ここ数年、マスキングテープが女性の間でブームとなっています。
一度貼っても跡が残らずキレイにはがせることから、家具や家電をデコレーションしたり、ギフトのラッピングや手紙にアクセントを添えるために使ったりと、実にさまざまな用途で使われています。
そのブームの火付け役となったのが、岡山県倉敷市の企業「カモ井加工紙」が販売するマスキングテープのブランド「mt」。カラフルな色のセットから、キャラクターコラボやクリスマスなど季節限定デザインまで、これまでに1,000種類以上を販売してきました。
2012年にはユニクロ銀座店に期間限定ショップを出店。Tシャツブランド「UT」ともコラボして話題となりました。
台湾、中国、パリ、ニューヨークなどでも商品を販売し、今や“クール・ジャパン”のひとつともいえる「mt」。その人気の秘密を同社東京支店、課長代理の岡本直人さんに聞きました。
(前編はこちら)
■主役はあくまでユーザー
――インタビュー前編では、もともと工業用としてマスキングテープを作っていたカモ井加工紙さんが、いかにして生活雑貨としての「mt」を作るに至ったのかをお聞きしました。すでに1,000種類以上を販売しているとのことですが、新商品のアイデアは、どうやって考えられているのですか?
岡本:基本的に、「mt」については商品企画のために会議を開くことはありません。定期的にイベントを開催することで、直にお客さんの意見を聞き、それを次の商品に反映させるということを大切にしています。
今でこそ「mt」の仕事がしたくて入社する人もいますが、工業用マスキングテープの老舗ということもあり、ブランドを立ち上げた当初は、オシャレには疎いオジサンばかりの会社でした(笑)。だから当然、女性のニーズがわからなかった。しかし弊社のマスキングテープが好きだと言ってくれるお客さんがいらっしゃったので、そういった人々の意見を積極的に取り入れていくところからブランドの立ち上げが始まったのです。
――現在は月に1回程度、全国各地で「mt」のイベントを行っていますね。
岡本:講師を招いてマスキングテープのワークショップイベントやマスキングテープを使った空間デザインの展示、期間限定ショップなどを開催しています。しかしそれも一方的に教えるというものではなくて、お客さんから「こんな使い方もありますよね」「こういう商品があったら嬉しいんですけど」と、むしろ私たちが意見をもらう貴重な機会になっています。
――マスキングテープはユーザーが主役のヒット商品ですよね。新しい使い方やアレンジを考えると、ネット上などで披露して、互いにアイデアを教えあう。「mt」の公式ホームページにもこんな風に説明されています。
フォークは食事の道具として作られ、カーテンは日差しを遮るために作られ、ペンは書くために作られます。このように、多くの製品は何らかの目的のために作られます。しかしmtは用途が限定されず、使う人の数だけ用途が生まれており、そのことこそがmtの最大の魅力となっています。可能性は無限大です。
岡本:そうです。だから私たちから「こう使ってください」と発信するのではなく、イベントもお客さん同士のアイデア交換会のようになっています。あとは会場限定のマスキングテープを販売して反応をうかがったりもする。実際の商品化を検討する場所にもなっているんです。