14092501_2岩瀬:「何とかなる」のはどうして?

花輪:お金がなければないなりに、うまくやりくりできるからです。お金というのはあればあるだけ使ってしまいます。子どもの教育費が上がったと言われますけど、昔に比べて選択肢が増えているというだけです。

都心には、0歳から幼児教育を始めるサービスもありますが、これはお金持ち向けのサービスです。一方で、お金のかからない公共サービスもあるので、そういったものを自分で探せば支出を減らせます。気をつけていただきたいのは、他の家庭を見て焦らないことです。やはり人から話を聞いて、「うちもそうしなきゃ」と不安に駆られてしまうことはあると思います。

岩瀬:初めからそういったことを気にしなければ、もっと気楽に結婚や育児を考えられそうですね。

花輪:そうですね。変に知識をつけすぎないほうが、結婚しやすいかもしれません。結婚してから考えればいいこと、妊娠してから考えればいいことを、その前から計算に入れてしまうと、身動きがとれなくなります。子どもの教育費が1,000万円かかるなんて言われたら、その瞬間、「子どもなんて作れない」と思ってしまいますからね。

■結婚するには女性の焦りも必要

岩瀬:花輪さんは30歳で結婚されたということですが、どんな結婚観をお持ちでしたか?

花輪:実はそんなに結婚願望はなくて、バリバリ働きたかったんです。子どもが欲しいというふうにも、あまり思っていませんでした。

岩瀬:でもそれが、どこかで切り替わって、結婚、出産をされたんですよね。

_96E0947花輪:やはり年齢ですね。29歳になるとさすがに焦りました。仕事は健康であれば何歳でもできますけど、出産にはタイムリミットがあるので。周りが出産ラッシュだったこともあって、「自分はこのまま産まなくても後悔しないのかな?」ということを考えるようになりました。

実際に結婚して子どもを持つと、良かったと思います。やっぱり可愛いですし。それに仕事の面でもプラスになっているんじゃないかな、と思っています。ファイナンシャルプランナーとして、母親になってから見えてくることもたくさんあります。

岩瀬:ただ、30を過ぎても焦らない女性の方っていますよね。先ほどの内閣府の調査結果でも、女性が結婚しない理由の1位は、「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」なんだそうで、これも5割を超えているんです。

花輪:そういった方たちは、仕事をしていてお金もあるし、楽しいことがたくさんあるんだと思います。ただ、そのために婚期を逃してしまっている人も多くいるように思います。特に外見に自信のある人ほどその傾向ががあるような気がします。20代の時は、それこそチャンスはたくさんあったと思うんですが、30を過ぎてくると、だんだんチャンスは減ってきてしまう。そのことに気づいて焦るかどうか、だと思います。

■ズバリ、結婚に必要なのはいくら?

岩瀬:先ほど「お金がなくても結婚できる」という結論にもなりましたが、とはいえ、全く考えないわけにはいかないと思います。一般的な基準として、いくら必要なんでしょう?

花輪:夫婦の貯金額の平均は305.7万円だそうです(ゼクシィ結婚トレンド調査2013首都圏版)。でもあくまで平均ですから、これより上の人も、下の人もたくさんいます。

最近は結婚式を安く挙げられるサービスもありますし、親御さんが百万円単位で支援してくれるというケースも増えています。格安婚ができるサービスではご祝儀による後払いもできるので、差額の分だけ貯めればよいのですね。

岩瀬:残念ながら正解はないけれども、自分の経済力に合った結婚をしやすい時代になったということでもあるんですね。

花輪:そうですね。私なんか、貯金はほぼゼロでしたから(笑)。

岩瀬:そういえば、「OL時代は借金200万円の“貯まらん女”だった」とご自身を紹介されていますよね。結構長く会社勤めをされていたと思いますけど、どうして貯まらなかったんですか?

花輪:実は私は20代の時に、買い物づくしで浪費していたので、ほとんど貯金がなかったんです。結婚式を挙げて、完全にゼロになりました。結婚生活はまさにゼロからのスタートでした。おまけに失業もしましたから実質的にはマイナスですね。

岩瀬:女性は買い物が好きですからね。

花輪:でも私みたいな人ばかりではありませんよ。最近は、女性もしっかり貯蓄している人が増えています。

岩瀬:花輪さんはいつから、お金への意識が変わって、“貯まらん女”から“貯まる女”になったんですか?

花輪:スージー・オーマンというアメリカのカリスマFPが書いた『幸せになれる人バカな人生を送る人のお金の法則』(エレファントパブリッシング)という本に出会って、世界がひっくり返ったんです。それからですね。私がお金を貯められるようになったのは。

本のタイトルにもある「バカな人生を送る人」がまさに自分だと思ったんですね。このままじゃいけないと思って、お金に関する本を数百冊読みました。勉強と同時に借金を返済していくわけですが、この時良かったのは、知識を得られたことです。お金は使えばなくなりますが、知識は使うほど磨かれる。私には夫婦ともども失業という苦しい時期がありましたが、それを乗り越えられたのも、知識があったおかげです。

(後編につづく)

<プロフィール>
花輪陽子(はなわ・ようこ)
ファイナンシャル・プランナー(FP)。CFP認定者 1級ファイナンシャル・プランニング技能士など多数資格を保有。1978年、三重県生まれ。 青山学院大学国際政治経済学部卒業後、外資系の投資銀行に入社。OL時代は借金200万円の”貯まらん女”だった。アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻が引き金で起こった世界同時不況「リーマンショック」のあおりで、2009年夫婦同時失業を経験。投資銀行を退職し、猛勉強の末、ファイナンシャル・プランナーに転身。

<クレジット>
取材・文/香川誠
撮影/村上悦子