしているイノベーターは、この動画をどのように感じて、テクノロジーの進歩をどのように考えているのか?

今回は、現役の高校生でありながら、ビットコインの決済サービスなどを行うウォルト株式会社のCEOを務める山内奏人さんに、この動画が描いた未来像について、当社社長の岩瀬大輔と語り合っていただきました。

山内さんは2001年生まれの16歳。10歳からプログラミングを始め、国際的なプログラミングコンテストで最優秀賞を受賞するなど、天才エンジニアとして数々の実績を持つ人物です。そんな山内さんは果たして、この動画が描いた未来のビジョンに、どんな感想を抱いたのでしょうか?

■パスワードがないほうが安全?

岩瀬:山内さんは生命保険にはまだまだ縁が薄い年齢だと思いますが、この動画に描かれているような決済や個人認証の未来は、専門分野に近いので、ぜひ意見を聞きたいと思って、動画を観てもらいました。個人的に気になったシーンはありましたか?

山内:網膜認証が描かれていましたけど、10年後と仮定して考えると、個人認証はまだしばらくモノで行われると思います。私の会社もカードを使った決済の仕組みを提供しています。その理由は、カードは盗難や紛失に遭っても、取り替えるのが簡単だということです。それが認証には重要なことです。網膜認証だと、「網膜のパターン情報を盗まれたので、目を取り替えます」なんてできないじゃないですか。

岩瀬:確かにそうですね。

山内:ただ、カラダに身に付けるモノがカードにとって代わることはあり得ると思います。いま、決済機能を持った指輪を作っているんですよ。指輪ってカードをタッチする感覚で使えますよね。だから10年後という意味では、網膜や指紋の認証よりも、指輪のようなモノのほうが使われていると思います。

岩瀬:ECサイト全般の問い合わせとして多いのが「パスワード忘れ」についてだと聞きます。当社も同様の問い合わせは少なくないのですが、それも含めて個人認証の手段をより便利にすると、お客さまにとっての利便性も向上すると思って、認証に関する未来像も入れたんです。

山内:僕はそもそも、パスワードがないほうが安全じゃないかと思っていて。メールアドレスが登録されていれば、そのメールにワンタイムパスワードを送れば十分ですからね。

岩瀬:あとはLINEを使うとかね。実際、パスワード忘れの人はメールで送られてくる再発行のワンタイムパスワードで再設定を行うから、山内さんの指摘されたことはすでに実行しています。

■中国のスマホメーカーに学ぶコミュニティ運営

岩瀬:専門分野である決済の描き方はどうですか?

山内:あと何年かで実現できるようになると思います。銀行はどんどんオープンになっているから、口座情報と医療機関を連携させて、ワンタッチの指紋認証で診療費を支払うってことは、やろうと思えばネット銀行を使って今にでもできなくはないですし。

空想保険動画より 給付金の簡易請求のシーン

岩瀬:生保との関わりでいえば、医療機関と連携して、ワンタッチで診断内容に応じた給付金の支払いもできるようになったらもっと便利になるかもしれません。

山内:それは現実味がありますね。

岩瀬:映像の最後に契約者同士のコミュニティの姿を描いているんですが、保険会社がこういうサービスを提供するのはあり得ると思いますか?

山内:僕が使っている中国メーカーの「OnePlus」という“アンドロイドのiPhone”と呼ばれているスマホがあるのですが、このスマホをつかっているユーザーのコミュニティがめちゃくちゃ活発なんですよ。「カメラが動かないけど、どうしたらいい?」とか「次のバージョンアップはいつ?」みたいな質問に事業者だけじゃなく、ユーザー同士で答えています。

こういう特定の製品とかサービスに紐付いたコミュニティでおもしろいのは、事業者が積極的にコミュニティに参加しているので、ユーザーからの「こういう機能がほしい」という要望がバンバン実現されるんです。

金融でもイギリスにMonzoというオンラインバンクがあって、そこはプロダクトのロードマップを全部公開しているから、ユーザーが開発中のものに対していろんな意見を言って、企業はユーザーが本当に欲しい機能を反映していく。それはすごくいいなって思います。

岩瀬:動画だと契約者同士のコミュニティというイメージでしたけど、そこにライフネット生命の社員も積極的に関わったほうがいいですかね?

山内:絶対にそのほうがいいですよ。

■「10年以上先の未来は検討もつかない」

岩瀬:この動画では遠隔診療とか、ヘルスケアとテクノロジーの関わりについても描いていますが、その点についてはどうですか?

山内:10年後だったら、まだここで描かれた大半のことは需要があると思います。一方で、倫理観を一旦外して考えると、もっと先には死期が近付いたら頭だけ残し、ほかのパーツはDNAからクローンを作ったりして、カラダを交換する未来がやって来るかもしれません。

岩瀬:脳の老化はどうするのでしょうか?

山内:老化はしますけど、データ化してしまえばいいんです。

岩瀬:脳にインターネットをつなげるなんてこともあり得るのかな?

山内:研究はされていますね。実際、ごく単純な操作であれば、脳だけでコンピューターを動かすことはできるらしいです。僕が面白いと思ったTEDトークに、色弱の人が脳にデバイスをつなげて色を音として聞き分けられるようになり、さらには音を脳内で色として再現できるようになった話があります。将来は映像を脳に直接送り込むこともできるようになるかもしれません。

※参考 ニール・ハービソン「僕は色を聴いている」

岩瀬:そういう研究が進んでいくなかで、山内さんがこの動画の年齢になったときに、どういう未来になっていると思いますか?

山内:いやー、見当もつかないですね、本当に。でも10年後だったら意外と変わっていないかなとも思います。でも15年後といわれると正直、全然わからないです。

■新しいテクノロジーの見極めが重要だ

岩瀬:お話を聞いていると純粋なITよりも、ヘルスケアとITとか、金融とITとか、そういうテクノロジーとほかの分野の組み合わせみたいなものに興味を持っている印象がありますよね。

山内:僕はデータが好きなんです。決済領域のビジネスをやっているのもデータが集められるのが理由で。将来的にはデータを活用して、需要と供給のリバランスをしたいんです。

岩瀬:それはどうやって?

山内:ダイナミックプライシングといって、例えば飛行機のチケットではすでにあります。同じ飛行機でも、空席状況によってチケットの代金は変わりますよね。その裏で動いているアルゴリズムを生鮮食品とか、すべての商材に適応していけたら、もっと最適な価格設定ができると思っています。

岩瀬:ビジネススクールのケーススタディにもこういうものがあって。以前、ある清涼飲料メーカーがとても暑い日に普段より販売価格を高く設定したんです。そうしたら、ものすごく苦情が来た。これはどう思う?

山内:でも、それも慣れの問題というか。ダイナミックプライシングのようなものは絶対に求められているし、それが一般的になる時代は来ると思っています。

岩瀬:おっしゃる通り、あらゆる分野でテクノロジーがどんどん入ってくるし、その流れは止められないはず。

山内:ただ、見極めは大事だと思っています。新しいテクノロジーはどんどん出てくるけど、それを使うことが問題を解決するために、本当に必要なのかってことを見誤っているものが世の中には少なくないからです。

僕はデザインの会社にいたことがあるのですが、そのときクライアントのニーズに対して、僕は「このテクノロジーを使えば解決できるな」とすぐ思っていました。でもよく考えてみると、それはニーズと乖離しているぞということがけっこうあって。ニーズとテクノロジーの間を埋めるデザインの力が加わらないと、結局は使えないものになってしまうんです。

テクノロジーが先行しすぎてもダメだし、ニーズにテクノロジーが追いつけていないのもダメですよね。そこのバランスをどう見極めて、どう使いやすいものに変えていくのか。そういうテクノロジーと人をつなげるデザインについても、もっと発展していく必要があるんじゃないかと思っています。

<プロフィール>
山内奏人(やまうち・そうと)
2001年生まれ。6歳のときに父親からパソコンをもらい、10歳から独学でプログラミングを始める。2012年には「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞。2016年にはウォルト株式会社を創業。個人間決済サービス「ONEPAY」などを手掛ける。

<クレジット>
取材・文/ライフネットジャーナル オンライン編集部
撮影/村上悦子

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