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菅井:銀行には25年もお世話になっていたわけですから、言ってみれば裏切り行為ですよね。当然批判されることもあります。でも本当のことを誰かが言わないといけない。信用金庫でコツコツ貯めていれば信用も高まっていくけど、メガバンクでコツコツ貯めていても信用は高まらない。いくら給与振込み用のメインバンクに使っているからといって、メガバンクは簡単には貸してくれませんよ。その点、信用金庫なら信用を築きやすいし、VIP扱いされやすい。後々独立するかもしれない時のことなどを考えると、若い人のメリットは多いですよ。

岩瀬:そういうことは、普通の人は意外に知らないと思います。単にお金の増やし方をこの本に書いたのではなくて、随所随所に銀行に対する問題提起も散りばめていたわけですね。菅井さんが一番問題だと思われていることは何ですか?

菅井:カードローンですね。銀行は金融のプロと言いながら、結局自分たちが儲けることが第一になってしまっているんです。一年ほど前の話ですが、渋谷駅の改札を出た瞬間、私は銀行員としてとても大きなショックを受けました。あらゆる方向から、いわゆるサラ金の派手な看板が視界に飛び込んでくる。「○○ファイナンシャルグループ」とメガバンクの冠を付けて、いかにも安心できるサービスのように思い込ませていますが、当然、お金を借りることにはリスクもありますよね。そういったところは金利も高い。看板自体に悪意があるわけではありませんが、渋谷という街を考えてみてください。若者の街です。まだ金融リテラシーの低い人たちがそういう看板を当たり前のように見て、そして実際に、よくわからないまま利用している。「これってどうなのよ?」と、疑問を持ったんです。

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岩瀬:銀行マンとしての正義感がそこでメラメラと燃えたんでしょうね。息子さんには、金融教育のようなことはされているんですか?

菅井:それがちょうど、息子は渋谷を歩く若者たちと同じ、20代前半なんです。まさに金融リテラシーの身につけなければならない時なんですが、親子でそういう話をする時間がなかったので、この本は自分の息子に宛てたものでもありました。本一冊分の話を口頭で伝えようと思っても、なかなかできないじゃないですか。でも本なら、全部を伝えられる。金融には表も裏もあるから、その両方を知って、賢い行動をしなさい、と。そういうメッセージを込めています。

(後編につづく)

<プロフィール>
菅井敏之(すがい・としゆき)
1960年山形県生まれ。県立山形東高等学校、学習院大学を経て、1983年4月三井銀行入行、個人・法人取引およびプロジェクトファイナンス事業に従事。 京都支店副支店長、金沢八景支店長、中野支店長を歴任後、独立。現在は不動産賃貸事業、トランクルーム事業等の実業を展開中。 6棟のオーナーとして、年間7,000万円の不動産収入がある。 また、2012年には東京の田園調布に「スジェール コーヒー」をオープン。著書『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)が累計23万部を突破(2014年11月)。
公式サイト

<クレジット>
取材・文/香川誠
撮影/村上悦子


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