花里:まず、ノートPCの低価格化に未来はないと思います。「安ければなんでもいい」という方向を追求していったら、そもそもPCはいらない、タブレットにキーボードで十分だよね、ということになりかねない。

僕らが思うPCは、「人の能力を拡張するもの」なんです。今のところ、クリエイティブな仕事にはスマホやタブレットではなく、やはりPCが使われています。これはまだまだ変わらないでしょう。だからVAIOでは、そのニーズに答えられるものを主軸にしていきます。

――ある種の逆張り戦略というか。

花里:低価格化PCに対抗していこうとすればするほど、かえって同質化が起こってVAIOの存在価値はなくなってしまいます。だから、僕らはそこにはいかない。

■日本のものづくり産業に風穴を開けたい

――ということは、万人受けは志向しない?

花里:ユーザー層は相当に絞り込んでいくことになるでしょうね。10月6日に発表した試作タブレットも、マスではなく、クリエイター層に絞り込んだプロダクトですから。

――新生VAIO製品の対象としては、どういったユーザーを想定しているんでしょうか?

花里:PCを使って創造力をアウトプットしている人たちですね。クリエイティビティを発揮するために、PCを「ぶんまわしている」人たちといってもいいでしょう。

――彼らの「ぶんまわし」に耐えられる製品を作ると。

花里:そういうことですね。

――しかし、クリエイターの人たちを対象にしていくと、必然的にアップルがライバルになってくると思います。これも相当手強いのでは。

14100902_3花里:もともとVAIOとアップルは対比されることが多かったですよね。もちろん、今から同じ戦い方をしても勝ち目はないでしょうから、彼らとは違うやり方を考えていく必要があるとは思います。その答えはまだはっきりとはしていないですが。

――現状で、VAIOの武器になるのはどういったところだと考えていますか?

花里:うちは社員が約240人ですから、規模としてはまだまだ相手にならない。ただ、コンピューター産業に対する問題意識はあります。そういう意味では、僕らもライフネット生命さんのようなスタートアップ企業と同じだと思うんです。

ライフネット生命も生命保険業界に疑問を感じたから、新しいビジネスを立ち上げたわけですよね。VAIOも日本のものづくりとかコンピューター産業に「こうあるべきだ」という思いがあって、そこに何とかして風穴を開けたいと考えている。今のところ武器と呼べるのは、安曇野本社で働くエンジニアの技術力と、そういった強烈な問題意識かもしれません。