6:仕事を一生懸命にやっているだけでは枯れる

若いときは全力疾走することが大事ですが、それだけではいつか枯れてしまうことも忘れてはなりません。アウトプットするためには、どこかで一息ついて、インプットする時間も必要です。

「世の中はバランスなんですよ。情熱と冷静さ。粘る力と割り切る技術。そして、勉強と遊び。矛盾しているようですが、何かひとつに偏っていては、やがて自分の立ち位置を見失ってしまいます。問題が思い通りに解決できないときには、ふっと力を抜いて、柔軟な発想をすることも必要。若い世代には、まだまだ先がある。悩み抜いてもうまくいかないときは、焦らずに次のチャンスを待つことが最良のこともあるんです」

7:負けたときほど堂々と、勝ったときほど淡々と

人生は浮き沈みがあるもの。一時の成功に有頂天になることなく、物事がうまくいっているときほど淡々と謙虚な姿勢で、うまくいかないときは落ち込まずに堂々と振る舞う。これを植田さんは「得意淡然、失意泰然」と表現します。

「石川啄木の、『友が皆 我より偉く 見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻と親しむ』という句があります。自分がつまらないものに思えたときほど過度に落ち込まず、小さな幸せをかみしめようと謳っているのです。相場でも、勝負するたびに常に勝てるほど甘くはない。どこかでつまずくことは必ずあります」

実際、株式相場の世界では「休むも相場なり」という格言があるそうです。意味は、“株式売買を繰り返していると、客観的に全体が見えなくなって落とし穴にはまることがある。だから、たまに休んで冷静になろう”ということ。

そして、勝ったときの振る舞いほど、周囲から見られていることも覚えておくべき。そこで謙虚さを失うと、いつか来る負けの日に味方がいなくなってしまうのです。

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<プロフィール>
植田兼司(うえだ・けんじ)
1974年、関西学院大学経済学部を首席で卒業。東京海上火災保険(当時)に入社後、国内外の資産運用業務に携わる。99年にリップルウッド・ジャパンに移り、マネージング・ディレクター、代表取締役として数々のM&Aを手がける。08年にいわかぜキャピタルを設立、11年にいわかぜパートナーズを設立し、現在に至る。著書に『一流の決断力』など

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉
撮影/松下類