2:徹底したKPI管理が命

それでは採用は営業と同じだと仮定して、毎月10人を採用しなければいけないと考えてみましょう。そのために何をすべきなのか?

答えは簡単です。これは僕自身の経験から導き出した数字ですが、営業ならば、13の契約をもらうためには、85件のアポをとって交渉しなければならない。ビズリーチの自社採用ならば、13人に内定を出すために、85人を面接しなければならない。内定者の数%は辞退するので、これで10人が採用できます。

そして85人に面接をするためには、1,000人に「うちの事業に興味がありませんか?」と声をかけておく必要があるんです。それも毎月。そう考えて社員が動けば、必ず優秀な人は採用できます。

でも、みんな1,000人に声をかけないんです。50人位でツラくなってしまう。

簡単な方法ですが、それだけ大変です。うちでは、とにかくあらゆる手段で社員全員が「この人は!」と思う方をみつけて声をかけ続けています。結果、従業員の56%が社員の紹介で入社している。その分の採用コストはゼロです。

残りの20%は外部のデータベースの活用。フェイスブックも僕らからすれば“外部のデータベース”です。というのも、年齢も勤務先もどんなことに興味があるのかも全部書いてあるのですから、その方になぜ興味をもったのかをお伝えして、「こういう求人があるんですが、興味はありませんか?」とダイレクトメッセージを送っています。これも、ほかの人たちは滅多にやりません。

転職サイトの広告は残りの数%だけを使っています。他社に比べて、採用コストはかなり低いでしょう。

つまり、ひとつひとつの作業工程を検証して、どうやれば結果がでるのか管理を徹底していけば、コストをかけなくても結果はちゃんと出るのです。

3:採用は経営陣主導にすべし

最後に、これは大手外資系企業の社長から聞いたお話です。

当時、その会社では営業トップの人を採用担当にしました。でも僕は、「そんなことをして売り上げが下がらなかったのですか?」と心配したんです。そしたら、「君は本当に採用をわかっていないな」と、ため息まじりで次のように言われました。

「人事や採用をやったことがなくても、求職者になったことはあるだろう?
じゃあ、とある会社に面接に行って、出てきた面接官がイマイチな人だったとしたら、その会社に興味を持つかい?
反対に、明らかに自分より優秀な人が面接官だったらどうだ。
求職者より優秀な人を面接官にしないと、人材は獲得できないんだよ」

その社長は「そして、採用担当の重要な仕事は、どの求職者にどの面接官を担当させるかとどんな効果が生まれるかを判断すること。だから、採用担当が社内でもっとも優秀な人じゃないとダメなんだ」と言うんです。非常にわかりやすい理屈です。

採用に悩んでいる人はたくさんいるでしょう。どの業種にも共通して言えるのは、まず上を変えないと優秀な人材は獲得できないということです。優秀な若手が欲しければ、優秀な若手をアサインすること。そのためには、常日頃からマネジメント層が社内をちゃんと把握していないといけない。

要するに、「優秀な人材の獲得」というミッションに社内が一丸となってコミットしているかどうか。それが、採用の成否を左右するのです。

僕はこの5年間で1,300人を面接してきました。役員や現場のマネージャーもそれぞれ数百人単位で面接をしています。そのぐらいやらないと、「人が足りないから……」と妥協してしまうんです。

うちは一切妥協しません。なぜかというと、常に50人位の面接待ちがいて、そのなかから選んでいるからです。

繰り返しになりますが、事業は人です。強い会社というのは、その“人”を探すために力を惜しまない。これが僕が5年間の社長経験で得た最大の学びです。

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<プロフィール>
南壮一郎(みなみ・そういちろう)
1976年生まれ。米タフツ大学を卒業後、モルガン・スタンレー証券入社。外資系金融ファンドを経て、2004年に楽天イーグルスの創業メンバーとなり、チーム運営やスタジアム事業の立ち上げを行う。その後、ビズリーチを創業。2009年4月から管理職・グローバル人材に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」、2014年4月から若手向けレコメンド型転職サイト「careertrek」(キャリアトレック)を運営している。著書に『ともに戦える「仲間」のつくり方』『絶対ブレない「軸」のつくり方』など

●選ばれた人だけの会員制転職サイト「ビズリーチ」
●キャリアを考えはじめた20代のための、レコメンド型転職サイト「careertrek」
●日本最大級の転職・求人情報検索エンジン「スタンバイ」
<クレジット>
取材・文・撮影/小山田裕哉