今年9月に開校した全寮制のインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)。その代表理事の小林りんさんをお招きして、ライフネット生命社長兼COOの岩瀬大輔が「我が子の多様な生き方を支える教育論」をテーマに行った対談(2014.4)の内容を、2回に分けてご紹介します。

(2014.6.30『現代ビジネス』「賢者の知恵」より転載)

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岩瀬: 実は小林さんとは非常に長いつき合いでして、大学1年生のときからの同級生です。

当時から彼女はキラキラ輝いていました。僕は男子校上がりでガリ勉をして東大に入ったものですから、彼女を中心とした華やかな軍団を遠くからずっと見ていました(笑)。それからお互い外資系企業に就職し、2年くらい経って2人とも辞めて、その後ベンチャーに入ったのです。

実はライフネット生命とISAKは姉妹みたいな関係にあります。ライフネット生命を作るきっかけになった投資家の谷家衛さん(あすかアセットマネジメントCEO)という方がいらっしゃって、僕がハーバード経営大学院へ留学中だったときに「一緒に新しい保険会社を作らないか」と声をかけてくださったのです。そして、現在ライフネット生命の会長である出口を引き合わせてくれた。それがライフネット生命起業のきっかけです。

あるとき僕は谷家さんに「将来何をやりたいんですか?」と聞いたことがあります。すると、「学校を作りたい」と。それからしばらく経ったところで、「実は岩瀬君、そろそろ学校作りを始めたいのだけど、誰か一緒に学校を作ってくれる人を紹介してくれない?」と言われて、そこで僕がりんちゃんを紹介したというわけです。

さて、今日は「教育」というテーマですが、僕は教育の専門家ではないので、自分がどのように育ってきたかとか、親からどのように接してもらったかということを中心にお話をできれば、と思っています。

■「なんでそんなことをやるの?」と言われ続けた人生

岩瀬:最初に僕の生い立ちから話をすると、父親が商社マンで小学校2年生のときにイギリスに行きました。6年生のときまでイギリスで暮らし、それから地元の千葉の中学校に入り、高校から私立の学校に通いました。

高校時代は、親がニューヨークに転勤になったため、夏休みにはいつもアメリカを訪れていました。大学を卒業したあとは外資系を転々として今に至るという感じです。

それで、いつの頃からか「人と同じことをやるのがすごくイヤだ」と思うようになりました。大学在学中に司法試験に合格した後、司法研修所というところに行くのですが、ふとイヤになったのです。

自分と同じようにこれから750人もの人たちが司法研修所に行く。そこで750人のなかの1人に埋没してしまうのはすごくイヤだなと思って、弁護士の道ではなく、同期が3人しかいない外資系の会社に就職しました。その頃から、「他の人ができる仕事は自分がやらなくてもいいんじゃないか、自分でしかできない仕事をしたい」、と思うようになったのです。

もともとは僕も「みんなと同じじゃないとイヤだ」という子供でした。今でもすごく覚えているのが、小学校入学の際にみんなで画板を集団購入したときのことです。みんな白っぽいA4サイズの画板を買ったのですが、母親が買いそびれて、僕だけ茶色っぽいB5サイズの画板に。「みんなと一緒じゃないとイヤだ」とダダをこねたことを覚えています。

それからイギリスの小学校時代に、最初の遠足に「おにぎり」を持っていったら、イギリス人のクラスメイトにすごくいじめられたんですよ。おにぎりを包む海苔が黒いので、「そんな真っ黒なものを食べていて気持ちが悪い、あっち行け」と。それで家に帰って、「お母さん、もう絶対おにぎりはイヤだから今度からサンドイッチにして」って言ったのを覚えています。なので、もともとは「みんなと同じでありたい」ととても強く思っている子供でした。

イギリスの小学校では日本人は僕1人だけだったんですよ。なので、イギリス人の友達に「僕はみんなと一緒だよね、英語も下手じゃないよね」といつも気にして心配していました。その頃の写真を見るとサッカーのチームの写真でもみんな金髪で僕1人だけ黒い髪だったり。そんな経験から「僕はみんなと一緒になれないんだな」と気づいたことが、今の性格に影響しているのかもしれないです。

ボストン・コンサルティング・グループに入ったときも、「なんで弁護士にならないの? もったいない」と言われました。ベンチャーに行ったときも「なんで?もったいない」と言われ、留学するときも20代後半だったので「もういまさら行く必要はないだろう」と外資系の人たちに言われました。帰ってきて保険会社を立ち上げるときも、「なんで保険会社なんかやるの?」と聞かれて、何だかずっと「なんでそんなことをやるの?」と言われ続けた人生でした。

今あらためて振り返ってみると、そういう生い立ちが今の自分につながっているのかな、と思っています。それでは、小林りんさんの生い立ちをお伺いしたいと思います。